見出し画像

半分ずつのドーナツ


夏の初めに、恋人ができた。

わたしを好きだって言ってくれる人。
わたしが好きな人、ではなかった。

友達として、一緒にいたいかなぁ。
まだ付き合うには早くないかなぁ。

色々考えたけど、でもひとつ確かなことがあった。

最初に会った時から、この人は大切にしたい人だなって感じていたこと。

どうして私と付き合いたいって思ってくれたの、という問いかけにきちんと答えてくれる。その事実と、内容にちょっと心動かされた。

付き合ってみるか、ってな感じで始まった彼との日々は、穏やかで優しくて楽しい。

いまは彼のことがとても好きだ。
彼と一緒にいる私も好き。

彼の前にいると、思ったことを丁寧に伝えて行動できる、快活な、晴れ女の私になれる。

そこも私の一部だから、無理はしていない。
この私はこれまでの失敗とか学びで、押し込められてしまっていたような気がする。

その私を思い出させてくれたんだ。


先日、彼に生理1日目であることを伝えると、私の家に来る途中に色んなものを買ってきてくれた。

私も毎回飲んでいるプルーンの飲むヨーグルトに加えて、優しい味のカップスープとか。

私が自ら選ばない、私の体を労るもの。私よりも私を大切にしようとしてくれることが感じられて、それが嬉しかった。

むくむよね、と言ってお風呂上がりにマッサージもしてくれた。

横になると、腰をさすってくれる。
薬を飲んでお腹の痛みがひいてからも、お腹に手を置いてくれていた。
ちなみにこの、痛みがひいてきたころの感覚が好きだ。少しだるくて、安心感とぬくもりを感じながら眠りにつく。



朝起きてカーテンを開けて、彼の寝顔を眺める。
少し開けた窓から、ほんのりと金木犀の香りが漂ってきた。

前日母がくれた種類の違うドーナツふたつを、半分ずつ分けて食べる朝。
薄紫色のカーネーションの水を換えて、今日も可愛いね、と呟く。


これが幸せだなぁ、って思う。


してくれたことで愛を測るなんて、と思うけれど、

でも何かをすることで私に伝えようとしてくれる彼の気持ちが嬉しい。

思えば、なにかをすること、与えることで大切に思っている気持ちが伝わるのなら、と私も今まで家族や友人と接してきたな。


なんだかいつも、あなたに頼ったり甘えてばかりな気がするな。
ううん、もっと頼ってくれていいんだよ、俺も君に頼るからさ。笑

そう言ってくれる人を守れるよう、私は強くなりたいって思う秋の初め。


2021.10.5

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?