勉強が苦手な生徒の教え方(その1)
「こんなに分かりやすく説明しているのになんで理解してくれないんだろう?」という体験、頭の良い講師ほどあると思います。
僕はずっとどうやったらもっと分かりやすく解説できるようになるんだろう?林修先生や関先生のように神授業と言われる授業ができるようになれば、きっと生徒も分かってくれるだろう。もっと分かりやすい説明ができるようにならなければ!と思っていた時期がありました。
もちろん授業系YouTuberとして、そのような姿は一種の目指すべき姿ですが、個別指導塾の先生としては、全然違う姿を求める必要があるということに3年目くらいで気づきました。
2次関数の変域を教えた時のはなし
数学が苦手な中3は、ほぼ100%躓く2次関数の変域の問題。
僕は当時中3の女の子に完璧な説明をしました。
グラフを書いて、yの変域を求めるんだぞ。ただ、代入するだけじゃダメなんだぞ!と。これ以上にない、完璧な説明で本人もグラフを自分の手で作図させ正しい理屈を叩き込みました。
ただ、なぜか釈然としない生徒。
「どこが難しかった?」「どこから分からなくなった?」とお定まりの質問をして必死に、この理論の躓きポイントを探ろうとしました。生徒はこう言いました。
「前は代入するだけで答えが出たのに、なんで今回は答えが出ないのか分からない」
なるほど、、彼女はおそらく1次関数の変域と2次関数の変域の解き方がなぜ違うのかがまだ理解できなかったんだろう。1次関数のグラフを書いて、今回と何が違うか(直線と放物線の違い)を丁寧に説明したところ、やっと理解してもらえました。
正しいことを教えるだけではダメ
今回の生徒は、おそらく2次関数の変域自体の話は分かっていたのですが、既習分野との区別がつかず、理解が追いつかなかったようです。あのまま、放置していればきっと1次関数と2次関数が融合した問題では大混乱して太刀打ちできなかったでしょう。
この事例で分かったことは、正しいことを一方的に教えるだけじゃダメだということ。
塾講師というのは、分かりやすい説明をすることが仕事と思ってしまいガチですが、勉強が苦手な生徒が対象な場合、分かりやすい説明だけではまだ半分です。
生徒の躓いている部分、混乱している部分をしっかりと汲み取って解決してあげる必要があります。栄養あるものばかり与えるのではなく、腫瘍を見つけて取り除いてあげる。そんな作業が非常に重要になってきます。
勉強が得意な生徒と苦手な生徒の教え方の違い
勉強が得意な生徒には、極端な話、ひたすら「正しい知識・理論」を供給し続けるのが良いです。どんどん吸収して、仮に自分の中の理論・知識が間違っていても、正しいものを与えると、自分の誤りに気づき自己修正していきます。
ですので、勉強得意層には、集団授業や映像授業が非常に効果的です。
対して、勉強が苦手な生徒は、「正しい知識・理論」を与えても、他の理論と混ざったり違いが区別できなかったり、前の間違った知識などが足を引っ張ってなかなか理解が進まなかったりします。
ですので、勉強苦手層には、集団授業や映像授業が向いていないことが多いです。
カリスマ的講師を有する大手予備校や大手映像授業のスタイルは、本来「勉強得意層」に適するものであり、「勉強苦手層」を教えるときには、また別の能力が必要だと感じています。
重要なのは「対話」
勉強得意層には集団授業や映像授業など一方的な伝達方法が、効果的かつ効率的です。ただ、勉強苦手層は前述した理由から、一方的な伝達方法のスタイルは向いていません。そこで重要となってくるのが「対話」です。
個別授業スタイルでは、講師とやりとりすることが可能です。そこが個別指導塾の最大のメリットだと僕は考えています。
ただ一方的に知識を与えるのではなく、常に生徒の考えていること、混乱していること、間違っていることを生徒側から引き出させる。そんな作業が非常に重要となってくるのです。
「ここはなぜこうなるの?説明してみ」「今の用語、もう一回自分で説明してみ」「どうしてこうやって解いたの」
これはほんの一部で、科目や単元によって問いかけ方は無限ですが、このようなやりとりによって生徒側の考えを引き出すことが重要です。
こういうやり取りをすると、とんでもない勘違いを吐き出す生徒がいて(例.え?エジプトってまだあるんですか?絶滅したと思ってました。など)いつもズッコケています笑。
前提知識の共有は、分かりやすく教えるための基本中の基本です。生徒との対話を通じて、生徒側に前提知識が抜けていないか、を確認しながら授業をする必要があります。
この間、中1に社会を教えていたのですが、「北京」を「ペキン」と読むのを知らなかったり…。まぁ中1なら仕方ないのかな?と思いつつ、地理好きだった自分からは考えられないことだったので、知識の確認は非常に重要です。
もっと重要なこと
「対話」を重視する上で、重要なのは生徒との関係性です。「対話」といったものの「なんで、こうやって解いたの?」などの質問は、場合によっては尋問になってしまうことがあります。
ある程度、関係性が整っていないと難しい行為です。ですので、常日頃からコミュニケーションをとり信頼関係を構築することが重要になってきます。まぁ、この点に関してはどんなことにも言えることですね。
僕の場合、「対話」と言うよりはもはや「喧嘩」みたいになっていて、
「なんでこうやって解いたの!」
「だって、さっきはこうやって解いたよ💢」
「それは、こう言う場合だからそう解いただけでしょ!今回の場合は、同じ解き方で本当にいいの!?」
「じゃぁ分かんないよ!」
「さっきの問題が解けたなら絶対解けるから、もう一回問題読んで整理して頭を使う!!!」
みたいな感じになっています。
まとめ
勉強が苦手な生徒にとって、理解することの喜びと成功体験は非常に重要です。分かりやすく一方的に教えるような説明は、コチラの気分は良いですが生徒には届いてないかもしれません。
「対話」によって生徒の考えを引き出し、それに応じて適切な指導をする。そんな指導を重ねると生徒たちは自然に勉強が楽しくなってくると信じています。
もし、「分かりやすく教えているのに理解してくれない」と嘆いている指導者がいましたら、ぜひ生徒側の考えも引き出させてみてください。鬼が出るか蛇が出るか。お楽しみです。
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