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篠田桃紅展 / 収蔵品展073 1960─80年代の抽象 / project N86 諏訪未知 東京オペラシティアートギャラリー

篠田桃紅展が東京オペラシティアートギャラリーで4月16日(土)より開催されています。

篠田桃紅は、70年を越える活動を通して、前衛書から墨による独自の抽象表現の領域を拓き、孤高の位置をまもりながら探究しつづけました。中国大連に生まれ、東京で育った篠田は、自立した生き方を求めて書の世界に身を投じ、戦後まもなく、40歳を越えて単身ニューヨークに渡り活動の場を大きく拡げます。新しい表現を求める熱気あふれるこの時代、欧米の抽象芸術と日本の前衛書が時代の先端で響きあうなか、篠田の表現は大きな注目と高い評価を獲得したのです。帰国後は、書と絵画、文字と形象という二分法に囚われない、墨によるまったく新しい独自の抽象表現、空間表現を確立し、ときに建築的なスケールにまで及ぶ制作によって、他の追随を許さない位置を占めました。篠田はまた、版画の世界でも固有の表現を確立し、さらに豊かな教養と細やかな感性、そして怜悧な批判精神に裏打ちされたエッセイの名手としても、広く人々から愛されました。惜しくも107歳で逝去した作家の没後1年を経て開催される本展は、桃紅の長きにわたる活動の全貌を約130点の作品・資料により紹介するとともに、その広い射程と現代性を今日的な視座から検証するものです。

PRより


篠田桃紅展 展示風景


篠田桃紅展 展示風景


篠田桃紅展 展示風景


篠田桃紅展 展示風景


作品キャプション以外の情報が資料を含めてほとんどなくそのため作品と純粋に対峙するような展示構成でした。長い生涯を回顧する展示を通して初期に確立した表現を生涯一貫して追及していたことがわかります。展示は絵画作品中心でしたが、映像資料を見ると建築へ合わせた陶板や内装など絵画にとどまらない表現をしていたたようですので、そちらも見てみたいですね。



篠田桃紅展と合わせて収蔵品展073「1960─80年代の抽象」が開催されています。

20世紀初頭にヨーロッパで創始された抽象芸術は、第二次世界大戦によって多くの作家がヨーロッパからアメリカに渡ったことをきっかけに、戦後はニューヨークを中心に隆盛した。抽象表現の発祥は戦前から日本にも影響を与えてきたが、特に1950年代から1970年代には「具体」や「もの派」など日本独特の美術動向も起こり、多くの作家が抽象表現に取り組んだ。
本展では寺田コレクションの中から、抽象表現をめぐって多様な作品が生まれた、1960年代から1980年代の作品を中心に展示する。「具体」の吉原治良や白髪一雄、「もの派」の李禹煥、独自の精神世界を表現した難波田龍起など、時代を牽引した作家に加え、戦前から抽象に取り組んだ山口長男や斎藤義重、活動の場を海外に求めた菅井汲、さらには大竹伸朗ほか現在も活躍する作家の初期作品などを紹介する。また、国内作家に限らず、日本の抽象表現に影響を与えたアントニ・タピエスやサム・フランシスなど、海外作家の作品も合わせて展示する。
ひとくちに抽象表現といっても、対象を極限まで単純化したもの、画家の心象を表現したものなど、その描き方も描く内容もさまざまである。抽象絵画に向き合うとき、その成り立ちや歴史的観点から、作家が表現したものを考察することも一つの見方であるが、一方で自分自身の感覚を解放して絵画と向き合い、自らの内面に起こる変化を感じ取ることもまた、抽象絵画の楽しみと言えるだろう。寺田コレクションに見る多彩な表現に、鑑賞者それぞれの楽しみ方を発見していただければ幸いである

http://www.operacity.jp/ag/exh250.php


1960─80年代の抽象 展示風景


大竹伸朗の作品 1960─80年代の抽象 展示風景


右側2点が宇佐美圭司 1960─80年代の抽象 展示風景


篠田桃紅展に合わせて黒い表現をする作品が集められています。大竹伸朗作品はぱっと見それと分からないことや大きな作品でもあることから面白いですし、また宇佐美圭司作品は小作品ながら見応えがあります。収蔵品は美術館開館に合わせて寺田小太郎が自分で見て歩き収集したコレクションであり、美術史や文脈を網羅するものではなく、また野見山曉治や中西夏之の飾りやすい手頃な大きさの作品があったりするなど、一般的美術館と異なった基準で収集されているのがわかります。とはいえ個人の収集でひとつの時代を表現できることは驚異ですね。企画展とともにこちらも見所です。

[参考1] 「コレクション」を考える(1)──「コレクター」を展示する 志田康宏(栃木県立美術館) artscape https://artscape.jp/report/curator/10172454_1634.html

[参考2] さまようプライベート・アイ――不在証明(アリバイ)としての展覧会 「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」レポート 中島水緒|レビューとレポート第24号(2021年5月)https://note.com/misonikomi_oden/n/n47aab21bc26f




若手作家を紹介する「project N」では諏訪未知の展示が行われています。

project N 86 諏訪未知 展示風景


project N 86 諏訪未知 展示風景




篠田桃紅展
会期:2022年4月16日[土]― 6月22日[水]
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(ギャラリー1,2)
開館時間:11:00-19:00(入場は18:30まで)
休館日:月曜日(ただし5月2日は開館)
入場料:一般1200[1000]円/大・高生800[600]円/中学生以下無料
http://www.operacity.jp/ag/exh249/


収蔵品展073 1960─80年代の抽象
会場:ギャラリー3&4 寺田小太郎メモリアルギャラリー(東京オペラシティ アートギャラリー 4F)
期間:2022.4.16[土]— 6.22[水]
開館時間:11:00 - 19:00(入場は18:30まで)
休館日:月曜日(ただし5月2日は開館)
入場料:企画展「篠田桃紅展」の入場料に含みます。
http://www.operacity.jp/ag/exh250.php


project N 86 諏訪未知
会場:東京オペラシティ アートギャラリー 4Fコリドール
期間:2022.4.16[土] ─ 6.22[水]
開館時間:11:00 ─ 19:00(入場は18:30まで)
休館日:月曜日(ただし5月2日は開館)
入場料:企画展「篠田桃紅展」の入場料に含まれます。
http://www.operacity.jp/ag/exh251.php

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