見出し画像

ドラマで勉強(虎に翼第15週)

「虎に翼」第15週は寅子と家族の問題にスポットが当てられました。

寅子にとって「私は世間から、他人からどう見られているのか」を初めて意識出来る機会だったと思います。

寅子にとっては踏んだり蹴ったりの週でしたね。

福田夫婦の離婚調停をしていて、妻の瞳から刃物で切り付けられそうになったり。
後輩からの陰口を聞くことになったり。

梅子さんがフォローしてくれましたが、陰口の内容は否定しなかった。
言い方は優しいけど、決して容赦しないのが梅子さん。

福田瞳の言動を見ていて「あぁ」と思ったのは。
相手に対して自分都合の理想像を描き、勝手に味方だと思い込む。
理想通りに進まなかった時に、一転して憎しみに変わる。

「分かって欲しい。分かってくれるはず。」それが叶わないと「おまえが悪い」になる。

この人の場合は一貫して「私は悪くない」でしたけど、割と恋愛の時にあるあるな感じ。
寅子にとっては本当にトバッチリもいいとこです。

寅子は思いがけず「女性の希望の光」にされてしまった。

ラジオで「男女関わらず機会を与えられることを望みます」と強く訴えていた。
寅子が一貫して目指しているもの。

ただ、一般人の視点では「女性の地位向上」に尽力する「女性の味方」と捉えるだろうし、だから勇気を貰ったり、応援したくなる。

福田瞳は寅子に対して「いつも女の味方みたいな顔をしてさぁ。」と悪態をつく。

寅子は「私は女性の味方ではありません。もちろん男性の味方でもない。法律のもと全ての人を平等にみます。そして困っている人に手を差し伸べたい…」

福田瞳「だから私は困っているの。どうしていくら言っても信じて貰えないの。
そうやって恵まれた場所から偉そうに。あんたのような奴が一番腹がたつのよ!」と寅子に襲いかかる。

確かに福田瞳は困っている。原因は100%自分で蒔いた種だし、病気で動けないとか、仕事が無いとか。そういう類の「困った」ではない。

「思い通りにいかない」=「困った」。自分勝手な困っただけど、言葉にすると「困ってる」し、困った人。

「困った人」は様々な捉え方が出来るなぁ。寅子の発言が理想だけの薄っぺらであることが露呈する。

電話一つとっても、寅子は戦前から電話室があるような裕福な家の子。

当たり前に持っている人、持てていない人。
当たり前側を生きてきた寅子は本当に悪気はない。
異なる背景を持つ人に寄り添う為に。
自分の背景を知ることは必要なこと。

有名人になるってこういうことなんだな、と思いました。

今でもスキャンダルが出ると「そんな人だとは思わなかった」の掌返しが起こります。イメージの力、思い込みの力。両方怖い。


寅子に人事異動の内示が出ました。
判事に昇進し、新潟地家裁三条勤務。

そこで猪爪家・佐田家はどうするのか。

「私の家族だから」という理由で優未と二人で新潟に行こうとする寅子。
優未を心配して花江ちゃんの怒りが爆発。
寅子は家での立場を知ることになる。

そして家族会議へ。

子供達が寅子の前で良い子になっていたのは「そのほうが寅ちゃんが喜ぶ」から。

もちろん「怒らせたら怖い」もあるだろうけど、単純に寅子に喜んで欲しかったからじゃないかな。寅子が嫌いな訳ではない。

子供達なりに寂しい優未の機嫌を取る。
カルタ遊びにその様子が出ていましたね。

直治が取ったカルタを渡してしまったり(=優未に勝ちを譲る)、道男がカルタの場所をこっそり教えてあげたり。

「優未は猪爪家のお姫様だから」
優未は嬉しそうにしていたけど、これはこれで不安要素満載でした。

負けて悔しがる。自分の不出来にがっかりする。

子供は親や先生が言っても無駄。自分の中から「勝ちたい・上手くなりたい・良い点を取りたい」が芽生えた時、努力も出来るし、成長があると思う。

大人が出来ることは「悔しい?がっかりしている?」と気持ちを掬い上げることかな。
ただただ持ち上げられて勘違いしたまま、ズルしたまま大人になったら、福田瞳のようにならないかな?

