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邪道でもいい。授業でやろう。

今年は教え方を変えています。



だから、準備と後処理に
時間がかかります。

90分授業を2コマも削ったのに
昨年度より手間をかけている
感じです。

専門学校の学生の日本語能力は
中級以上なので、
一般的にそれほど手をかけません。


例えば初級の学生にだったら
語彙を導入するにも
絵カードを見せて、
何度もしつこく復習させます。

教えた文型も
何度も何度も形を変えて触れさせて、
そうやって(基本的に)全員
上のレベルまで連れて行きます。



だけど、中級以上は
そんなことはさせません。


文型の数も、語彙も増えるので
量をこなさなくてはいけません。


語彙は全く授業で触れない教師が
少なくないかもしれません。

文型も、
その日教えたものは
次の日に引きずらない、つまり
復習しない教師も多いです。


もっと言えば専門学校なので
教えた単元のテストを
しない場合でさえ普通です。


日本語科目はあくまで
専門科目の補助なので。


だけど私、
気づきました。


そうやってついていける学生は、
既に教育カリキュラムが
義務教育の頃から確立している
中国人または先進国の学生だけ
なんじゃないか、って。


いやいや。

英語能力が中級以上に
なれなかった日本人も
たくさんいますよね?

中級になってから
英語の授業が楽しくなくなった
と思っている人って
いるんじゃない?


ましてや言い方が悪いですが
発展途上国の、
日本でのアルバイトが必須な学生に


「語彙は授業で教えませんから
 自分で家で調べて来てください」

と言ったって、

「習った文型は復習してください」

と発破をかけたって、

1回や2回やってきたとしても
毎回は出来ません。


母国で宿題をこなす習慣が
あるのならまだしも、
勉強は学校でするもの、と思い込み、
幼少期より長い間
そうやって生きて来た学生に

急に

「やれ」

と言ったって、
たとえ優秀な学生だって
ついて来られません。


授業では習ったことを
納得したとします。



だけどその後、
定着しないで
結局のところ忘れて終わりです。


2,3人ついて来たとしても、
そんな少数で、じゃあ教師は
それでいいのか?って思います。


中級からの教え方は
そういうものだ、って
養成講座で習ったから、
偉い日本語教師が言ってるから、

それを鵜呑みにして
中国人(または先進国の学生)以外は
おいていっても
自分の教え方に疑問も持たないで
やり続けていいのか?って。


今日もたくさん寝ちゃった。
アルバイトが忙しいから
仕方ないよね。


で、終わらせていいのか?って。


いつだったかな。

日本語の授業で
量をたくさん入れたんです。
日本語能力試験の受験に
じゅうぶんな項目を。


オンラインで語彙は
毎回宿題をやらせて
出していない学生には
その都度注意しました。

提出率はとても良かったです。


だけど、あまり合格させて
あげられませんでした。


昨年度、
教えた項目を
次の日に復習してみたら、
あんなに前回の授業で理解していたのに
もう忘れている。


いくら若い人だって
人間の忘却能力は
凄まじいんだ、って痛感しました。


だから、
毎回復習を入れました。


テストも選択式じゃなくて
必ず単作文を入れて、
「分かる」日本語じゃなくて
「使える」日本語にするように
少なくともそういう種は蒔きました。


これをやると採点が大変で
自分の首を絞めるのですが。


語彙もプリントにして、書かせて、
声に出して読ませて、
何でもいいから私の中で
知っている

「脳に定着するための知識」を

総動員して
出来ることをやらせました。



その結果、
授業で取り上げた項目は
量としては多くなかったです。


これじゃ足りないと思った。


だけど、昨年度は快挙でした。
1年生にして
びっくりするほどたくさんの学生が
7月も12月も合格しました。


少なくとも授業中に
眠ってしまう学生は
あまりいませんでした。


教え方は学生の国籍によって
変えなければなりませんが、
同じ国籍でも本当は
学生によって合う合わないがあります。


だけど。
忙しい時代だから。
それはどこの学生だって同じだから。


授業内でやろう。
だから使えるようになって。


種を蒔くから。
準備も後処理も大変になるけど
私も頑張るから。


邪道なのは知っています。


他の日本語教師に
悪く言われるかもしれません。

経験も考えも浅いって
偉い先生にお小言を
言われても仕方ないと思います。


でも、今までの
王道なやり方では
少なくとも今の学生には合わないと
自分で判断したんです。


語彙はプリントを作って導入するから。
毎回チェックして返却した後で
復習も入れるから。


授業で復習のとき
声を出して答えて。


初級でやったような
単純な練習でも
声を出せばだんだん
楽しくなるでしょう?
話しやすくなるでしょう?

それをステップに
もっと長い会話に繋げていって。


話して、笑って、起きていて。


テストも
作るのも採点するのも大変でも
毎回作成するし、
私なりに丁寧に採点して
フィードバックするから。

良かった単作文の回答は
黒板に書いてね。
あなた達が別の学生を教えよう。
私が教えるよりずっと
動きがあって楽しいでしょう?


発表もしようね。

読解を入れない先生もいるけど
特にスピーチや会話の読解は
前に出て発表しよう。


48人の前で発表。
これは、とても良い機会だ。

座っているだけじゃなくて
前に出て、動いて、教えて。


いろいろやろうね。
初級みたいでも
より高度な能力を使って
会話も、読解も、語彙も、文法も。


電車の中で勉強すると
捗るよ、とか


家の中に語彙をはっておくと
自然に覚えるよ、特にトイレ、とか


聴解問題はYouTubeにあるから
BGMみたいに流しておけば
耳が慣れるよ、とか


そんな話はしたけれど、


家で復習しろってガミガミと
偉そうに私からは言わないから
授業内でやろう。

知っていますよ。


言わなくても楽しいと思えば
あなた達は家でも自発的に
勉強するようになるから。


ほら、もう
私に提出するプリントを、
私が黒板に書いた内容を、
何人もの学生が
写真に撮っている。


知ってる。

どこかでそれを見て
復習しているってことを。


だって復習のときに
大きな声でスラスラと
答えているもの。

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