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鋤柄ふくみ 「風景」

愛知県瀬戸市にある「Art Space & Cafe Barrack」では鋤柄ふくみさんの個展が行われています。11月26日まで。


スペースの入口付近はカフェ。

鋤柄ふくみ < 風景 > 展示風景
鋤柄ふくみ < 風景 > 展示風景


鋤柄ふくみ〈船と三日月〉2023



店の奥にはギャラリースペース。

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鋤柄ふくみ〈散歩、ケモノの鼻先〉2023


本展のDMには〈散歩、ケモノの鼻先〉の画像が使われており、次のような言葉が添えられていました。

夏に、フランスのドルトーニュ地方で洞窟壁画を見た。
洞窟の中で線は、ウマの背になり腹になり、
マンモスの頭になり鼻になり髭になっていた。
線はあっけらかんと何にでもなれて、自由だと思った。
何かを生み出すことも、何にも定まらず、
あれでもこれでもあるようなものにとどまっていることもできる。
此処でも彼処でもない世界を漂って、中空に浮いている。

DMより


DMの言葉について鋤柄さん本人から次のような詳しい解説をしてもらいました。本展の解説にもなっているのではないでしょうか。

私の制作のおおもとに、ドローイングがあると思っています。
日々の生活のなかでふと体に入ってきた感覚を自分のものにしたくて線を描くこともあるし、世界のしくみのようなものを確かめたくて描くこともあります。
線は、縫い糸のように紙の裏側に突き抜けたりこちらにとび出したりすることもできるし、裏返ることもできます。目に見える表面を突き破って、見えない奥の世界に手を伸ばすこともできます。
線を引くことは、何かを生み出すことでもあるし、傷つけたり切り裂いたりすることでもあります。
食卓の横で歯磨きをするように、編み物をするように、私は手を動かして描いたり、切ったり貼ったり、捏ねたりします。そして絶えず変化していく世界を眺めています。手に導かれて「いま」や「ここ」から解放された、この世でもあの世でもない隙間のような場所を潜っていきます。絵はそういう世界を呼び込むことのできる場を作ることかもしれないと思います。
紙を切ったり貼ったり、捻ったり、粘土を捏ねたりすることも、私はドローイングだと思っているのですが、キャンバスに描かれた絵は、そうしたドローイングが集積したものだと言えるかもしれません。
コラージュブックと名付けたノート類や、コラージュボックスと名付けた、カッターシャツの化粧箱に紙の半立体などを入れたものも、アトリエの奥から出してきました。制作当時、これはなんだろうと自分でも消化できずにいたのですが、この薄い箱やノートに詰められた思考の痕跡の寄せ集めこそ、私にとっての絵画そのものではないかという気がして、そのまま机の上に並べました。ドローイングの集積という意味で、キャンバスに描かれた絵と同じように感じています。



鋤柄ふくみ〈コラージュ book1〉2022
鋤柄ふくみ〈無題〉2023



鋤柄ふくみ < 風景 > 展示風景
鋤柄ふくみ < 風景 > 展示風景
鋤柄ふくみ〈コラージュ Box 1〉2019 一部
鋤柄ふくみ〈雨森〉2021-2023



「レビューとレポート」の表紙へ使用された作品もありました。

鋤柄ふくみ〈無題(モノタイプ)〉 2018



鋤柄ふくみ < 風景 > 展示風景
鋤柄ふくみ〈落下する家〉2023



鋤柄ふくみ < 風景 > 展示風景
鋤柄ふくみ〈畑の風(ズッキーニ)〉2020-2023
鋤柄ふくみ〈私の畑〉2018-2023



鋤柄ふくみさんは愛知県立芸術大学出身、設楽知昭さんや坂本夏子さんも個展を行った名古屋の白土舎で個展を行いデビュー、筒井宏樹企画の「であ、しゅとるむ」、梅津庸一主宰のパープルームによるグループ展「パープルーム大学」へ参加をしてきました。また愛知県美術館にも作品が収蔵されています。今回の個展は野方の空白とマサヨシスズキギャラリーでの個展「穴」以来、5年ぶりの個展です。
弊誌「レビューとレポート」は鋤柄さんに1年間表紙を担当してもらいました。また秋庭史典さんによる鋤柄評の掲載もしています。


レビューとレポートバックナンバー
鋤柄さんの表紙は第3~16号です。
https://note.com/misonikomi_oden/m/m075a5bacea51


論評
膜と家—鋤柄ふくみさんの絵について
秋庭史典(名古屋大学大学院情報学研究科教授)


[参考]



名古屋の栄駅から1時間、名鉄瀬戸線の終点にある名鉄尾張瀬戸駅から歩いて10分ほどの商店街の一角に「Art Space & Cafe Barrack」はあります。入居する建物はアーティストランスタジオでありレジデンスも可能な「タネリスタジオ」が。スペースについては別のメディアとなりますが下記が詳しいですね。


「Art Space & Cafe Barrack」を外から。

カフェで注文した珈琲とプリン


鋤柄ふくみ < 風景 >
2023年10月19日(木) – 11月26日(日)
営業時間 木金11時 – 18時 土日 11時 – 19時
定休日 月火水

Art Space & Cafe Barrack
〒489-0814
愛知県瀬戸市末広町 1-31-6
Mail: cafebarrack@gmail.com

レビューとレポート