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BOOK#27「進化心理学から考えるホモサピエンス 一万年変化しない価値観」

●今回読んだ本

「進化心理学から考えるホモサピエンス 一万年変化しない価値観」―アラン・S・ミラー著(出版社: パンローリング(株)|2019年1月25日発行)

●内容メモ #ネタバレ

>序章 人間の本性を探る
▼この本における原則
この本では以下2点を避ける。
(1)自然主義的誤謬
「~である」→「~であるべきだ」への論理的な飛躍。
言い換えれば、「自然なものは善である」と思い込むこと、「こうなのだから、こうあるべきだ」という論法。
(2)道徳主義的な誤謬
「~であるべきだ」→「~である」に飛躍すること。
「こうあるべきだから、こうなのだ」と言い張ること。「善であるものは自然なものである」と信じてしまう傾向。

「~であるべき」という議論をせず、「~である」に徹する。「あるべき姿」について語らなければ、どちらの誤謬にも陥ることはない。経験的な事実から道徳的な結論を引きだそうとはしないし、道徳律に導かれて観察を行うこともしない。科学を評価する正当な基準は、「論理」と「証拠」の2つだけである。

▼社会科学モデル
社会学者は「標準社会科学モデル」という前提に立って人間の行動を説明する。
(原則1)
人間は生物学の対象ではない。人間の行動だけは例外的に生物学の法則や理論では説明できないとして、人間を別格に扱う。
(原則2)
進化の影響は首~下まで。人間の行動や認知は生物学では説明できないとしながらも、人間の解剖学的な特徴が進化によって形成されたことは認める。
(原則3)
人間の本性は何も書かれていない書字板である。
(原則4)
人間の行動はほぼすべて環境と社会化によって形成される。

▼進化心理学モデル
社会科学モデルと対照的。
(原則1)
人間は動物である。あらゆる生物にあてはまる進化の法則は、人間にもあてはまる。
(原則2)
脳は特別な器官ではない。 進化心理学にとって、脳は手や膵臓と同じように人間の体の一部にすぎない。進化で形成されるのは首の下までではない。頭も含めて、私たちのすべてが進化の産物である。
(原則3)
人間の本性は生まれつきのものだ。 人間は文化的な学習の能力を生まれつき備えているのであり、これは生まれもった性質である。文化と学習もまた、人間が進化によって獲得してきたもの。社会化は、すでに私たちの脳にあるもの(善悪の意識など)を再度植えつけ、補強するにすぎない。
(原則4)
人間の行動は生まれもった人間の本性と環境の産物である。 遺伝子が何もない状況下で働くことはまずあり得ない。遺伝子が働き、行動となってあらわれるのは、多くの場合一定の環境下であって、環境がその働きを導く。同じ遺伝子でも環境が違えば、あらわれ方は違ってくる。

▼直近一万年のヒトの歴史
ヒト科の祖先は、その進化の歴史の99.9%をアフリカのサバンナや地球上の他の場所で、狩猟採集民として過ごしてきた。
農業革命が起き、祖先が農耕・牧畜で食料確保できるようになったのはつい一万年前。今日私たちの周囲にあるもの(都市、国家、住宅、道路、政府、文字の記録、避妊、テレビ、電話、コンピューター等)はほとんど、この一万年間に登場した。にもかかわらず、私たちは「石器時代」の体(脳も含めて)をもっている。それはとりもなおさず、私たちの体は、およそ一万年前の更新世の終わり以降に登場したものには必ずしもうまく適応していないということを意味する。進化の時間的な尺度からすれば、一万年というのは非常に短い期間である。

▼「サバンナ原則」
私たちの脳は、祖先の環境になかったものや状況を理解できず、私たちはそうしたものや状況に必ずしもうまく対処できない。
(1)進化は非常に長い時間をかけて徐々に起きる。
(2)自然淘汰が働くには、安定した変化のない環境が必要である。

一万年間ほどは、進化が追いつけないほど環境が急速に変化。動く標的には、進化は手も足も出ない。それゆえ人間は一万年ほど前からほとんど進化していない
だが、太古の昔から今にいたるまで、他の人間とうまく付き合っていかなければならないのは同じだし、配偶相手を確保しなければならないのも同じ。したがって、社交性とか肉体的な魅力といった資質は、自然淘汰と性淘汰で選ばれつづけてきている。しかし、他の事柄は急速にランダムに変化したので、絶えず動く標的である環境に適応できず、進化を止めてしまった。

