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憂うつな梅雨を彩る、京都暮らしの紫陽花めぐり

桜、紅葉、新緑、紫陽花、チューリップ、コスモス、金木犀、ネモフィラ、日本で暮らすということは、季節ごとの花を愛でることなのかもしれない。それだけ、次から次へと見頃の花々が移り変わる。

京都でも、ついこないだまで桜によって街全体が浮き足立っていたというのに、新緑の瑞々しさを感じていたら、次は紫陽花だ。あっという間に、目の前の景色が移り変わる。

そんななかでも、私は数ある花々のなかで上位で紫陽花が好きだ。

一色では表現できないような曖昧な色の広がりや、前日の雨によって水滴で葉が艶めく感じ、なんだか少しだけ寂しい気持ちにさせることとか。毎年のように紫陽花のある場所へと足を運んでは、少しだけ憂うつになる梅雨の時期を楽しんでいるのだ。

そんな憂うつな時期を彩る、紫陽花巡りをした京都暮らしの記録です。

智積院

大好きな智積院の紫陽花を見るのは、今年で4回目くらい。智積院は桜、新緑、紫陽花、イチョウ、紅葉と季節ごとに景色が変わるので、いつ行っても「まだこんなに美しい景色を発見できるんだ」と新しい出会いがある場所だ。

私が訪れたのは、雨上がりの晴れの日。紫陽花の葉っぱについた水滴と、日差しに照らされる明るい色彩に魅了されてばかりだった。雨の日のしっとりした雰囲気もいいけれど、晴れた日の紫陽花はより一層光と影のコントラストが強調されて、瑞々しい。

新緑の瑞々しい季節が一番好きだなぁと思う瞬間。

勝林寺

東福寺塔頭、臨済宗の勝林寺へ。夏のような暑い日に家から自転車で向かう。「やっぱりクーラーのかかった家に居ればよかったかも」なんてことが頭によぎりそうなほどの暑い日だったけれど、境内に入ったとたんに目に飛び込んできた緑の世界に一瞬で引き込まれた。次の瞬間には「来てよかった」という気持ちになっていて。これがあるから、私はなるべく外へ出て、新しい景色に出会いに行きたいと思ってしまうのだ。

丁寧に彩られた花手水がとてもとても美しかった。住職の方、スタッフの方が、心よりこのお寺を愛していて、季節の移ろいを大切にしていて、参拝者のことを考えているのかがよく分かる、繊細で細やかな愛の表現方法だなぁと感じて。それだけで心が洗われるような気になった。

勝林寺では、「坐禅とヨガ」の体験をした。気持ちのいい風を感じながら、時折新緑で揺れる木々を眺めながら、心を落ち着かせる時間。私が何よりも大切にしたい時間の過ごし方を再認識できたひとときだった。

六孫王神社

桜の名所でもある六孫王神社には、桜が見頃を終えたあとも、藤棚、紫陽花と境内にさまざまな彩りを見ることができる。近所にある神社のひとつなので、散歩の通りすがりで参拝することが多い。

枯れていた木に少しずつ桜の花びらが色づく姿、溢れんばかりの桜が咲き誇る姿、瑞々しい緑の葉をつける姿。どれもが美しくて、その移り変わりを見逃したくなくて、つい立ち寄ってしまうのだ。

3月
4月
6月

そんな六孫王神社では、6月になると紫陽花が咲き誇る。まさか、春に訪れていたときにはここに紫陽花が咲くとは思いもしなかった。そんな季節ごとの発見と新しい景色との出会いがあるから、私は散歩をやめられないのだと、ふと思う。自分の足で、見たい景色をどん欲に探し続けること。季節を越えた先で目の前の景色にどんな変化が現れるのかを、この目でちゃんと確かめていきたいのだ。

藤森神社

紫陽花の見頃が終わりそう、というタイミングで駆け込みで向かった藤森神社。紫陽花の名所として名前だけ知っていて、今年ようやく訪れることができた。

この日はあいにくの曇天だったけれど、このどんよりとした空気が似合うのが、何よりも紫陽花の魅力だ。景色の多くは、やっぱり雨や曇りの日よりも、晴れの日差しが似合う。けれど、紫陽花の場合は、雨や曇りが紫陽花のしっとりとした美しさを引き立てるような気がして。

つい晴れの日を望んでしまうのがおでかけというものだけれど、紫陽花の時期は「ちょうどいいな」と思えてしまう、天気に寛容になれる時期でもあるみたいだ。

季節は巡る、一瞬たりとも見逃したくない

当たり前のようなことを言っているようだけれど、季節は巡っていく。ぼぅっとしていたら、その巡りの速さに置いていかれて、美しい瞬間を見逃してしまうことになる。毎年の儀式のように、季節の移ろいや花々、景色を観察することは、日々をなんとなく生きていかないようにするためでもあるのかもしれない。

季節の巡りやその移り変わりの美しさを、一瞬たりとも見逃したくはない、と切実な気持ちで、思う。だって目の前に広がる景色は、ちゃんと美しくて愛すべきものであるから。一つひとつを感じ取りながら暮らす日々は、やっぱり愛すべき存在だ。

少しだけ憂うつな時期だけれど、それでも外に出て紫陽花の美しさを味わって。景色は誰にでも平等に広がるのだから、私はやっぱり1つでも多くの美しい景色と出会えるような暮らしを選びたいなぁと思う。そんなことを憂うつな梅雨を乗り越えさせてくれる紫陽花の美しさが教えてくれた。

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