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“ご都合主義”もご愛敬?

 『グレイテスト・ショーマン』を観に行ったときのことである。

 この劇場にいる何パーセントの人たちが、この作品を楽しんでいるのだろう……そんな素朴な疑問が湧いて出た。

 見終わって思ったのは、エンターテインメントを扱うというのは、なかなかに難しいんだなぁということ。特にサーカス団を作っていくというストーリーのため、足りないエピソードがあるのでは?なんて思ってしまったら最後。いろいろと突っ込みたくなってしまう。

 おかしくない?都合よすぎない?そんなに、世の中主人公中心に回らないって……。

 そんなことを考えていたら、あっという間にエンディングを迎えていた。
 

 こんなことを言うと、たくさんの人たちにめちゃくちゃに怒られそうだけれど仕方ない。思ってしまったのだから、正直に生きるのは美徳に通じると信じよう。

 パフォーマンスを含め、演出はとても素晴らしかったと思う。

 映像は美しいし、影一つとってもロマンチックに仕上げてくるあたりが素晴らしい。オープニングからの入りはスムーズで、すんなりと物語への興味を引き立ててくれるのはとてもありがたい。

 これから面白いことが始まるぞ……!そんなドキドキを提供してくれる。

 それにキャストも最高だ。ヒューの歌声も笑顔も輝いていて、すごく楽しかった……と思う。

 それでも、見終わったあとに胸のあたりがもやもやとして消化不良なのだ。面白かったけれど、面白いはずなんだけれど……。こんな具合に逆接が止まらない。

 明るくなった会場では、よかったねーと口々に感想を言い合っている姿がそこらで見えて、なんだか自分だけ取り残された気分だ。

 音楽スタッフが一緒ということで比べられている『LALALAND』のほうが、ストーリー的にはまとまっているなぁと感じたし。というか、取り扱っている音楽の種類が違うから比較対象にしていいのかもわからなくなってくる。

 どちらもそれぞれの作品にマッチした音楽で、そこに関しての満足度はある。うん。それでも、『LALALAND』は見終わった瞬間にサントラを買いに走ったけれど、今回はいいかな。作品に入り込めるかどうかは、やはり購買意欲に繋がるのだ。そんなことを考えて、会場を後にした。

 『LALALAND』で取り上げられていたジャズは、もともと好きだったしね。スタートラインからして違うのかもしれない。

 それからしばらく、なんだかんだ『グレイテスト・ショーマン』の影響で音楽映画への波が来ている。

 先日、私の部屋に積まれていたDVDのなかの1枚である『ドリームガールズ』を観た。その前には『ヘアスプレー』。これはザック繋がりというところだ。

 『ヘアスプレー』なんて、それこそ10年位前に観たきりだった。やっぱり、面白い。人種差別という大きなテーマを取り扱っているのに、重すぎず見終わったあとにあるのは爽快感で。若い、高校時代の無鉄砲さが楽しめる映画だなぁと、数年前に高校生活に幕をおろした私は思ったのでした。
 そんな流れで、家にある音楽映画『ドリームガールズ』をとりあえず流してみたのである。音楽だけは知っていたけれど、細かいストーリーは知らなかったし。期待に胸を膨らませていたのだけれど、時間が経つにつれてなんとも言えない違和感が募っていく。

「——これ、面白いのか?」

 はじめはとてもいいと思うのだ。鮮やかなドレスを身にまとって、アマチュアのパフォーマンス大会に滑り込む女性たち。一度は出演を断られたものの、ある男性のアシストのおかげで何とか自分たちのパフォーマンスを披露して拍手喝さいを浴びる!ここは、やっぱりわくわくしてしまう。

 しかし、問題はそのあとだ。アシストしてくれた男性が、主人公たちに「君たちをビッグにしてあげよう」と告げるのだ。そのあとは、まさに絵にかいたようなサクセスストーリー。

 なんだかんだで素晴らしいアーティストになって、人種差別的な問題も通り抜けていつの間にかとてもビッグな存在に。そのあとに来るのは、喪失感。自分たちの思うようなパフォーマンスができない、事務所との方向性の違いによってそれぞれが思う未来に進もう……といった感じに“THE END”。
 歌姫が出演していて音楽には全く異論はないのだけれど、やっぱり気になるのがストーリーである。2時間ほど、とちょっと長い尺ではあるのだけれど、それにしても、色々とはしょりすぎじゃない?長くてだれているのか、短くて描き切れていないのか。全く分からないうちに映画は終わってしまった。
 また、途中でメインボーカルの女性が素晴らしい歌声であるにも関わらずにコーラスに回されたり、恋愛事でもめてみたりとまあ王道のトラブルがたくさん。

 王道が嫌いなわけでは決してない。決まりきった展開の少女漫画だって買い続けているし、スポ根ものだって。それでも、なぜかこの映画の王道は受け入れられない自分がいた。

 この映画の、私は何がこんなにも引っかかるのだろうと考えた時に、そういえば最近こんな気分になったということに気が付いた。
 そう、『グレイテスト・ショーマン』である。
 そこそこ面白いし、パフォーマンスだって迫力がある。それなのに、なんで私はこんなにも納得できないのだろう。

