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成功する企業・組織と四大宗教の類似点からみる、企業・組織の「成功の鍵」をまとめてみた


※これは私が現在通っている大学院に提出したレポートの一部抜粋&note用に言葉遣いなど編集したものです


 私は今、東京・日本橋にあるリベラルアーツ系の大学院至善館大学院に通っている。そこではMBAも取得できるのでファイナンスや会計も学べば、哲学や社会学や宗教、デザインシンキングやパフォーマンスについても同時並行で学んでいく。

その大学院もはちゃめちゃでいい感じ&3期生も募集しているので是非ごらんください


 その中でも、先日全ての講座が終了した「比較宗教学」の授業は、私の心を鷲掴みにして離さなかった。担当してくださっていた橋爪大三郎さんの教え方もそれに拍車をかけたのだと思う。

ぜひすごく彼の出版物はどれも読みやすく言葉遣いが面白いのでオススメしたい。


 さて... この授業の最終レポートとして、私は以前から気になっていた「長く続くコミュニティの秘訣とはなんだろう」という漠然とした問いに対して、「宗教」という切り口から模索してみたいと思い、このnoteのタイトルでもある

成功する企業・組織と四大宗教の類似点からみる、企業・組織成功の鍵

を、紐解いた。

もちろんこのタイトルにあげたように企業や組織だけでなく、NGO/NPOがどう寄付者やボランティアとして携わってくれる人たちを巻き込み続けるかもそう。そして、いかにしてムーブメントをムーブメントで終わらせないようにするか

そんな持続可能なコミュニティはどう構成されうるのか宗教という切り口でみてみる、というレポートにした。


ちなみに私は、浄土真宗系ではあるがほぼ無宗教かつ、ちゃんと宗教について学び始めたのも最近なので"専門家では全くない"ことを断っておきたい。なので間違えている部分もあると思うが、一学生の見解として、(合計7100文字程度のレポートなので半分くらい抜粋はしているけれど)友人の後押しもあってnoteでも公開しようと思う。

友人がこんなツイートをしていて、

ちょうどレポート提出し終えていたので、

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あれよあれよとこんな感じになりました笑



0.はじめに

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 四大文明・宗教は今日に至るまで、それぞれ分派化や多少の変容はあれど、数千年の歴史をもち、現代においても人々の血肉となって我々の思想や言動すべての根幹となって支配してきた。私たちの生活になくてはならなくなった科学でさえ、たった400年の歴史しかないと思うと驚きを隠せない。

今後グローバル化がさらに発展し、想像を超えるほどのスピードで多くの人々が密接につながり、関係を持つであろう近い未来において、人々との関係性の中で何かを成し遂げたければ「宗教への理解」は切っても切り離せないものだと、私はおもう。

 また宗教とは、社会学者である橋爪大三郎先生の言葉を借りれば、「普遍的な原理を人々に提案し、大勢の人々を巻き込む力がある」ものであり、「大勢の人々が同じように考え、同じように行動する仕組み」である。

そこで、私は「宗教」を「長年にわたり多くの人々を巻き込むことに成功した社会構造の一つ」として捉え、「四大宗教の類似点からみる、企業・組織構造の成功の鍵」を紐解きたいと思う。もちろん、あくまでここでは企業・組織を中心に置くが、これは普遍的な組織やコミュニティにおいても展開可能であろう。

 また、「成功の鍵」を紐解くに当たっては、現在成功していると評されているいくつかのグローバル企業を参考にし、現代の成功企業と四大宗教の比較による類似点と相違点をもって解き明かしたい。今回はGAFAM(Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft)をその対象としている。もちろん、社会構造の継続性としてはより設立年度の早い歴史的な企業を抽出することもできたが、これからの社会における成功の鍵として捉えるにあたり、GAFAMがまずは最適であろうと仮定した。


1.四大文明・宗教の比較と類似点

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 まず第1章では、四大宗教の比較を通して類似点を紐解く。そして、それら類似点から考えられる企業・組織「成功の鍵」を紐解くこととしたい。

1-1:持続的な集合体の比較

 ここでは、四大文明・宗教を比較するにあたり比較基準はいくつもあるが、講義内で橋爪先生がおっしゃられた「宗教は最も重要な社会構造の一つである」という点から比較基準を選択する。多くの人々の集合体である「社会」のうち相対的に安定した構造として「宗教」を捉えるならば、複数の持続的な集合体を比較しやすい軸として以下の比較基準をもって抽出比較することが今回は最適だと考える。

