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助産師って何してるの?~出産編その2~

こんにちは、みさきです。

前回、助産師のお仕事紹介第1弾を書いてみました。

今回は出産編その2として、続きを書いてみたいと思います。
助産師ってこんなことしてるんだな〜って知っていただけるとうれしいです。


〈3.痛みを和らげるケア〉


お産が進むには陣痛の力が必要です。

陣痛

というこの漢字からもわかる通り、痛みを伴います。

何時間も痛みに耐えるのは誰だって辛いですよね。
痛みをゼロにすることはできないけれど(無痛分娩を除いて)、いろいろな方法で和らげることはできます。それでも痛いことには変わりありませんが、お産を前向きに乗り越えるための一つの手段かなと思います。

陣痛は、子宮の筋肉が収縮することで起こります。

なのでもちろんお腹が痛くなりますが、それ以外にも腰痛を感じる方が多いです。経験的には8-9割の方は陣痛の時に腰も痛くなる印象です。

陣痛中の腰痛は、
腰をさする、指圧で押す、温める
といった方法で和らげることができるので、お産を担当したら必ずと言っていいほど腰をさすっています。

お産の後、「助産師さんが腰をさすってくれてすごく楽になりました~」とか、「夫のさすり方とは全然違って、ずっとここにいて…と思いました」とか言っていただけることがあります。

でも残念ながら助産師は陣痛の間中ずっと付きっきりになれるわけではないので、付き添っているご家族に腰のマッサージの方法を伝授したりもします。

今はコロナの影響で立会分娩が制限されているところも多いかとは思いますが、立会できる方は是非産婦さんの腰をマッサージしてあげてくださいね!

腰のほかにも、お産が進んでくると赤ちゃんが出口に近づいて下がってくるので、お尻が押されるような、踏ん張りたいような感覚や肛門のあたりに痛みが出てきます。

でもその感覚に身を任せて、子宮の入り口が全部開く前に踏ん張ってしまうと、赤ちゃんに酸素が行き届きにくくなったり、子宮の入り口が開きにくくなったり、体力が消耗したりするので、助産師が「いきんでもいいよ」というまでは我慢しなければなりません。

そこでその感覚を和らげるために、お尻を押さえます。
もっとピンポイントでいうと、肛門を押さえます。


よく、お産中テニスボールでお尻を押さえる…みたいな話聞いたことありませんか?
…ないかな。出産経験者じゃないと「わかる~!」とはならないのかな。

そう、テニスボールです。手のこぶしでもいいです。

前に旦那さんが野球部だったからって硬式野球のボールを持ってきた方がいましたが、それは固すぎです。笑
ゴルフボールはたぶん小さいしなんせ固いし、ゴムボールみたいのではやわらかくて意味がありません。
おすすめはテニスボールかこぶし。

肛門をぐっと、渾身の力を込めて押します。結構力入れても大丈夫です。
手加減してやると、たいてい「もっと押して!!!!!」と言われます。

これも助産師がお手伝いしますが、腰のマッサージと同じでご家族に伝授してやってもらうこともあります。


お産って、家族のビッグビッグビッグイベントですよね。
産婦さんが主体に、とよく言われていてその通りですが、旦那さんも自分の体のことのように考えてできることをどんどんやってもらうと、「家族で乗り越えた!赤ちゃんを夫婦で協力して迎え入れた!」っていう感覚が増すのかなーって思うんです。

もちろん立会したくないされたくないご家族もいるだろうし、家族の形や在り方は様々だと思うので一概には言えませんが、立会されている場合は、夫婦の関係性や旦那さんの力量や疲労度を見て、産婦さんの要望を聞きながら、旦那さんの役割を奪わない程度にマッサージなどのお手伝いをするようにしています。

産婦さんに直接的にケアをするだけでなく、ご家族がお産に参加できるように…というお手伝いもしています。



〈4.お産を進める、リラックスを促すためのケア〉


助産師はただお産の進行に合わせてあれやこれやしているだけではありません。

やっぱりお産の時間が長引けば長引くほど体力は消耗していきますし、陣痛も子宮の筋肉で起こっていることなので、疲れると筋肉も疲労して陣痛が弱くなり、さらにお産の時間が長くなる…なんてことはよくあります。

