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気温30度のクリスマス(駐妻記 番外編2)

 バンコクのクリスマスは、何よりもイルミネーションと装飾がすごい。すごかった。この時期の街中は、建物の中と言わず外と言わず、巨大でド派手な装飾で溢れかえる。

 私がバンコクに住んでいたのはもう10年も前のことだし、昨今はSDGsの流れもあるから、昔ほどではないのかなと思っていたが、在タイしている知人によるとどうやら今年もすごいらしい。SDGsはどこへ…

 しかし、新型感染症で大打撃を受けた観光産業を少しでも取り戻すためにも、そこは力を抜けないところかもしれない。人々の気持ちを少しでも明るくして新しい年を迎えたい、という気持ちから、なのかもしれない。

 この時期、気温は平均28~30度くらい。乾季だ。寒い乾季は、もっと気温が低くなることもあるし、朝晩は20度前後まで低下する日もある。基本的に常夏なので、日本で感じる20度より、ずっと寒く感じる。まれに13~15度くらいまで下がると低体温症で死者が出ると聞いたことがあるが、そこまで気温が下がった年はなかった気がする。それでも半袖やノースリーブ、ハーフパンツにサンダルという出で立ちでクリスマスを迎える。

 タイの人は、日本と同じでイベント大・大・大好きだ。敬虔な南伝仏教の地とはいえ、民間伝承やヒンドゥー教の神様、外来の宗教も大切にするタイには、やはり汎神論的なアジアの気風というのは漂っている。クリスマスは特に盛大なイベントであることに変わりはないし、観光業という視点からも、大事な行事だ。

 11月の満月の日のロイカトンが終わると、街はいっきにクリスマスムードが高まる。だがしかし日本のようにクリスマスソングが流れて…というのはあまり、記憶にない。聴覚の刺激よりとにかく視覚刺激、という感じだ。

2010年頃のエンポリアム前。
夜はライトアップする。
こんな写真しか残っていなくて残念。
もっとすごい装飾が沢山あったのに…
2021年、今年のアイコンサイアム。
クリスマスというよりは
ニューイヤーを意識しているのかも。

 バンコク駐妻界隈では、「クリスマス屋さん」というのが人気だった。それがこちら「クリスマス工場」。日本人の多く住む地域からみると、チャオプラヤー川の向う側で少し遠い。車で30分くらいの住宅街の中にあるらしい。

 私は行ったことがないが、友達はここでツリーを購入し、毎年飾っていた。金額が特別安いわけではないようだが、品揃えが凄まじく良いらしい。いわゆる「問屋さん」のようだ。もちろん、商業施設などのクリスマスグッズよりはかなりお安いとのこと。日本だと、自分の背丈より大きいツリーはあまり見かけないが、ここでは大小さまざまなツリーやオーナメントが買える。大きなものだと3メートル越えのツリーもあるらしい。

 駐在家庭の家というのは総じて広かったり大きかったりするので、各家庭でかなり大きいツリーを飾っていた。日本では味わえないことのひとつだったと思う。

 「生の木のツリーを売っている」という噂もあったのだが、今回調べたところ「クリスマス工場」さんでは生木のツリーは売っていないようだ。もしかしたら、別のところに「生ツリーやさん」があった可能性があるが、知人に生ツリー購入者はいなかった。

 ちなみに、この「クリスマス工場」、12月近くだけの限定店舗だと思っていたが、1年中オープンしていたことを今回知った。そうだったのか…

 クリスマス間近になると、各デパートや商業施設でのクリスマス商戦も激しくなり、フロアでクリスマスグッズ売り場が展開されるのだが、その規模もかなりのものだった。我が家はそうした売り場のひとつで組み立て型ツリーを買った。

 また、タイには「ジムトンプソン」というシルクのお店があるのだが、そこでもクリスマスグッズを扱っている。有名デパートや有名ホテルなどに店舗を構える高級な店なのだが、可愛いオーナメントが多く、そこのクリスマスグッズがお気に入りだという先輩駐妻がいた。さすがにツリーは売っていないが、他ではあまり見かけないような、ちょっと目を引く飾り物が多い。デザインが洗練され洒落ている。先輩が言うには「クリスマスやさんでも買ったけど、ジムトンのほうが結局は残る気がするの」ということだった。

 そんな言葉につられて私もセールで購入したことがある。確かに、10年後の現在手元に残っているのはこのジムトンのセールで買ったクリスマスグッズだったりする。日本でも使う気満々だった子供の背丈ほどのツリーは、最後の年には少々綻びが目立ち、残念ながら帰国するときに手放した。ジムトンは高額なので躊躇するが、先輩の言う通り、トータルなコスパを考えると損ではないのかもしれない。

 さて、子供が小さかったので、我が家は在タイ期間中ずっとファミリークリスマスだった。独身者やタイの人々がクリスマス前後にどのような楽しみ方をしていたのかは、よくわからない。

 ファミリークリスマスの場合は、外で食事をすることもあるが、子供のいる家庭はたいてい、クリスマスケーキを購入した。

2012年頃のクリスマスケーキ。ぼやけてる…イチゴがヘタ付


 バンコクには日本人向けのクリスマスケーキを作っているケーキ屋さんが何店舗かあった。かつてタイでは相当な確率でバターケーキが多く(暑いせいだと思う)、生クリームのケーキはあまり見かけなかったから、日本と同じイチゴの生クリームのホールケーキが味わえる店は貴重だった。今はずいぶん美味しいケーキ屋さんが増え、クリスマスケーキも選び放題だそうだ。

 持ち帰りのデリバリーサービスなどのチキンのオードブルを出す店もあり、当日はそれなりに充実したクリスマスを過ごせる。

 そんなわけで、暑いし雪も降らないし、キリスト教徒の多くない南国のクリスマスは確かにちょっと味気ない。いかにもなクリスマスではないのかもしれないが、アパートメントごとにツリーを飾ったりクリスマスパーティーを開催したり、サービスアパートではケーキを提供したりして、盛り上げていた(これがバターケーキだったりする)。

 少なくとも子供たちは、南の国だからサンタさんが来ない、などとは露ほども思っていなかったと思う。

 当時の息子は、サンタさんを待ち焦がれるあまり、イブの夜はなかなか眠ろうとしなかった。

「ほら、今、しゃんしゃん、って、鈴の音がしたよ!今来るんだよ!」

 なんて可愛らしいことを言っていたものだ。今はすっかり大きくなって、生意気盛りだ。当時のことは、もちろん覚えていない。

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※この記事は、ひぐちさんの「Let's シェア! 外国のクリスマス🎄」に参加したものです。

#外国のクリスマスをシェア2021


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