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7_チョコレート嚢胞だった

次回予約の7月22日までに、右の卵巣温存か、摘出かを決めなければならない。シングルならば摘出一択なのだが、私にはいちおうまだ相手がいる。そしてその相手は子供を望んでいる。今回の診断と結果をイタリア人の相手に伝えるのは、大変だった。

前回までの記事。

1_チョコレート嚢胞だった
2_チョコレート嚢胞だった
3_チョコレート嚢胞だった
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5_チョコレート嚢胞だった
6_チョコレート嚢胞だった

まず英語ですら、卵巣とか卵管をなんて呼ぶのか知らなかった。日本語からイタリア語に翻訳するより、英語から翻訳するほうが精度が高い。まず、日本語から英語に翻訳し、その英語をイタリア語に翻訳する。チョコレート嚢胞とは。その治療法は。再発や癌化の可能性について。

友達に日本語で説明するにも簡単じゃないのに、それを英語にし、英語をまたイタリア語に翻訳。しかも私のパートナーは文字からの理解力が低いので(会話での理解力や説明力が彼はとても高い)、私はまずイタリア語に翻訳した文章を彼とのチャットに投稿した後、電話でこれを読み上げて理解させた。

これはネットから拾った画像なのだが、まず彼は女性の体内がどうなっているのかも知らないはずだと思ったので、説明文にこの画像も添えた。

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イタリア語で卵巣は「Ovaia」、卵管は「Tuba di Falloppio」
英語で卵巣は「Ovary」、卵管は「Fallopian tube」

日本語からイタリア語に訳すよりも、英語からイタリア語に訳すほうが精度が高まる理由がわかるでしょう。英語に近い単語がイタリア語には多くある。StupidはStupidoだし、ExaggerateはEsagerareだ。語源が一緒なのだ。

でも、Spoon(食器のスプーン)はイタリア語だとCucchiaio(クッキアイオ)、Room(部屋)はCamera(カーメラ)、またはStanza(スタンツァ)と全く違うから、一から覚える必要がある単語もたくさんある。

話は反れたが、とにかくそんな感じで、イタリア語で今の病症を説明しつつ、図までつけて説明したけれど、どこまでちゃんと理解してもらえたか…。

悪いところだけ切除しても、私の年齢から再発や癌化の可能性があるので、卵巣と卵管の切除が望ましいと医師から勧められていることを改めて伝えると、「セカンドオピニオンが必要なのでは?」との答えだった。

もうすでにこれがセカンドオピニオンだと思っている。市立病院では、嚢胞だけ摘出する手術になるでしょうと言われていたが、いざ手術をする病院に転送されてはじめて、卵巣・卵管摘出を勧められたのだから。もうこれ以上別の病院にあたるエネルギーが私にはなかったし、自身としては卵巣・卵管摘出という結論に納得がいっているので、さらに別のオピニオンを仰ぐ気もなかった。彼は頑固で言い出したら聞かないので、ハイハイそうしますと言っておいた。

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もう正直この7月は何があったか覚えていないほど忙しくてよく覚えていなくて、7月22日があっという間に来た感じだった。

まずは前回の血液検査の結果報告。コレステロール値がやや高いのと、腫瘍マーカーCA19-9の値が高めだが、これは卵巣嚢胞を持っていると上がってしまうものらしく、異常なし。

「温存か、付属器切除か、どうしますか」
「付属器切除にしますが、…」

付属器切除には何の迷いもなかったが、ひとつ気になっていたことがあったのだ。ネットで付属器切除について色々調べているうちに、開腹手術での方法を紹介していたのだ。てっきり腹腔鏡手術だと思っていたが、そうか…。卵巣・卵管を摘出するんだから、お腹開くよね…。

身体に大きな傷なくここまで生きてきたので、卵管・卵巣を摘出することよりも、お腹を15センチも切らなければならないことのほうが(ネットの情報では15センチと書いてあった)抵抗があった。

