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文学少女の成れの果て

前書き
今回は、私の読書遍歴の話である。

この間、もの書き100問100答をした際に、ハッシュタグを追って、他の方の回答も見たが、皆さん、沢山読書をなさっていて、やっぱりもの書きする人って、総じて読書家なんだなって思った。

私も一応、もの書きの端くれとして、皆さんほどではないが、読書経験はある。過去を遡って、読んできた本をエピソードも交えて振り返ってみようと思う。本の感想よりも読むに至ったエピソードがメインなのでご了承下さい。


小学生

小学生の頃が1番読書していた。毎日放課後になると、図書室に行って本を借りては家で読むの繰り返しだった。図書委員もしていた。しかし、実際に読んだ本のタイトルとなると、もうウン10年前の事、なかなか思い出せない。

当時は携帯すらなく、カメラで写真を撮るのは旅行の時だけだった。今みたいに、気ままにいつでも、何処でも、何でも写真に残すという事はなかった。もし、カメラマン以外で日常の街中風景や食事の様子等を写真撮っていたら、確実に変人扱いである。だから、当時読んだ本なんて、写真に残っている訳がない。

僅かな記憶を辿ってみると、世界少女名作全集的な物を片っ端から読んだ気がするが、検索をかけてもピンと来ない。もう既に廃版になっているとは思う。

その中で、はっきりと読んだと確信出来るのは、唯一、佐藤さとるさんの「コロボックル物語」だけ(内容は思い出せず)

何故、内容が思い出せないのに、このシリーズを読んだと確信出来るのか。理由は、初恋の佐藤君が読んでいたから。自分と同じ苗字の作家さんの作品を読むんだーと、ちょっとおかしく思いながら、私も真似をして読んでみた。

別にこの作品を読んだからといって、彼との距離が明確に近付いた訳でもないが、何となく同じ本を読むって事で、距離が近付いた気はしていた。

彼は読書家だったが、それ以上に動物が好きだったので図書委員ではなく、飼育委員だった。そんな事まで芋づる式に思い出してしまった。初恋は実る事なく儚く消えた。

中学生

中学生になり、また図書委員になったが、その時に同じ図書委員の男子を好きになった。懲りずにその子が読んでいた本を真似して読んでいた。

今思うと、どれだけ好きな男子に影響されやすいのかと。子供の頃にしていた読書は、不純なものだったのかと我ながら呆れる。読書は純粋に好きだったはずだが、その思いすら怪しくなってきた。好きな男子が読んでいたから本を読むのが好きになったのか、本を読むのが好きだから、読書家の男子に惹かれたのか。今では、さっぱり分からない。

前置きが長くなったが、その好きな男子が読んでいたのは、星新一さんのショートショート。学校の図書室や市の図書館から借りて、片っ端から読んだ。見事に私もハマった。

多分、私の堅苦しい淡々とした文体とか星新一さんの影響が大きい。そして、この恋も実る事なく終わる。

高校生

相変わらず、星新一さんの本を読みまくっていた。電車通学なので、ショートショートは1話1話が短いので、キリが付きやすくてちょうど良い。

高校3年生の時に、図書委員の副委員長になった(確か、司書の先生に頼まれた) そして、近隣にある高校の図書委員を招いた読書交流会の司会を任される羽目になってしまった。その時のお題の本は、当時流行っていた吉本ばななさんの「TUGUMI(つぐみ)」

前記したが、当時は相変わらず星新一さんの淡々としたショートショートばかり読んでいたので、こういう登場人物の感情に深く切り込む物語は苦手で読まなかった。

しかし、読書会の司会として、みんなの意見を取り纏めなくてはならなかったので、苦手なんで未読ですーって訳にはいかなかったので、嫌だけど読んだ。司会は重圧で嫌だったが、意見を言う方じゃなくて良かったと思った。

読んでみたら、案の定、苦手だった。とにかく、タイトルにもなっているつぐみの性格が悪過ぎて読みながらイラついた。こういう不快な気持ちは、性質上、登場人物の描写が気薄な星新一さんのショートショートなら味わわなくて済む。

読書会当日、深く読み込んでいる他の参加者達の意見を聞いて、つぐみムカつく!という感想しか持てなかった自分を心から恥じた。

そんな中、最後に司会からまとめの言葉を言わなければいけなかった。もう情けない気持ちが一杯で、「読んでみて、つぐみに腹が立ってイライラしたけれど、皆さんの意見を聞いて、そういう読み方もあるんだなと勉強になりました」と言うのが精一杯だった。不甲斐ない司会者だった。

余談だが、その時に参加していた近隣校の図書委員長をほんのり好きになった。想いは内に秘めて、そのまま泡となって自然に消えた。

成人後

相変わらず星新一さんをメインに読んでいたが、いい加減、違うジャンルの本も読もうと思った。当時ファンタジーノベルの案内書みたいな本があって、それで見付けて読んだのがこちら。

「銀河英雄伝説」でお馴染みの田中芳樹さん作「創竜伝」 1987年に創刊して、2020年に完結という、読者の忍耐力を試すが如くの待たせっぷり。結局、私は待ち飽きた挙句、せっかく完結したのに未だに14、15巻を読んでいない。

田中芳樹さんの「銀河英雄伝説」や、「アルスラーン戦記」は難しそうなので読んでいない。その代わりにライトなのは、ほぼ読んだ。

その他、初めて社会人になった頃、氷室冴子さんにハマっていた。

なぎさボーイといえば、ヒロイン多恵子の当て馬である槙修子が、性格悪過ぎて大嫌いだった。つぐみ以来の感情である。

多恵子と2人で歩いている時に、なぎさについて挑発する事を散々言って多恵子を落ち込ませたのに、様子がおかしい多恵子を心配したなぎさには、いい子ぶる。「私は多恵子さんに何も言っていない」としれっと嘘をつく女である。なぎさを多恵子から奪う為には、何でもする女。その性悪女である槙修子を後になぎさの親友である北里が好きになる胸糞展開があった。

私は架空の人物である槙修子に対して、本気で怒っていた。つぐみ以上の嫌悪感だった。

しかし、これは相変わらず、浅い読み方しか出来ないという事で。結局、つぐみにムカついていた高校生の頃から全く成長していない。

そういえば、武者小路実篤の「友情」を読んだ時も、夏目漱石の「こころ」を読んだ時も登場人物に対して不快に感じた。どうしてもそういう読み方しか出来ない稚拙な自分が情けない。

登場人物達の表向きの行動や性格ではなく、葛藤する心理を深堀りして追っていくのが、読書の醍醐味なのに。ショートショートをあまりにも長い年月読み過ぎた弊害かもしれない(ショートショートは何も悪くない)

20代の頃、好きになった人がやっぱり読書家で、山田詠美さんの本が好きだと言っていたので、開いてみたが、彼はこういうのが好きなんだと衝撃を受けた。完全な趣味の問題だが、絶対に相容れない。その人への想いも実らなかった。私の読書遍歴は失恋とセットだ。

最後に

最近はというと、ゲームをしたり、動画ばかり観ていて、すっかり読書もご無沙汰である。小学生の頃、足繁く図書室に通っていたあの文学少女はどこにいったのだろう。

この間、久々に氷室冴子さんの「シンデレラミステリー」を本棚の奥から引っ張り出して読み返してみた。懐かしくて泣いた。ちょうど読書の秋だし、新しい本でも読んでみようかと思った。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


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