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香りに関するエッセイ・小説 3選

あけましておめでとうございます。
昨年5月にスタートした「香りを巡る旅」を本年もよろしくお願いします。

去年は「香り」に関する本を歴史や科学的なものを含め30冊ほどよみましたが、その中で出会った本を三冊ご紹介します。
読みものとして面白く、かつ香りの世界を素敵に描いているエッセイ、小説をセレクトしました。

「調香師の手帖 香りの世界をさぐる」中村祥二  (エッセイ)

一番好きな本。そしてとても役立つ本。
資生堂でチーフ・パフューマーを務めた著者の「香り」に関するエッセイ集。もとは新聞の科学欄に連載されていたものなので、専門的でありながらとても分かりやすい。行間から著者の誠実で情感ある人柄がうかがえる。

個人的には中国三美女の一人で、体から芳しい香りを放っていたという香妃(清代)ゆかりの植物「沙棗」を求めて日本の調査団が中国へ渡り、得られた香りをもとに資生堂の香水「SASO」が誕生した、というエピソードに感動した。



「凍りついた香り」小川洋子
  (小説)

自死した調香師の恋人が残した足跡を追って、主人公はチェコ・プラハへ。
小川洋子さんらしい、寂しげな静けさ、少し風変わりな人々が作り出す世界観と、「調香」の繊細さが心地よくまざりあった作品。
彼の死後に知らなかった一面や過去が少しずつ明らかになり、ヒリヒリするような緊張感が「凍りついた」冷静な筆致で描かれている。


「透明な夜の香り」千早茜  (小説)

社会生活に心が折れてしまった主人公は、ひょんなことから人の嘘を匂いで嗅ぎ分けるほどの鋭い嗅覚を持つ、天才的な調香師のもとで働き始める。
仕事場である山の上の洋館や花々が咲き乱れる庭園、美味しそうな料理など五感を刺激する、日本だけど外国にいるような雰囲気の作品。
小川作品が「香り」を感覚的にとらえていたのに対し、こちらはもう少しお仕事小説的。「この匂いの物質は〇〇だ」というような、調香師っぽいセリフや描写がちりばめられている。

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香りに興味がある方、そうでない方も楽しく読めそうなものを選んだので、気に入っていただけるとうれしいです。
今回の写真(画像)は私のインスタからの引用です。
香りに関する本の紹介のほか、取材旅行や執筆のインスピレーションを中心にアップしていますので、よければ覗いてみてくださいね^^ 
(画像をクリックすると、インスタのページに移動します)


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