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読書漫筆

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#日記

読"食"漫筆2:2021年の読書記録

2021年を振り返って、なんとなく、食にまつわる本や漫画に縁があったような気がしている。

堀江敏幸さんと角田光代さんの『私的読食録』を読んで、そこで紹介されていた吉田篤弘さんの『それからはスープのことばかり考えて暮らした』を読んだというのは以前書いたけれど、それ以来、何気なく手にとった本が食にまつわるものだったり、主題としてではなくても食べること・食べ物・料理についての話が出てきたりしていた。

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画家の魂:原田マハ『たゆたえども沈まず』

 国立国際美術館で開催されている「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」のいちばん最後の展示室で、その花と対面した。

 力強い筆致で重ねられた眩いばかりの黄色。背景にすっと引かれた青い線がその花をいっそう鮮やかに見せている気がする。ほとんど黄色一色の絵を見て、燃えているみたいだ、と思ったのはたぶんこれが初めてだ。
 フィンセント・ファン・ゴッホの「ひまわり」だった。

 美術や世界史の教科書でも何

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読書漫筆2:辻村深月『凍りのくじら』

【注意:本の内容に関する記述を含みます】

 ドラえもんの道具で何がほしいか、と聞かれたら、自分ならなんて答えるだろう。
 先月までならタイムマシンと答えたかもしれないが、金曜ロードショーの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズを観てそれはやめにした。未来のことを知ったところで、これから先の言動ひとつで、どこでどう変わるかわからないし、うっかり過去を変えてしまうのも困る。
 だとしたら、もしも

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読書漫筆

 最近読んだ本についての備忘録。

1 原田マハ『ジヴェルニーの食卓』『楽園のカンヴァス』

 『ジヴェルニーの食卓』は、マティスとピカソ。ドガ、セザンヌ、モネ。彼らの日常を、その隣で過ごす人々の目から描く作品。
 巨匠、天才と呼ばれるような画家たちの姿を見つめる人々の視線が決して卑屈でなく、画家とその作品への愛情や敬意、憧れに満ちたものであることによって、登場する画家たちの人物像がより鮮やかにい

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