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13. 木材の利用~グローバル編~

はじめに


こんにちは!ミライノラボ学生研究員の鈴木ひとみです。
今回は海外の木材の利用について見ていきます。

カーボンニュートラルと木材


2020年10月、菅義偉内閣総理大臣は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました[1]。

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カーボンニュートラルとは、人間活動によって排出される温室効果ガスを、すべて吸収・除去することで、地球上の炭素の総量を変化させないことを意味します。温室効果ガスの発生が不可避な生産活動が排出した温室効果ガス分の炭素を、植林などその他の活動によって吸収し、活動全体で排出量をプラスマイナスゼロにするといった具合です。また、カーボンニュートラルが実現された社会を脱炭素社会と呼びます。脱炭素社会の実現はSDGsの13番目の目標気候変動に具体的な対策をの達成に繋がります。

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このカーボンニュートラルの実現に際し、今、木材利用に注目が集まっているそうです。
森林を伐採し、木材として利用されている間、木材は炭素を貯蓄している状態です。つまり、温室効果ガスとして炭素を地球上に放出することを防いでいます。さらに、木材の利用が終了し、廃棄され燃やされるときに温室効果ガスが発生しますが、森林の更新により育った樹木がその分のガスを吸収してくれます。また、長期的にみれば、もともと空気中に存在した炭素を吸収、そして木材利用間は貯蓄、廃棄後に排出しているため、地球上の炭素量に変化をもたらしてはいません。このような観点から、木材利用はカーボンニュートラルの実現の一つの方法として期待されています。

フィンランドの2つの取り組み


カーボンニュートラルの実現を掲げた日本。その成功には木材の利用が一つのカギなのではないかと思います。
そこで、海外における木材の利用について調べてみました。
調べてみると、日本と同様、森林大国であるフィンランドの取り組みが画期的でしたので、今回はこの取り組みについて考えていきたいと思います。

まず、1つ目はウッドシティーと呼ばれる取り組みについてご紹介します。


首都ヘルシンキの西部で行われているこの取り組み。オフィス棟、ホテル・商業棟、住居棟、駐車場棟などで構成する複合開発で、開発地の街区全体を木造・木質化するというものです。

フィンランド

[2]

最大8階建ての高層ビルは、支持構造を含めて完全に木造で建設されています。
さらに、林産地であるヴァルカウス市で木材を調達、単板積層材の製造、組み立てを行い、約320km離れたヘルシンキまで輸送し施工しています。つまり、生産地の地方と消費地の都市を直接結び付ける仕組みが作られています。

2つ目の取り組みは、林産資源循環を目指す企業の取り組みです。
フィンランドの総合林産企業であるUPMは、サーキュラーエコノミーの達成に向けて、木材の利用方法を新たなものにする取り組みを行っています。サーキュラーエコノミーとは、以下の3つの原則に基づいて循環社会の構築を目指す取り組みで、経済の発展と環境負荷の削減の両立を目指す循環型経済モデルです。

図表

[3]

フィンランドは2016年より取り組みを行っており、2025年までのサーキュラーエコノミー・ロードマップを策定し、「食」「森林」「テクニカル(製品ライフサイクル)」「輸送・物流」「国際的な共同アクション」の5つの分野に取り組んでいます。このサーキュラーエコノミーの達成はカーボンニュートラルの実現を含んでいます。


UPMは、原木の挽き材として使用される他の残りの部分は高品質の原材料に加工をし、チップはパルプに、おがくずはパルプとペレットに、樹皮はエネルギー生産用に焼却され、ごく一部は造園業に使われるというように、余すところのない木材の利用を行っています。さらに、エネルギーの再利用なく廃棄物を焼却しないという取り組みを2030年までの達成を目指し行っています。

このように、フィンランドでは環境問題の解決のために木材を利用するという考え方が広く知られ、そして最重要視されているようです。

おわりに


ここまでお読みいただきありがとうございました!
日本においても、環境問題と木材の利用の結びつきが、これからますます強くなっていくのではないでしょうか。木材利用が環境問題の解決策として主流になるような、そんな社会の仕組みができればと思います。

このプロジェクトの概要はこちらから~!


参考文献
[1] 環境省 脱酸素ポータル 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて

[2] MASU PLANNING
WOOD CITY URBAN COURITYARD AND ROOFTOP GARDEN

[3] ELLEN MACARTHUR FOUNDATION
WHAT IS THE CIRCULAR ECONOMY?

[4] UPM TIMBER
UPM drives towards a circular economy


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