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私の配偶者になりませんか? <大黒柱女の結婚・3>
母は父の5つ上で、いわゆる姉さん女房。
博士課程かポスドクだったかで収入も少ない父との同棲生活は、仕事が好きでバリバリ稼いでいた母が支えていた。
数年後、「ねぇ、まだ結婚してくれないの?!」のひとことにより母は父というのちの三高をゲットした。
なんとも父と母らしい。
そんなエピソードが身近にあったことが、私のこの人生をかけた思いつきワクワクハッピーサプライズチャレンジのハードルを下げてくれた。
いや…そんはハッピーな感じにはならんだろう。
私はお花畑の中心にいるタイプじゃないんだ。
畑の外から冷笑する側なんだ。
ゴム風船を爆破させてからの数週間、私はわりと冷静でいつも通りの日々だった。
婚姻なんてただの契約だ。うん。
結婚の申し入れなんておままごとだ。うん。
いつものように布団に入って電気を消す。
わんこのごはんそろそろ切れそうだから明日買いに行こうか、
そのついでにマンガ返しに行こう、次あれ借りたいなー、
そいや昨日言ってた魚の目見せて?
なんていつものおしゃべりをする。
よくある愛の告白のように、心の中でずっと予行練習するほどのものでもなかった。
いつものなんてことない会話。
彼から発せられる言葉と言葉との間をめがけて、何度も駆け抜けようと試みるが、その足はなかなか踏み出してくれない。
大縄跳びに飛び入るタイミングが一向に見つからず躊躇ってしまう小学生の頃の自分を思い出す。
縄が振られるのに合わせて自分も身体ごと頷くようにタイミングをはかる。
愛の告白?
ちょっと待って、いやいや、おもくそ愛の告白じゃない?
結婚の話しようとしてんだよね?
前日から緊張して何度もイメトレをして喉はカラカラ、手はプルプルになりながら言うやつをやろうとしてるんだよね今ワタシ…。
ええい、ほらもう飛び込んでしまえよ、と周りが急かす。
大縄がまわってくる度に、今!、、、今!、、、今!と都度タイミングを教えてくれる。
足が引っかからないことを願って一点を目掛けて走り出す。
何十秒も躊躇って、縄に入るのは一瞬。
何日も練習して、本番のステージは数分。
何ヶ月も勉強して、試験時間は60分。
何分も待っていたのに、パフェを食べ切るのはものの3分。
え?なんだこりゃ???
「んじゃあ、おやすみ〜」
そのひと言が耳に入り我に返る。
エイヤで飛び込んでしまえば意外とすんなりなんだよな。
事前準備が長いわりにその目的達成の時間って一瞬だ。
「あぁーのさぁ、今年のふるさと納税、去年よりも少し買えそうなんだよね、えっと、控除ってのがあってふるさと納税することで来年の税金減るんだけど、私たち、籍入れちゃえば配偶者控除ってのも使えるからすごいお得なんだよねぇ。あ、別に数万とかだと思うけどね。あでも結婚じゃなくても扶養控除ってのもあってこれは籍入れてなくてもできるみたいで、でも扶養の場合と配偶者の場合とで収入の壁とかいうのがあって月こんくらい以上稼いじゃうと今度は住民税とか社保とかがかかってきちゃうから〜」
とかなんとか世間話みたいなノリで社会のお金の仕組みを某学長のごとく易しく説明してる人みたいになってしまっていると、
\するーーーーーーー!!!!!♪♪♪/
女の子みたいに嬉しそうな彼。
まるでまさかのプロポーズを受けて喜びを隠せない女の子のように。
のようにというか、女の子の部分以外は合っている。
「けっこんー!ワーイワーーーイ!プロポーズされたー!
プロポーズプロポーーーーズ!!
やったぁぁぁうえぃぃぃぃいいぴぃぃいいぃ」
「違う!プロポーズじゃない!違う!!!!」
「12月5日、記念日だね!わーーいわーいやったぁぁぁ」
「違う!!節税できるから籍入れるのどう?って話をしただけだよ!」
はぁ、まぁいいや、スッキリした。
以前から結婚がどう、籍がどうとかさらっと話すことはあった。
けれど私がこんな性格だから真剣な話し合いとか約束はしたことがなかったし、もちろんせがむこともない。
だからものすごく驚いたとかではなかっただろうし、
かと言って結婚はいつになるかわからないと思っていただろうから嬉しかったのかもしれない。
そして、とっても笑われた。
「お金のために籍入れるか〜みたいな、そんなカップルいる?!」と。
楽しそうにしてて、なんか良かった。
人生何が起こるか自分でも予想できない。
半年後の自分がどこで何してるか、何考えてるかなんて予想できたことがない。
今の自分の状況、先月の自分でも1ミリも想像できてなかったな〜ということもしばしば。
そんな自分の人生は結構好きだ。
そして、翌日自分が底の底の底まで病むことになるなんてことも想像できないので人生はジェットコースターである。
私ってもしかして、、、
愛されてない女…??
続く↓
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