屋上同好会とエトセトラ(1)

1.「…あのさ、海乃。」

「何スか、先輩。」

「いやそもそもなんだけど、俺らって何なんだ?」

大江が変わらず陰鬱なオーラを醸し出しながら、自分より二回りは大きい海乃に訊いた。

「何って、屋上同好会っスよ。いつも通り。」

「いや、確かにいつも通りなんだけども。そのいつも通り、ってところが謎なんだよなー。」

「え、なんででス。」

「そらお前…」
そう言って、ぐるーっと屋上全体と、その上に広がる真っ青な空を眺める。
そうして、真顔で、キッパリと言い放った。

「何もやることないじゃん。」

「うーん…」
そう言われた海乃も、同じ様に周りを見渡す。
そうして、どこぞの探偵の様に顎に指を添えながら、キッパリと言い放った。

「何もやることありませんね。」

「いや、放課後にこう、あぶれた奴らが集まる〜ってのは、まだわかる。とはいえだ。こう毎日毎日放課後になってはボーっとしてるだけってのは、なんというか、ただ時間を無駄にしているだけではないか?」

「そうっスね。」
海乃がなぜだかキラキラしたかの様な目で返す。

「何をそんな少年の様な目で…」

「失礼っスね。私はれっきとした少女っスよ。」

「ま、そう言うことにしておいてやろう。」

「なんスかそれは!」

「それは置いといてだ。なんかこう、やる事ないのか?屋上同好会…っつーか、他の部活動連中みたいによ。」
そう言う大江の目の先には、"ファイオーッ!"と声を荒げながら必死で白球を投げ込む集団が居た。もっとも、その白球は打席に届いてない上に、打席の奴もそれに対してフルスイングで応えているのだが。

「うーん…ま、そもそも屋上同好会ウチって、部活動として認められてませんし。」

「そりゃそうだろうな。"毎日放課後に屋上に集まって、ボーッとしたりする部なんです"なんて申請、通るわけないだろうな。」

「…ので、私たちは私たちで、テキトーにやるのが良いかと思われまス。」
と、海乃がテキトーに言う。

「お前……はぁ…。そもそも、なんで屋上なんかに来るんだろうな、俺たち。」

「うーん、それはまぁ、ホラ。日陰者達は日陰に集まる運命にあるんスよ。」

「いや思いっきり太陽の下に出てきてるけど。」

「そんな細かい事気にしないでくださいっス。小姑って呼びまスよ。」

「フツーに嫌だ…」

大江がボーっとする。
同じように、海乃もボーっとする。
平和な時間が流れていく。何事も起こらない、平和な時間が…。

「……いややっぱコレ時間無駄にしてるだけだろ…」

次(2)
https://note.com/mioao551888/n/n85eac0be43fc

前(0)
https://note.com/mioao551888/n/nf5bb00d1eda8


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?