なのでなるべくスムーズにお産が進むようにお手伝いします。

メカニズムや根拠までお話ししてしまうと長くなってしまうのでやめときます。

具体的には、体を動かすこと、温めること、重力の力を借りること、水分栄養摂取、トイレに定期的に行くこと、体勢を工夫すること…などなどがお産を進めるために良いとされていて、実際にお産が停滞していたのに、お風呂に入ってもらったらあれよあれよという間にお産が進んだ~なんてこともあります。

陣痛が来ていても歩いたり、スクワットしてもらったり、あぐらをかいて座ってもらったり、四つん這いになってもらったりもします。

お産の進み具合や陣痛の程度、産婦さんの好み、赤ちゃんの下がり具合などをみながら、その人にはどういう方法が合っているのか考えて色々な提案をし、お手伝いしています。

でも、これを読んでいるあなたが女性か男性か、自分やあるいはご家族が出産を控えているかそうではないかわかりませんが、必ず覚えておいてほしいお産をするうえで一番大事なことは、

リラックス

です。

お産で大事なのは、リラックスすることです。
大事なことなので2回言いました。

緊張しすぎていたり体に力が入っていたりすると、お産は進みにくいです。
なるべく力を抜いてリラックスすることが大事です。(3回目)

リラックスする方法は人によってさまざまですよね。
ゆったりした音楽を聴いたり、アロマをかいだり、体を温めたり、マッサージしてもらったり。陣痛に合わせて呼吸法をすることもよいですね。
産婦さんがなるべくリラックスできるように環境を整えたり、方法を提案したりもします。

ちなみに呼吸法は、個人的には深呼吸さえできればOKだと思っています。
ゆっくりとした呼吸を止めずにできることが大切です。
痛いときには人って呼吸を止めがちなので、うまく呼吸できるように産婦さんの隣で誘導したりもします。

こういうこともしているって、あの心臓血管外科の先生は知らないんだろうなあ。


〈5.精神的サポート〉

陣痛が来るというのは、赤ちゃんと対面できるその瞬間が少しずつ近づいてきているということでもありますが、やはり痛みを伴うものなので

「つらい」

「やめたい」

「もういやだ」

と口にする方も少なくはありません。

陣痛=赤ちゃんを迎え入れるために必要な痛み
お産=赤ちゃんとの共同作業

と思って乗り越える力にしてほしいですが、陣痛の痛みが長時間続く中なかなかそう思えないこともよくあります。

わたしも産婦さんから、

「もう無理です。帝王切開にしてください」

と何度言われたかわかりません。

でも1度始まった陣痛は止められないし、もうゴールに向かって進むしかないんですよね。
折れそうになる心やぽっきり折れた心を、なんとかお産に向けて前向きに持ち直すのはなかなか容易ではありません。


私は新人時代、こういう産婦さんの負のオーラや空気に飲まれやすくて、精神的なサポートが難しい…とよく思っていました。
先輩に「あなたまで暗くなってどうするの」と言われました。その通り。

そういうときにどう対応するかって、正解はないんですけど、産婦さんのタイプによってどうするのが合ってるのかな~って考えたりします。

たまにお母さん方の出産レポでみる、「何言ってるの!あなたが生むのよ!頑張りなさい!」的な叱咤激励タイプか、「つらいですよね…」的なまずは共感傾聴受容タイプか、「大丈夫!ちゃんと進んでるよー!」的なポジティブタイプか。多分ほかにももっとあると思うんですけど。

私は叱咤激励タイプは性格的にできませんが(それが好きな人もいると思う)、相手に合わせた対応ができるように心がけています。

でも何度お産のお手伝いをしても思うのは、寄り添ってくれる存在って大事だと思うんですよね。
「辛い陣痛に一人で耐えてる…」と思うと孤独だし、辛さも増す。
もちろん赤ちゃんの一緒に頑張っているけど、痛すぎてそれに気づけない瞬間も多々あります。

そういうときに、お産に関する知識があって、なおかつ目に見える形でそばで励ましてくれたり、気持ちを聞いてくれたりする。そういう存在がいることで、お産を乗り越える力になったらいいなーって思ってます。

ただそこにいるだけで安心する温かい存在でありたいな、と。
これはもちろん信頼できるケアや医療行為もあってこそだとは思いますが。

そういう思いでお手伝いさせてもらっています。


*****


長くなってきたのでこのへんで。
たぶん次回で出産編は終わりになるかと思います。
お付き合いいただきありがとうございました。


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