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絵本レビュー「いのちをいただく」

読みながら泣いてしまいました。タイトルそのままですが「いのちをいただく」ことについて考えさせれらる絵本です。涙なしで読み切れるか自信がないので、小学校の読み聞かせに選んだことはまだないのですが、いつか高学年のクラスで読んでみたい絵本です。

大人も子どもも一度は、動物園や牧場で牛や豚や鶏を見る機会はあると思います。そうするとやっぱり「牧場で働く人たちは、大事に育てている動物を出荷してしまうとき、辛くないのかな」、「人間が食べるために育てられる動物はかわいそうだな」など考えますよね。
観光牧場とかに行くと、お土産屋さんにソーセージとか地鶏の加工品とか売ってたりするので、「え、さっき見てた豚さんがこの骨付きフランクフルトになっちゃうの??」と、考えざるを得ない状況だったりもして。

ただ、食肉加工の仕事ついてはあまり知る機会はありません。牧場でも豚からソーセージに変わる途中経過の説明はないので、かろうじて牧場で売っているソーセージを美味しく食べられますが、もし牧場内に食肉加工センターがあったら、とてもそこでお肉を食べる気にはならない気がします。

坂本さんは、食肉加工センターに勤めています。
牛を殺して、お肉にする仕事です。
坂本さんはこの仕事がずっといやでした。

「いのちをいただく」内田美智子

この絵本の主人公は食肉加工センターで働いている坂本さん。感情が入ったらできる仕事ではないだろうから、淡々と機械的に仕事をしているのかな、と思いきや『殺される牛と目が合うたびに仕事がいやになり、いつかやめよう、と考えながら仕事をしている』そうなんです。それは辛い。

そんなある日、坂本さんの仕事場に、牛を出荷するためおじいちゃんと女の子がやってきます。女の子は牛の”みいちゃん”のことが大好きで、本当は出荷したくないのです。でもどうしても、生活のために出荷しなければならず、女の子は『みいちゃん、ごめんねぇ、ごめんねぇ』と”みいちゃん”に話しかけています。それを聞いて、坂本さんは『この仕事はやめよう、もうできん』と思い、明日の仕事は休もうと考えていました。
帰宅後、このことを息子のしのぶくんに話したのですが、『ふーん』と言っただけ。
坂本さんはどうするのでしょうか…。そしてみいちゃんはどうなるのか…。

正直、この絵本を読んだ後、こんなにみんなが辛い思いをするなら肉は食べるべきじゃないのかもという気にもなりました。
肉を食べること(特に牛肉)は、環境負荷がかかるといわれていることもあり、今後は少しずつ肉の消費量は減る流れに向かっているのかな、と思いますが、やっぱりお肉は好きなので、食べるときは、動物にはもちろん、牧場の人、食肉加工をしている方にも感謝しなければ、と改めて思いました。

幼稚園児~大人までおすすめです。方言(熊本弁?)で書かれているので、小さいお子さんが自分で読むのは少し難しいかもしれません。ただ、方言で書かれていることで、よりリアルな感じが伝わってきます。(実際、実話なのですが)
ちなみにこのお話、単行本と絵本の2種類あります。私が読んだのは単行本の方で、分類としては絵本ではないみたいですが、絵もたくさんあってルビもふられているのでお子さんも読めます。巻末には、九州大学の佐藤剛史助教が農漁業や保育に携わる人たちを取材し、執筆した現場ルポ「いただきますということ」を収録されています。ただ、絵本版の方が本のサイズも大きく、絵も子ども向けな雰囲気なので、小さなお子さんには絵本版がいいかもしれません。

単行本バージョン(絵本コーナーにはないかもしれません)
↓ 題字は「花ちゃんのみそ汁」の安武はなさん

絵本バージョン↓


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