 [持続的な集合体における比較基準]
集合体の使命、代表者/預言者、代表者と参加者の関係、ルール・契約、所属理由・メリット、共通の習慣、組織の特徴

1-2:四大文明・宗教の比較

 次に、1-1で整理した「持続的な集合体における比較基準」をもってユダヤ教・イスラム教・キリスト教・ヒンデゥー教、そして中国儒教を比較する。もちろん、どれもがこの比較基準において一概には言い表せるものではないが、あくまで類似点や相違点を抽出することを目的としている上で、端的に整理したものが下の図である。

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 一神教と多神教での違いや、そもそも中国・儒教はこれに並べるべきか否かは異論があることもあるだろう。しかし、これらほとんどの宗教において言える類似点として以下が挙げられるように思う。

1.集合体における一貫した世界観
2.カリスマの存在
3.カリスマからのメッセージの存在
4.集合体に参加している仲間同士の一体感
5.共通の儀式やルール
6.所属によるメリットや多幸感

 それぞれが信じるものや、ここでいう「代表者・神と人との関係」に違いはあれども、抽象度をあげればこれら6つの点が存在しているということが類似していると言えると思う。


1-3:四大文明・宗教の類似点のまとめ

 1-1で設定した比較基準に対し、1-2で抽出した類似点6つから考えられる企業・組織「成功の鍵」は、それぞれの集合体に属しているということの「所属意義」をいかに継続的に感じ続けられるかどうかや、圧倒的に信じ続けられる対象の存在があるか否か、ではないだろうか。それも、ここまで長期にわたって多数の人々の思想や言動すべての根幹となって支配するほどまでの「圧倒的」なものが必要である。

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2.現代の成功企業の比較と類似点

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 次に第2章では、現在グローバル企業として注目されているGAFAM(Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft)を1-1で抽出した比較基準をもとに比較したい。また、本章ではそれら企業の類似点からも考えられる企業・組織「成功の鍵」を紐解く。


2-1:現代企業の比較と類似点

 第1章と同じように、端的に整理したものが下の図である。各企業が明確にMISSIONやVISIONを言語化し発信しており、代表者と集合体の参加者(ここでいう企業の従業員)との間には明確なコミュニケーションがあり、そのコミュニケーション手法は企業ごとに特色があり様々である。

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 これらGAFAM全体の特徴を一部抜粋すると、どの企業も集合体への関わり方の柔軟性があり自由度が高く、個人の裁量権が多く意見を持たないことの方が評価されにくいということが言える。これは後に比較する宗教とは大きく異なる点だと言えるだろう。


2-2:現代企業の類似点まとめ

 上記5社の特徴の抜粋や掲載している図より、現代企業の類似点からみる「成功の鍵」をまとめるならば、

1.集合体の使命への共感
2.カリスマの存在と距離の近さ
3.参加者に与えられる裁量権の多さ
4.自由度の高さ
5.独自の企業文化
6.所属によるメリットや充実感

である。特に「2.カリスマの存在と距離の近さ」においては実際に直接の面談や直接の評価があるなど憧れの存在ともあるべきカリスマの存在が手に届く近さに存在することはその高揚感を高める一手なのかもしれない。


3.成功する企業・組織と四大宗教の類似点からみる、企業・組織成功の鍵

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 第3章では、第1章・第2章でまとめた「宗教ごとの比較」「企業ごとの比較」から抽出されたそれらの相違点と類似点をまとめる。そして、最終的にここで明らかになった類似点と相違点をもとに「企業・組織の成功の鍵」を紐解きたい。まず、特徴的な類似点・相違点として挙げられるものを以下にまとめた。

[類似点]
・カリスマの存在とそこへのあこがれ
・共通の習慣や儀式、ルールによる一体感
・集合体における一貫した世界観
・所属によるメリットや多幸感
[相違点]
・代表の変更可能性
・代表との接点の有無(距離が近いか)
・個人の裁量権(共通習慣へのコミット)の多さと自由度の高さ
・集合体への使命への自己判断による共感


3-1:類似点・相違点から見る成功の鍵を紐解く

 以上より、四大文明・宗教における類似点と、現代のグローバル企業GAFAMの類似点、そしてそれらの相違点より「企業・組織構造の成功の鍵」を紐解き、まとめたい。どちらにおいても共通して言えるのは、圧倒的なカリスマの存在や、共通習慣による集合体の一体感の創出、さらにそれらが複数の人数で度重ねることによる一貫した世界観の統一、集合体に属し続けるメリット(これは金銭的なリターンや定性的なものなどどちらであっても)が必要であることはわかった。

