全身にススを塗った子どもたちが死者を引き揚げる久富の盆綱引き
福岡の筑後市で毎年8月14日に行われている久富の盆綱引きに行ってきました。福岡県指定無形民俗文化財に指定されており、久富熊野神社周辺を綱を引いて練り歩きます。
久富熊野神社と盆綱引きの歴史
久富熊野神社に行くと、盆綱引きの像と説明が置かれていました。
久富の盆綱引きは1643年に始まり、生前の悪事の報いで地獄に落ちた亡者や戦乱や災害、飢饉等で非業の死を遂げた死者を盆の期間だけでも釜から引き揚げて供養する施餓鬼(せがき)行事の一種だそうです。
久富の盆綱引きで子どもが綱を引くようになったのは、1641、1642年の大凶作で多くの人々が命を落とし、特に子どもの死者が多かったことから、その霊を慰めるためとされる説があります。
準備の様子
大綱は当日の朝から、神社の梁を使って編んでいきます。大綱は直径40センチ、長さ20メートル、重さ400kgほど。
綱引きで使うような締められた綱ではなく、たくさんの枝があるような編み方になっているのは、死者がこの綱を掴みやすくするためだそうです。
大綱を作る傍らで、ススの準備も行われています。すり鉢でススと水を混ぜ合わせて作ります。
盆綱引きが始まる直前に子どもたちにススが塗られます。腰には藁みの、頭には角に見立てた縄を巻いて、地獄の釜番である鬼に扮しています。
その間に大綱の準備も終わっていました。大綱は観音堂から伸びており、ここから死者を引き上げるそうです。
盆綱引き
10時の花火を合図に熊野神社から、「わっしょい」という掛け声とともに大綱を引っ張り始めます。
久留米の最高気温が39度と予報されていた酷暑の日。熱中症対策のため、水を撒く軽トラが先導します。
休憩を挟みながら3キロほどの道のりを歩きます。真っ黒な手で触ったアイスの袋も黒くなっています。
中継地点から折り返し、11時過ぎには熊野神社へ戻ってきます。
最後は万歳三唱で終わりです。
お盆といえば、先祖を供養するための盆踊りが一般的にイメージされますが、筑後市の久富熊野神社では盆踊りとは異なる奇祭で死者を供養しています。
近年の夏は気温が高いますが、大人も綱引きに参加して協力し、休憩所では主役の子どもたちのサポートに力を注いでおり、大切に守られている伝統的なお祭りであると感じました。
帰り際、子どもたちが置いていった藁の角や腰みのは後で燃やすだけなので、角を持って帰っていいよと言ってくださり一ついただきました。
家に飾っておくと厄除けになるそうです。
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