目から鱗だったのは、

直明の「僕に興味がないのが悲しい。皆んなが新潟に行って離れるのが寂しい。皆んなと別れたくない」

小橋の「うらやましい」

男性2人の「悲しい」「羨ましい」が出たこと。

直明は中学から高校卒業まで地方の寄宿舎生活で、戦争が終わってやっと家族と暮らせると思ったら、兄・父を失ってしまった。

「男だから」という理由で大学を諦めて猪爪家の大黒柱になろうとした。
寅子が「私が稼ぐ」宣言をしてくれたので、大学に行くことが出来た。

その頃、母・はるさんは生きていたけど、甘えたい時期に甘えられず。

大学には行けたけど「男なんだからしっかりしなければ」と子供の時期をすっ飛ばして大人として振る舞い続けてきたのだろう。

確か児童心理学の本を読む子だったので、猪爪家の面々を落ち着いて観察していたし、寅子への説明も寅子の気持ちを思いやっていた。

尊属殺の説明も、寅子よりも分かりやすく子供達に伝えていた。

分かりやすく説明が出来る人は、前提としてそのことをしっかり理解している。そして相手の立場(理解能力)に合わせて言葉を選べる。
寅子はそれが出来なかった。

小橋は初登場時から小物臭がプンプンして、やけに女にからみ、「女」をバカにしてきた嫌な奴だった。

一緒に仕事をしていくうちに「あれ、意外といい奴かも」と思われるシーンも増え、今日の「うらやましい」発言。

大学時代、穂高先生も女子部を可愛がっていたし、男性視点では「女子部は贔屓されている」と思ったかもしれない。

この2人を見ていて思ったのは「自分は興味を持たれている」実感が欲しい人達がいる。
ドラマのテーマは透明化された人を映し出すこと。

自分が透明人間、スルーされている。
興味を持たれていないことが人を傷つける。

誰も寅子に100%の母・家庭人を求めていないと思う。
それでも家族なのだから、もう少し興味を持とうよ、ということだろう。

興味を持ったら「え、何それ?もっと聞かせて」とその対象を知ろうとする。
直明も優未も自分をもっと知って欲しかったのだ。

しかし人が興味を示すものはそれぞれだ。
だから難しい。

沢山の苦情が出てきましたね。
「朝から酒臭いのが嫌」はそりゃそうだ。

例えば私に子供がいて、仕事の為に保育園などに預ける場合。

きっと「いい子でね。迷惑かけないようにしてね。先生の言うことをきいてね」と言ってしまうと思う。

迎えにいったら「今日は仲良く過ごせた?」と聞くだろうし、子供は「うん」と嘘をつくかもしれない。

連絡帳の先生の記入欄には「誰々ちゃんと喧嘩しました。牛乳を残しました」と書かれていて嘘がバレる。
そこで親子の会話のチャンスも出来るかもしれない。

花江ちゃんは保育園の先生役をしても良かったのかもしれない。
でも花江ちゃんはお母さん役になったんだよね。

あるいは、お母さん役が花江ちゃん、お父さん役が寅子。
優しさを与える役と目標達成や努力の大切さを教える役。

寅子が仕事中心になった時、役割分担の話が出来たら違ったのかな。

とはいえ、寅子は圧倒的に視野が狭い。
自分の興味のあることしか見ないので、今回のように「足元を見ろ」という時期はいずれ来たのだと思う。

寅子(佐田家)と花江ちゃん(猪爪家)が家族同然で、寅子と花江ちゃんも仲良し。

しかし寝室が別のように「佐田家」「猪爪家」を無意識的に線を引いていた。
節度あることで良いことだが、今回については裏目に出てしまったのが残念。

自分は愛され、守られてきたこと。
その弊害としてあらゆるものの基礎が疎かになったこと。

記者に「他人からみた佐田寅子」を書いて欲しいとお願いが出来るのは凄いと思う。人って格好つけたいですから。

竹中記者に「いいの?」と確認され、寅子は「これをしないと家族との土台を作り直せないから。それに私、絶対にまた土台から積み直してみせます。信頼とか経験とか絆とか。それをまた記事にしたらきっと面白いですよ。」と自信を見せる。