「あんた、サクセスストーリー大好きじゃない。『プラダ』とか『キューティ・ブロンド』とか。」
 これは、先日話した母の談である。ちょうど、映画の話をしていて、例にもれず『グレイテスト・ショーマン』について私がこぼしたときに言われた。
 そうなのである。私はヒエラルキー下部に属している高校生が主人公の映画をこよなく愛しているし、女性が髪を振り乱しながら仕事をしている映画も好き。なりふり構っていられない感じがいいなと思うし、好きなことに対して突き抜けていく姿勢が好きだ。たまに凹んだりするのもご愛敬。がんばれー!と手放しで応援したくなるし、ちょっと上手くいこうものなら思い切り抱きしめたくなる。
 それなのに、どうして『グレイテスト・ショーマン』や『ドリームガールズ』は受け入れられないのだろう。
 そんなことを悶々と考えて、一週間ほど。分かったことが一つある。
 どちらも、“努力”の過程が見えないように感じる、のだ。
 『グレイテスト・ショーマン』は主に頑張っているのは、(私的には)ザック・エフロンだと思うし、『ドリームガールズ』は大きな波といえば内輪揉めだ。歌に励んだり、ダンスの練習をしたりという姿があまり見えないのである。
 どちらもそんなものを観るためのものじゃないということは分かっている。でも、サクセスしているのだから何かしらの努力は重ねているはずなのに、それが見えない。だから、なんだか物足りなく感じてしまうのかも。

 私は、歯を食いしばっているような人を見るのが、どうやら好きらしい。そういうことに気が付くと、この2作が思ったよりもハマらなかったのには頷ける。逆境に負けない!みたいなものが大好きなのだもの。

 『LALALAND』は衣裳も可愛くて大好きだったし、ストーリーもなんだかんだご都合“すぎない”ところが良かったのかもしれない。あの作品のキーワードは“挫折”だと、私は勝手に信じ込んでいる。最後は成功へとつながるけれど、それでも甘い展開とは言えないから。
 『グレイテスト・ショーマン』はザック・エフロンが登場してからが本番だと思う。作中で一番成長するのは、ザック・エフロンだから。

 彼は、さすがにダンスも歌もうまい。胸板が厚くなっていて、それにはめちゃくちゃ驚いたけれど。いくらなんでも育てすぎだ、筋肉。私の知っている天使のようなザックはいなかったけれど、男らしくてちょっと情けない表情も似合うしグッとくる。年々魅力が増していくザックと、成熟した大人の色気が漂うヒュー。この対比ができるのは、なかなかにラッキーだ。
 上にも書いたようにヒュー・ジャックマンはカッコいいし、まさにヒーローという感じではあるのだけれど、なかなかに成長の兆しが見えないところがキツイような気がする。私が見逃しただけで、成長しているのかもしれないけれど。

 それに、周囲の人たちもヒューもといマーカスさんに対して甘すぎる。あんなの許していたら、ダメだ。

 最初に自分たちを救ってくれたとしても、そのあと自分たちを軽んじる人に対してあんな対応をしてしまったら、絶対にダメ。イロモノってやつなのかもしれない。でも、彼らは素晴らしい魅力にあふれている。自分たちをもっと大切にしてほしい。

 彼らに大切にされていることに胡坐をかいて、結局彼が本質を理解しているのか。そこが見えないから、なんだかこちらはモヤモヤしてしまうのだ。

 成功したい。家族が大事。サーカス団のみんなも家族だ!仲間だ!

 口ではなんとでも言える。彼のこれまでの行動では、そんな一言を投げかけたくなってしまう。成功に目がくらんで、足元がおぼつかなくなるなんて。お前のすべきことはそれじゃないだろ!! と何度ビンタしたくなったか。

 最後は大団円!みたいな雰囲気だったけれど、事実を並べていくとそうでもないからな?と念押ししたくなってしまう器の小さいワタクシ……。

 楽しかったんだけれどもね!重箱の隅をつつくようで我ながら性格悪い……と思いつつも、やっぱり言いたくなってしまう。

 期待値が大きすぎたというところも否めないけれど、“ただのおとぎ話”で終わってほしくなかったのだと思う。

 全てスッキリした形で、完結してスタンディングオベーションさせてほしかったのだ。

 いろいろと書き連ねてしまったが、エンターテインメントとしての見ごたえはやはり素晴らしい。

 映画というよりも、舞台を見たような感覚。そこにおいては、太鼓判を押せる。だから、ストーリーは重要視してはいけないのだと思う。

 あくまで、重要なのはパフォーマンス。それが分かっていれば、十分楽しめる作品であることは間違いないし、スクリーンで見るべき作品だと思う。
 なんだかんだ言って、観てよかったと思う。あの迫力を楽しめるのは、やはり映画館だからこそ。夢のような時間が過ごせるはずだ。

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