>第2章 男と女はなぜこんなに違うのか
>第3章 進化がバービー人形をデザインした

▼史上最多の子だくさん
史上最多の子だくさん女性は69人の子供を産んだ。
この女性は18世紀ロシアの農夫ヒョードル・ワシリエフの妻で、生涯に27回妊娠し、16組の双子、7組の三つ子、4組の四つ子を出産した。しかも69人のうち、2人を除いて全員が大人になるまで生き延びた。
一方、男性の子だくさん記録は、少なくとも1,042人の子をもうけた。少なくとも700人の息子と342人の娘をもうけた(侍従たちが途中で数えるのをやめたので、正確な記録は残っていない)。

▼なぜ女性たちはセクシーなブロンド美女になりたがるのか
進化心理学の答えは「男たちがセクシーなブロンド美女と配偶関係を結びたがるから」。

▼理想の女性美を構成する要素
<1>若さ
理想の女性美の条件。若いとはつまり、繁殖能力が高い。
<2>細いウエスト
女性のウエスト・ヒップ比はごくわずかではあるが月経周期に伴って変化し、排卵期に最も低くなる。
<3>豊満な胸
胸の形状はかなり信頼できるサインになるが、それには加齢によってはっきりと形が変わるほど大きな胸である必要がある。男たちは、垂れていない大きな胸をもっている女を選べば、確実に若い女と配偶関係を結べる。
<4>長い髪
男女を問わず、健康な人の髪はつやつやしている。病弱な人の髪にはつやがない。病気にかかると、あらゆる栄養素を病原体との闘いに動員し、体は真っ先に髪から必要な栄養をとるからだ。ゆえに、美しい長い髪は健康と若さのあかしとなる。
<5>金髪
金髪の特色は、年齢に伴ってはっきりと色合いが変わる。少女時代は明るい金髪でも、大人になると茶色っぽい髪になる。つまり金髪の女性と配偶関係を結びたがる男たちは、無意識のうちにより若い女を求めている。
<6>青い目
一つ、ヒトの瞳孔の色は、虹彩の色にかかわらず暗い茶色である(瞳孔をとりまく虹彩の色が目の色となる)。二つ、ヒトの虹彩の色では、青が最も明るい色である。この二つから、瞳孔のサイズがいちばんわかりやすいのは青い目であることがわかる。つまり、他の条件がすべて同じであれば、青い目の人の感情がいちばん推測しやすいというメリットがある。

▼女性は浮気性である
人間のペニスは、他人の「精子を取り除く道具」だということだ。
進化の歴史を通じて、女性たちが夫以外の男たちとセックスをしてこなかったら、ペニスは今のような形にならなかったし、射精前のピストン運動も不要だっただろう。男性の性器のサイズと形、さらに男性がそれをどう使うかに、女性が進化の歴史を通じて浮気性であったことがはっきりとあらわれている。

※男は精子をばらまくだけでは繁殖に成功できない。生まれた子供が生殖可能年齢まで育たなければ、ばらまいた精子は無駄になる。ちゃんと子供を育ててくれる相手を選ばなければならないのだ。したがって、よき母親となる資質、たとえば賢さや愛情深さもパートナー選びの重要な要件となり、女性の性的魅力の一部をなす。


>第4章 病めるときも貧しきときも?
>第5章 親と子、厄介だがかけがえのない絆
>第6章 男を突き動かす悪魔的な衝動
>第7章 世の中は公正ではなく、政治的に正しくもない

▼一夫多妻は女にとって、一夫一妻は男にとってメリットがある
女にとっては地位や富、名誉のある男性が多数の女性を養ってくれることになり、男にとっては地位や富、名誉の男性に多数の女性を奪われる。つまり、地位や富、名誉を持たない男にとっては争奪戦に負ける結果となる男が増えるのである。

▼女性はなぜダイヤモンドを求めるのか
彼女と彼女の子供にどんな場合でも資源を与える意思があるかどうかの、明確な疑う余地のない指標。つまり、父親タイプと女たらしを見分けるための求愛の貢ぎ物は、高価であって、なおかつ実用的な価値のないものでなければならない。