この「絶対にやりますから!」がいかにも寅子らしいし、やっぱり寅子は変わらない。

ということは、今回の事件(主に優未)はそうそう解決出来ないことになり、この先に不安を残すんだよなぁ。


ずっと寅子は恵まれていると思っていた。
「恵まれている」は「愛されている」ということだった。

生まれた時から両親に愛され、友達にも愛されてきた。

”愛される”ことに慣れている、というより愛される世界にしか住んだことがない。

”愛されれない”経験がないから、愛されない人の気持ちも分からないのだ。

「愛されない世界」があることなんて思いもよらないよね。

直明の「悲しい」も、小橋の「寂しい」も。
そして優未の元気の良い「はい」も。
愛されたい人たちが発する言葉。

だから寅子の「困った人に手を差し伸べたい」も「愛の裁判所」も、本当に困った人、愛されたい人にイマイチ響かない。
これは環境のせいで寅子のせいではない。

寅子が愛された理由って何だろう?

寅子の持つ幼児性ではないだろうか。常に寅子を気にかけてくれる人がいて、その人たちに守られ、本当に真っ直ぐに育った子。

相手の身分も関係なく、どストレートに自分の意思を伝えられる素直さ。
守りに入った大人には出来ないこと。

桂場・ライアン・多岐川などの大人から見たら眩しいだろうし、その光を守りたいと思うし、もっと光らせてあげたいとも思うだろう。

新潟への異動も桂場の親心。

そして伊藤沙莉さんだからこそ「愛されキャラ」が成立しているのは間違いない。今作はオーディションではなくご指名で寅子役を演じているそうですね。

表情もクルクル変わるし、役柄的には可愛げがないのに、寅子単体で見ていると可愛い。

最後に家裁メンバーで円陣組んでハグした時、寅子は真ん中にスッポリと入って見えなかった。小柄な伊藤沙莉さんの小動物感がホノボノしました。


家族裁判で各自が不満を伝え、都度都度「ごめんなさい」と頭を下げる寅子。

家族同様に生活した人たちであったとしても。
母である寅子が娘の優未の前で何度も何度も頭を下げるシーンがキツかったです。
そんな姿を子供に見せちゃいけない。

そして優未を新潟に連れて行くかどうか。

道男は「優未に決めさせよう!」と言いますが、花江ちゃんが「そんな決断を優未にさせないで。この決断の責任は寅ちゃんが追うべきよ」と遮る。
それを受けて寅子が「ありがとう」と言う。

このやり取りは良かった。
信頼関係がある、親友でもある2人だからの会話じゃないかな。

結局、寅子は今までの自分を謝り、今後も寂しい思いをさせることを詫びつつ、「一緒に新潟にについてきて下さい。お願いします」と優未に頭を下げる。

優未は「はい」と即答する。

その少し前のシーンで、花江ちゃんには「うん」と答え、寅子には「はい」と答えた。「はい」は良い子を演じている時の返事。

優未が悲しいのは「お母さんは仕事ではキラキラしているけど、優未と一緒の時はキラキラしていない」から。自分が寅子をキラキラさせられないから。

子供は親に笑顔でいて欲しいし、不用意に謝って欲しくない。
欲しいのは「ありがとう」なのだ。

口癖のように「ごめんなさい」を連発する人がいるけど、「ごめんなさい」は「ありがとう」に置き換えることが出来る。

「何について謝っているのか」を本人が理解していない「ごめんなさい」を聞いていると、イライラする。
「別に、悪いことしてないじゃん」と腹がたつ。表面だけの「ごめんなさい」に聞こえてしまうのだ。

