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仕事の極意・トホホ編

 これは、私が '87年頃に、大阪のとあるゲーム制作会社に勤めていた時の話である。
 この会社については何度か書いているが、大手ゲームメーカーの下請けをしていた。
 赤と白のファミコン時代、カセット式のソフトである。


👆️コレな。任天堂は神。



 変わったところでは、アーケードゲーム(ゲーセンに置く筐体型のゲーム)の音楽のみ担当するというのがあった。
 一度、他の人のソフトの開発スケジュールが合わなくて、私がそれを担当した事があったのだが、それが何というか、仕事の中の仕事っていうんですかね、ショッパさ100%の案件でした。


 外注で受けた仕事で、ゲームの中身はうちとは別の会社が制作していて、音関係だけ私がやったんですが、麻雀ゲームなんです。
 BGMは、中華っぽいのを適当に作りました。
ゲーセンって、めちゃくちゃうるさいじゃないですか。ハッキリ言って音楽なんて誰も聞いてないし、なんか鳴ってりゃいいんです。
 効果音も作らないとダメで、麻雀牌をツモる音、捨てる音。それだって、別に (以下略。) 
 「ポン」とか「ロン」とかの音声は向こうの会社が用意してくれてましたね。いわゆるサンプリング音源です。
 それなら効果音も音楽もサンプリングでやりゃいいのに、とは思いましたが、データ容量の都合があったみたいです。(サンプリング音はデータ容量がデカイ)

 
 効果音作るのは、結構大変でした。なんというか、全くの手探りなんです。
 向こうの会社が用意した簡単な音源製作プログラムがあったものの、ハッキリ言って、カス(笑)。なんか数字をテキトーにぶちこんで、機器に転送して、ブーとかザーとか鳴ったらソコから、勘で(笑)、数字をいじって、何度も繰り返してイメージした音に近付けていくという。
 大体、麻雀牌をツモる音って何。捨てる音って。台に置く音か?いや、まあ、多分ですけど、マンガでいうイメージ音ですよね…


こんな音、作れない(泣)

 
 そして、そんなモノでは済まされない、この仕事の天王山的案件が私を待っていた。
 ご存知の方もいらっしゃるかとは思うが、今はどうか知りませんが、昭和時代の麻雀テレビゲームというものは、プレイヤーが
麻雀に勝つと対戦相手の女の子が脱ぐ
という、すごい設定が標準でした。アホ…💨


 それで、先方が私に「女の子のスカートが落ちる音」を作れ、と言ってきたワケです。
 は。そんなの、聞こえなくても別に (以下略)。つーか、ソレ必要スか?
 今ならセクハラだなんだと文句も言えましょうが、悲しいかな、昭和。
 「仕事」はすべてを凌駕する(涙)。
あちらの担当者が言うには、パサッ、みたいな感じの音が欲しいと。
 ハイハイ、パサッ、ね。適当に作って持っていった。
 担当者 : 「ん~、ナンか違うんだよねェ~」
 私 : 「……」
 そこにこだわります?ゲーセンの騒音の中で聞こえるのかな?大体、プレイヤーの人だって、カワイイ女の子の画面に釘付けで、音なんて聞いてないと思いますケド…。
 思ったけど言わないよ。オトナだもん!
で、ついでに「女の子が服を脱ぐ時の音」も、追加で受注して、社に戻ってまたしこしこ作り直して…… 番茶も出花の24歳の乙女(笑)の仕事か、コレが。😡


 私は社会を呪った…… な~んていうのはウソで、自分の会社の社長に「ひどいですぅ~💢」とか訴えて、残業代は少し上乗せしてもらい、ついでにご飯もおごってもらって、すねたふりして、また適当に片付けて。
 そうこうするうちに納期が来れば、それでオッケーなんである。はーやれやれ。


駕籠に乗る人 かつぐ人 
そのまたワラジを作る人

と、いうコトバがありますが、
世の中は色々な人がいて、
成り立っています。
キミがいて、ボクがいる。
涙をふいて、さあ、

♪笑ってよ~ キミの~ため~に~♪
♪笑ってよ~ ボクの~ため~に~♪
   (道化師のソネット / さだまさし)

 本当に、仕事って、ショッパければショッパいほど、仕事らしいなあ、と思います。
 なんだか、本質的な感じがします。
 涼しい顔してオフィスに座っていても、その陰に必ず存在する汚れ仕事を引き受けてくれている誰かの涙を、決して忘れたくはないものです。


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