▼ハンサムな男
ハンサムな男は多数の女と短期的な関係をもてるので、女たらし戦略を選べる。容姿の冴えない男は選択の余地がない。女たちは彼を短期的な相手として選んでくれない。

▼両親が若い時に離婚した女性は早く妊娠する傾向がある
発達心理学では20年近く前から、子供のとき、とくに5歳以前に両親が離婚すると、女の子は早めに初潮を迎える。離婚家庭の女の子は、セックスを経験するのも早く、より多くの相手とセックスをする傾向があり、10代で妊娠する確率が高く、最初の結婚は離婚に終わる確率が高い。

▼なぜ男はケンカで殺人に至るのか
・死刑が有効であるためには、死以上に恐ろしいものはないという前提が必要になる。遺伝子の論理から言えば、死よりも恐ろしいものがある。それは繁殖に完全に失敗することだ。
・犯罪学の分野で「年齢=犯罪曲線」という普遍的な現象が知られる。
・肯定的な誤りをすれば、必要以上にびくびくし、ありもしない捕食者や敵を探すことになる。否定的な誤りをすると、油断して捕食者や敵に襲われたり、殺されかねない。否定的な誤りがもたらす代償のほうが生存確率と繁殖成功度にはるかに深刻なダメージを与える。したがって、ただの無害な物理現象にすぎないような場合でも、何者かの意図が働いていると考えるような心理メカニズムが選択されてきたと推測される。

▼一夫多妻制では自爆テロが多い
・経済的な豊かさ、所得格差、人口密度、民主化レベル、地域の安定度などの要因を差し引いても、一夫多妻の社会では殺人やレイプなど暴力犯罪の発生率が高いことがわかっている。
・地位や富、名誉のもつ男に女性を取られ、繁殖の可能性を絶たれてしまった結果。

▼同性愛が社会的に認められると失うもの
同性愛が社会的に受け入れられ、ゲイの男たちがカミングアウトして堂々と同性のパートナーと暮らすようになった時点で、皮肉にも同性愛の遺伝子は途絶えてしまうかもしれない(男性の同性愛の要因となるゲイ遺伝子はX染色体にあるため)。

▼なぜ高身長の男が戦地から多く戻ってきたのか
背が高い兵士は体が大きいために銃弾が当たる確率は高いものの、心臓や肺に命中しない〝生命に別状のない〟撃たれ方をして、負傷しても生き延びる確率が高かったと考えられる。

●その他

▽なぜ読みたいと思ったのか
数カ月前にヒトのY染色体が短くなっているという話を聞いて、生物の不思議に興味がわきつつあり、そんなときに進化心理学という分野があると知ったので興味が湧いたため。

▽興味を持ったきっかけ
進化心理学って何ぞや?の疑問がきっかけ。

▽この本を読むことの意義
男と女の本能的な部分と今の生活との結びつきを知りたい

▽どんな本の内容だと思って手に取ったのか
男と女の原始レベルからの脳の発達の仕組みが知れる

▽実際読んでみてどんな本だったのか
めちゃくちゃ面白かった。
美しい女性とされる条件には「若さ」がキーになっているという話はとても腑に落ちて興味深い。そして「若さ」を求める理由は、繁殖目的。実に原始的。笑
あと、ゲイ遺伝子がX染色体にあるので、同性愛が社会的に認められて、仕方なく男女で生活を送る必要が失われることで、その遺伝子が受け継がれなくなっていく可能性があるという話もめちゃくちゃ面白い。しかも、その遺伝子が男性と女性の同性愛で異なっていて、女性は解明されていないというのも驚き。
いかに遺伝子を残すか、細胞たちはこんなに頑張っているのね。
でも、現代のスピードについていけなくてバグってばかり。可哀相に。同時に、わたしも相当バグってるんだなーと思った。残念過ぎて、おもしろい。
今後、女性のタイプを語る男性見ると笑えてきそう。

▽どのように始まり、どのように終わったのか
最初にこの本の論じ方の定義、事例を導いて説明、

▽タイトルをつけ直す(要約)とすると?
進化できない現代人

▽知らなかった単語(用語)について
・ステレオタイプ…統計をもとに、観察から導きだした一般論。ゆえに事実であることが多い。が、個別のケースには必ずしもあてはまらない。

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