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スルメクラス


相変わらずの、このクラス。



学生たちは大抵
日本語能力試験の対策なら
文法の短文作りが好きです。


習った文法を使って
実際に文を作るのは
創作意欲が湧くのでしょうか。



あまり聞いていなかった子も
目を上げて、考えます。



例えば今日の午前のクラスで。


「学校が終わり次第?どうしますか?」

「はい先生‼︎教科書を捨てます‼︎」



ここでぶわっとクラス全体で笑って、
私がツッコミを入れます。



「○○さんは、悪い学生です!
 成績は、Cです!」


それで、また笑う。



問題の答え合わせは


「A,B,Cどれですか?」


「A‼︎」

「C‼︎」

「D‼︎‼︎


Dはないです!はいだめ〜‼︎」


こんな感じでまた笑う。


これが普通です。

語学学習は、面白くないとね。



しかしながら、
読解問題をやるときは
うえ〜💦という顔をします。



何度も巡回をして
やるように促さないと、
やる気が出ない学生が
多いです。




ところが問題の
こちらのクラス。


そう、あの
大阪のおばちゃんみたいな
リアルライオンのTシャツを着た
王子様アンソニーくん
や、

異常に長すぎるケーキや
巨大な花束を持ってくる大富豪くん
や、

1人二役を授業中にこっそりやる
百面相くん
がいるクラスです。


最近ではこっそり
スルメクラスと命名しました。



噛めば噛むほど味があって
面白すぎます。


短文作成の授業で。


「彼は外国に行ったきり?」


......。(無反応)



「外国に行きました。行ったきり?
 行ってからずっと?」


......。(無反応)



「外国に行ったんですよ〜。
 誰か聞いていますか〜?お〜い
 行ったきり〜⁉︎」


ここでようやく一人が
うつろな目で...

「死んだ」



「......は?死んだ?」

う、うん。
いいけどね。
いいけどさぁ。
衝撃的な文だなぁ。


もちろん、周りは無反応。
ぴくりともしません。






ことばが難しすぎるのかな、
と思いますか?



いえいえ、
机をまわるとね、
ノートにびっしり書いてあるんです。



一人ひとりを指名すれば
いいのですが、
自発性や積極性を
育てたいので、
指名しないであえて
皆に聞くやり方も
必ず入れています。



ここはビジネスの学科ですから。
消極的じゃダメよね。



問題をやらせて
学生を見てまわります。



大抵の学生が
真面目にやっています。



「じゃあ、答え合わせしましょう。
 1番!答えは?A?B?C?」


......。(無反応)



くぅ〜っ、
さっき出来てたんだから
答えてくれよ〜
‼︎



「さっき出来ていましたよね〜?
 授業は〜⁉︎積極的にお願いします〜‼︎
 Aですかぁ?Bですかぁ?」


......。


私だけが熱くなっていて
誰もついて来ない、の図。

「A〜B〜C〜D〜♪
 E〜F〜G〜♪」



大声で歌ってみました。



唯一、フィリピン人の
イケメン君だけが
ぶはっ!と笑った後、
周りが気持ち悪いほど静かなので
所在なさげにしています。


他はもちろん、無反応。


この鉄仮面クラスめ〜!



「じゃあ読解をやりましょう」



読解なんてこんなに
消極的なクラスだと
誰もやらないかな、
 



と思いきや...



うわぉ〜ぅ‼︎

みんなやってる‼︎


猛烈に頑張ってる‼︎




なんだなんだ、このクラスは!
珍しすぎる!



熱心度、この学校で過去最高か???



あぁ、

読書が好きな
too shy boys&girlsの
クラスなのね.....。


毎回不思議なのですが、
同じクラスに同じ個性が
集まることって
あるんです。

国籍はバラバラなのにね。


ちなみに「死んだ」発言の彼。


何やら大きいコインを
指でくるくる回しているので
見に行くと、


「これはドイツのコインです。
 とても古いです。
 1909年に出来ました。
 日本円だと4000円くらいです。
 でも安いです。
 このコインは
 世界中にたくさんあって...」


と、語り始めて
止まらなくなりました。

なんだ、ただのコインマニアか...。


普通、普通。

もはや普通の基準が
分からなくなってきました。

みんな普通で
みんな普通じゃない、と
思うようにしよう。

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