「付属器切除でお願いしたいのですが、お腹開きますか?」

この病院はそもそも腹腔鏡手術の経験が豊富だからということで紹介された病院だ。付属器切除も腹腔鏡手術で可能とのことで一安心。でもここで疑問が。腹腔鏡手術とは、お腹に小さな穴をあけて、そこからカメラと手術器具を入れて、モニターを見ながらおこなう手術。お腹には小さな穴しか開けない。一番大きな穴で15mm。では切り取った卵巣と卵管はどこから取り出すの??ということ。

そこで医師は腹腔鏡手術の詳しい説明が書かれた用紙を見せてくれて、説明してくれた。おへそ付近に小さな穴を開け、そこから医師がモニターを見ながら手術をするためのカメラを入れる。そのほか、操作のための穴を3つ、トータルで4つの穴がお腹に開く。

腹腔鏡手術のリスクとして、他臓器の損傷、想定外の出血の際に輸血が必要になること。また、お腹に開けた小さな創(きず)から検体を摘出するため、腹腔内で病変を小さく切り刻む(謎が解けた!)。

悪性腫瘍の場合は病変の一部が腹腔内に飛び散ることになり、悪影響になることがある。嚢胞は潰すそうだ。私の卵巣も癌などの病変をはらんでいないとは言い切れず、切り刻んだり嚢胞を潰した際には、病変の一部が体内に飛び散ることにより、悪影響になることもあると。

また、出血や臓器損傷、重症な癒着があった場合などは、医師の判断で開腹手術への移行の可能性があることも教えてくれた。つまり、腹腔鏡手術と思って麻酔で眠って、次に目覚めたときにお腹に15センチほどの手術傷ができている可能性もあるということだ。

左にも少し見られた嚢腫も、手術時に肥大が認められれば嚢腫だけ摘出してくれるそう。

付属器切除と決まってからは話は早かった。医師がカレンダーを確認し、手術は11月1日で予約を取った。

手術までの期間、ホルモン療法が必要なこともわかった。レルミナというピルを手術までの約3か月間飲み続け、身体を偽閉経状態にする。

子宮内膜症は卵巣から出る女性ホルモンであるエストロゲンに反応して大きくなる。レルミナというピルを服用することで低エストロゲン、つまり偽閉経の状態にする。手術前に偽閉経の状態にしておくことで嚢胞の肥大化や他の臓器との癒着を防ぎ、手術をしやすい状態にしておくのだそうだ。

診察室を出たあと、入院の説明があって今日は終わり。何度か手術は経験があるので、高額医療費控除の申請の話や、入院の部屋は保険がきかないことはわかっていた。そのほか個室の説明や金額、入院のルールなどの説明、入院前の9月末の健康診断や、コロナ検査の説明があって今日は終わり。たくさんの説明書やパンフレット、同意書でバッグはぱんぱん。そのうえ、入院直前にやるコロナ検査のキットまで渡されて、さすがに早すぎじゃ…と思った。9月末の健康診断の日に渡してくれればいいのに…。紛失する人や、当日忘れる人いそう…。

会計をしてみてその高さにびっくり…え、MRIしたわけじゃないのに1万円…。レルミナって保険適用外だっけ?さっそく病院に問い合わせると、レルミナはちゃんと保険適用で3割負担になっていた。つまり、この薬がめちゃ高いってこと。手術までの三か月間は、月額約1万円の出費になるってわけか…。身体のことだから仕方がないとはいえ、キツイなぁ。

卵巣・卵管摘出でも腹腔鏡手術でやってもらえるとわかって安心した日だった。パートナーがいるから一応彼にも聞いておかなきゃ、と話をもちかけたものの、私の中で付属器切除について最初から迷いがなかった。もう年齢的にも子供を産める歳じゃないし、彼は子供を欲しがっているけれど、私にはもう「一か八かにかけて頑張ってみる」という余力も勇気もない。なにより子供に対して無責任すぎる。私は30代を迎えたばかりじゃないのだ。3年に渡る長い長い遠距離恋愛中、彼の、私の立場や状況へのあまりの無理解さで失われた時間と信頼は計り知れない。もう私は子供を産む意思は全くないということ、早く彼に伝えなければ。

続きです。


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