 ただし、相違点からみる課題も同時に見ておかなければならない。圧倒的なカリスマの存在が必要であるが、現代企業はそれらの変更可能性があるため脆弱性が高い。また、「宗教」においては共通の習慣や儀式、カリスマからの指示は絶対であるのに対して、企業においてのそれは自由度が高いことや、参加者たちの「共感」という至極曖昧なものによってつなぎとめていることに、その復元力や強制力の弱さもうかがえる。


3-2:四大宗教の類似点からみる、企業・組織の成功の鍵

 四大宗教の類似点からみる、企業・組織の成功の鍵を握る構造は、想像を超えるほどの変化の激しい現代においてこの「自由度」を確保しながらも、その脆弱性を解決しうるほどの代表や集合体の使命や世界観・参加メリットの「圧倒的な求心力」であるのではないだろうか。「圧倒的な求心力」のある企業や組織は数千年とならずとも、成功へと近づくと考えられる。

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4.おわりに

 数千年に渡り継続してきた宗教と、自由度が高くこれからの時代を創り出す企業・組織。どちらも得手不得手はあれども、「圧倒的な求心力」と「時代にあった変化」は今後の成功の鍵だと言える。企業はこれまでの宗教のように「圧倒的な求心力」をもって拡大するのか。宗教はこれから企業のように「時代にあった変化」をし、高い自由度と顧客ニーズにあわせて可変してゆくのだろうか。企業の宗教化、宗教の企業化は果たしてどこまで進むのだろうか。

 そしてスタートアップが推進され増えはじめたことや、SNSなどを通じてコミュニティやイベントなどを誰しもが立ち上げやすくなったこの現代では、その反面、信じた先が脆弱となりいつの間にか消えて無くなることも多くなった。そんな信じることのできなくなった組織に人々は継続的に所属する意思など生まれるのだろうか。真に信じずして何かを成し遂げることなどできるのだろうか...いつまでも問いは絶えない。

 最後に、企業や組織は今後宗教に代わる次なる文明となりえるのか、はたまたやはり宗教は今後より根強く未来の私たちの生活に紐づいていくのか、今や若者たちにとって「宗教よりも大切なもの」が現れはじめた現代において、企業や組織が人々にとって「大切なもの」となりえるかがこれから先の未来を見据えるにあたり持ち続けたい視点であり、自身の組織成長に向け問い続け、そしてこれら変化を理解できる人間でありたいと深く思う。


そしてこのnoteが(レポートが)、宗教のみならず多くの人々にとって互いに違いを認め合うきっかけになることを願い、帰属意識を間違った方向に助長して分断を深めることのないように願うーー


参考文献・参考記事

 橋爪大三郎『世界は四大文明でできている』NHK出版新書,2017,256p
 橋爪大三郎『アメリカ』河出書房新社,2018,352p
 橋爪大三郎『一神教と戦争』集英社,2018,256p
 中田考 ,橋爪大三郎 『クルアーンを読む』太田出版,2015,312p
 橋爪大三郎『世界がわかる宗教社会学入門 』ちくま文庫,2006,308p
 中村圭志,『西洋人の「無神論」日本人の「無宗教」』,ディスカヴァー携書,2019,301p
 橋本 努 『解読 ウェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」』講談社,2019,317p
 島田 裕巳『宗教消滅 資本主義は宗教と心中する』SBクリエイティブ,2016,224p
 ロバート・D・パットナム『孤独なボウリング』柏書房株式会社,2006,668p

<参考調査>
 Pew Research Center『Among religious ‘nones,’ atheists and agnostics know the most about religion』(2019.8.21)
https://pewrsr.ch/31UAYGV

 LifeWay RESEARCH『Most Teenagers Drop Out of Church as Young Adults』(2019.1.15)
http://lifewayresearch.com/wp-content/uploads/2019/01/Young-Adult-Church-Dropout-Report-2017.pdf

<参考記事>
 日経ビジネス『なぜ米国でメガチャーチが増えているのか?』(2018.3.23)
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/030600209/030600003/

 NEWSphere『キリスト教への信仰心が消える欧州 ムスリムも増加で変わる宗教地図』(2018.4.4)
https://newsphere.jp/national/20180404-2/


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