小橋が「寂しい」と言った時、多岐川は速攻で小橋を抱きしめた。

今回の最適な対応はこれだと思う。
これが「愛」。

「アイアイ」毎度うるさい多岐川だけど、アイアイ言っているだけあって分かっている。

「愛」は動詞だから行動・アクションで示す。「寂しい」「悲しい」子供が欲しいものは愛着・くっつくこと。肉体的な距離感。

福田瞳も「寂しい」から不貞をしたと言っていた。大人も子供も寂しい時はくっつきたいのだ。…彼女の場合は性格もあると思うけど。

寅子も優未に「今まで良い子にしてくれてありがとう。お母さん、優未が大好きなの。一緒にいたいの」と抱きしめれば良かったでは?

子供でも一人の人間として、大人として向き合うことも大事。

でも、ここは「一緒に来て下さい。お願いします」なんて理性的な大人に向けた言葉使いじゃなくて。

優未はお母さんに甘えたいのだから、めちゃくちゃ子供扱いしてもよかったのでは?言葉は要らないから感情でドーンとぶつかってくれよ。

寅子は良くも悪くも正直だから、「仕事よりも好き」とは言えないだろうし、ハグも出来なかった。それが寅子と優未の距離で、優未のほうが理解している。

でも、東京と新潟と離れてしまったら、寅子の言う通り取り返しがつかなくなる。寅子のわがままと勝手につきあってくれる優未。
是非、新潟で距離を縮めて欲しいな。

一つ気がかりなのは寅子は「子育て」ってものを「母親」ってものを理解しているのかどうか。
それこそ直明に「子供の心理」を教えて貰えば良かったのに。

性別関係なく「仕事が一番」「家族が一番」「趣味が一番」と人それぞれ。何を好きになり、何を一番にしたくなるのか。これはもう理屈でもなければ、努力で変えることもできない。性格、特性だと思う。

イマジナリー優三も言っていたけど「優未の良いお母さんになってもいい」「弁護士として働いてもいい」「別の仕事でもいい」

寅子が一生懸命になれるならどれでもいい。

そして一生懸命になれないものは、他の人に任せたり、頼ったり、降参するのも悪くないと思う。こればかりはしょうがない。

香子ちゃんが「みんなにすっごく会いたい。でもね、崔香淑は捨てたの。娘の為に。その覚悟で娘を産んだの。私が選んだの。ここで、日本で生きていくことを。だから汐見香子でいなきゃ。私、ちゃんと幸せだから。」と話した時、寅子は「え!」という顔をした。

自分以外のものを優先した生き方。子供の為に自分を犠牲にした生き方。その生き方にも幸せがあることに驚いたんだろう。

この時、寅子はヒャンちゃんにハグしたんだよね。寅子はハグが出来る人。でも優未には出来ない…

きっと寅子のことだ。

努力して食事を作り、努力して優未に話しかけ、努力して勉強をみたりするのだろう。

「私の何がいけないのか、何をすればいいのか教えてくれない?」と優未に聞いちゃったりするのかな。

「努力する」=無理をしていることで、子供には伝わってしまう。頑張らないと向き合ってもらえない自分、と感じるだろう。

寅子が仕事を頑張っている姿は嫌いじゃないはずだし。

良し悪しではないけど寅子は自分のやりたいことに燃える人なのだ。

人の気持ちを推しはかる、人の気持ちに寄り添うのは苦手分野。でも最後によねさんには寄り添えた気がする。

仲間には寄り添えるんだけど、実の子供には「理性」で考えてしまう。
ここが血縁の難しいところ。

個人的には寅子と優未は修復出来る時期は過ぎてしまったと思う。


動詞的な愛ならこれからな。
カップの2「Love」

2匹のイルカ(鯉じゃない)が絡まっています。

感情を表す水が流れ続けているので、お互いの感情を交差させ、常に動きながら関わり合う二人。
愛、です。






この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?