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何もできない大人の初めての伊勢神宮一人旅その4 ホテル編

周囲の薄暗さも相まってか、着いたホテルは写真で見ていたよりもなんとなく薄暗い感じがして申し訳ないがウキウキする気持ちはわいてこなかった。

中に入ってチェックインの手続きをして、自分の部屋に向かった。ホテルは中も薄暗く、なんだか怖い気持ちになったがまあこういうもんだろうなくらいに考えていた。

自分の部屋の鍵を開け、中に入る。部屋の電気をつけると、ゾッとする汚れが目に入った。

え、これを綺麗にしないの…?というか気付かないの…???というかどうやったらこの汚れつくの……????

嫌だな…と思ったが、過ごす分にはまあ見過ごせなくはない汚れだったので、言うレベルなのかもわからないなと思い、一旦飲み込むことにした。

荷物を置いて部屋の中を見ていた時、

あ、無理。

本当にゾッとした。一ヶ所ならまだしも二ヶ所目を見つけてしまったらもう見過ごせない。この部屋で過ごすの無理だわと瞬時に思い、フロントにお部屋を変えて欲しいと電話をかけた。

しばらくして係の人がきて、違う部屋に変えてくれた。

変えてくれた部屋も正直綺麗とは言い難いがホテル自体がそもそも新しいわけじゃないので仕方ない。窓を開けて換気しようとしたがなかなか窓が開かない。こもってるようなむわっとした空気を一刻も早く入れ替えたい…なかなか開かなかった窓が勢いよく開き、さっきとは違うベクトルにゾッとして肝が冷えた。

お弁当食べて気を取り直そう…とお弁当を開けて食べ始めた。伊勢に来たのに名古屋のお弁当を食べてることに気付いたが味噌カツが美味しかったのでなんら問題はなかった。ジューシーながんもどきの汁がガッツリとズボンにたれたので悲しくなった。

お弁当を食べていると壁にちらほらと名も知らぬ虫がいることに気付いた。窓を開けたからかなとも思ったが、階数は高めだったし、なんとなく位置的に元からいた感があった。

このホテルは虫もいるんか…

部屋は電気が全部つかないから薄暗いし…聞こうにも部屋変えてもらったから聞きづらいし…

なんとも重い気持ちのまま黙々とお弁当を食べ終えた。

この汚さだともはや何も信じられないモードになってしまい、初めて伊勢神宮に行くのだからとちゃんと重いのに着替えも持ってきていたのだが、お風呂に入るのは諦めた。怖いし。無理だった。入れなかった。

お風呂に入らないで行くなんて神様に失礼になってしまう…ちゃんと身を綺麗にして行きたいという気持ちは山々だったが本当に今回ばっかりは神様も許してくれるんじゃないか…と思って入らない選択をした。それぐらい本当に無理だった。

早く寝よう…

元々朝早く起きて参拝する予定だったので寝る準備をしてベッドに入った。

ここでまた意味わかんない不始末を発見し、無理を通り越してキレそうだった。流石に。

薄暗いし綺麗じゃないしで怖かったので電気消すのも怖いなと思い、全部消さないで寝ようと携帯をいじりながら寝る体勢に入った。

どれくらい経ったかわからないが、ウトウトとうっすら眠りに入っていたときだった。

「うあぁぁぁああああ!!」

びっくりして目を開き、心臓がバクバクしているのがわかった。

「うあぁぁぁああああ!!」

女の人の叫び声だった。廊下から聞こえる。まじずっと叫んでる。

酔っ払ってるような感じには聞こえず、キャー!とも違う、今までに聞いたことがない異様な叫び声だった。まじで何。本当何。すぐに電気をつけた。

フロントに電話するべきか?警察?足が少し震えてるのがわかった。

どうしようどうしよう……

考えながら何かあった時にすぐに出られるように少し身支度を整えた。

一瞬の出来事ではなく、怖かったからかもしれないが、叫んでる声は結構長く聞こえていたように感じられた。


どれくらい経っただろう。しばらくして静かになったが怖いままだったので友達にLINEをした。
 

私: 伊勢神宮行こうと思ってホテル泊まってるんだけどすごい叫び声して怖くてどうしよう

私: 落ち着いたんだがこわい

友:行動力

友:ごめんね、不安なのはわかる

友:行動力

友達はすぐに返事をくれた。後日お礼に赤福をお届けにあがった時に何も言わず急に伊勢に行ってたもんだから、こっちにも心の準備させて????と言われた。

友達はずっとLINEに付き合ってくれた。汚れの件は友達も絶句していたので私一人の暴走感覚ではなかった。

叫び声は聞こえなくなったものの、LINEをしてる間も外で出入りの音がするたびにびくびくしていた。怯える度に会話を遮って報告するも、友達は嫌がることなく対応してくれた。

文章を考えるんで返信が遅れた時は、返信止めないで!大丈夫!?と心配もしてくれた。すごく嬉しかった。

神社に行きたくなった時は神様に呼ばれてるという説を少し信じていた私はまさかこんな思いをすることになるとは露ほども思ってなかったし、頻繁に旅行してるわけでもないのに初めて旅行してなんでピンポイントでこんな怖い目に遭ってしまうんだと思って鬱々とした気持ちになっていた。

友達に言ったら

いいことが明日まとめてくるかもしれない

と言ってくれた。

色々な話をして、結局一時近くまで付き合ってくれた。本当に怖くて心細かったのですごくすごく助けられた。
外も静かになったし眠ることにした。

予定では早く起きて参拝するつもりだったが起きられるだろうか…

寝ようと思ってから記憶がなく、気を失うようにいつのまにか眠りについていた。

怒涛の一日はこうして終わりを迎えたのだった。
 

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