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『愛の不時着』にハマる理由と、ドラマからみる理想の男性像

今まで韓流ドラマはほとんど観たことがなかった。
長きにわたりNetflix人気TOP10入りの「愛の不時着」もいかにもメロドラマなタイトルで敬遠していた。

でも巷であまりに評判なので興味本位で観始めたら最後、どっぷりと「愛の不時着の世界」にハマってしまった。

そして鑑賞し終えた今、胸のざわつきが止まらない。「愛の不時着」のメイキング映像やハイライトシーンのダイジェストまで、Youtubeでほとんど見尽くしてしまう典型的ロス症状だ。

ともあれ、この熱が冷めないと他のことが手につないのでこれは文字(文章)に落として気持ちの整理をするしかない。
というわけで、ドラマに引き込まれた理由を考えながら書いてみたい。

1. 主役二人のキャスティングが抜群すぎる

まずはあらすじを完結に。

パラグライダーで飛行中に竜巻に巻き込まれ、北朝鮮に不時着した韓国財閥令嬢で会社経営者でもあるユン・セリ(ソン・イェジン)と、北朝鮮の将校リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)の38度線を超えたラブストーリー

韓流に詳しくないので、ヒョンビンもソン・イェジンもこのドラマで初めて知った。なので彼らが他のドラマで演じた役柄やイメージなどは知らず、先入観なく二人を観ることができた。

まず、ヒョンビンは文句なしにかっこいい。
立ち姿だけを見ているだけで惚れ惚れする。
端正な顔立ちに抜群のスタイル。
極め付けは耳に優しいソフトな落ち着いた声。

ヒョンビンが冷静沈着な軍人でありながら純粋で心優しい男「リ・ジョンヒョク」を演じたからこそのヒットなのは間違いない。

相手役のソン・イェジェンも美しさでは引けを取らない。
財閥令嬢で有能な経営者でもあるユン・セリの強さと弱さを余すことなく表現している。

ソン・イェジェンの魅力は、その美しさはもちろんだが人としての暖かさと親しみやすさを感じさせるところだ。それがイケメン主人公の相手役として、女性視聴者に嫉妬心を抱かせずに感情移入させるのに成功している。

つまりこの二人だからこそ、視聴者は深くのめり込めむ。
熱愛報道(本人たちは否定)などもあるようだがあまりにお似合いな二人ゆえ、視聴者の願望の反映があるのかもしれない。


2. 南北分断という現実があるから成立する恋愛ドラマ

少なくとも日本において、韓国と北朝鮮の関係に匹敵する社会的制約のある設定をドラマに組み込むのは難しい。
もちろんフィクションだから設定は自由だが、やってみたところで現実味がなく嘘くさくなるのが関の山。ましてやそれがラブストーリーとなれば陳腐さが増す。

一方で、南北分断は現実でそこには長い歴史と人々の想いが積み重なっている。
この歴史を背景に描かれる物語だからこそ視聴者はのめり込めるのだ。

想像したことがあるだろうか?
「愛する人の命が狙われている」とか「自分が生まれ育った場所にいる限り、愛する人と一生連絡をとる手段がない」という状況を。

少なくとも我々にっては現実味のないこの状況も、南北の歴史的背景をドラマの設定にすることで一気に感情移入できるところまで近づいてくる。

実際のところ、パラグライダー事故で38度線を超えた韓国の財閥令嬢が北朝鮮のエリート将校と恋に落ちることなど起きないことはわかっている。でもこの南北設定によって、ストーリーが架空であっても陳腐だとは思わせないくらいには視聴者の気持ちを引き寄せるのだ。


3. 女が考える理想の男性像 "リ・ジョンヒョク"

「自分を守ってくれる男」

これに惹かれない女は少ないと思う。
だって、自分を守るために命をかける男ですよ。
これにはどんなに自立している女であろうが自信家の女であろうがきっと胸がときめくはず。

リ・ジョンヒョクは、ユン・セリに危機が訪れるとスーパーヒーローのごとく必ず助けに現れる。自分の命をかけてまで。

でもポイントはそこじゃない。
日頃は口数も少なく素っ気ないリ・ジョンヒョクだけど、セリを常に心配し優しさを見せたりする。その一面があるからこそ、彼がスーパーヒーローモードになる時にときめくのだ。ソフト面とハード面の融合の賜物。

そしてソフト面の「優しさ」もさりげないのがいい。
セリが欲しがるものをこっそり買いに行ったり、ご飯を作ってあげたり、帰国できずに落ち込む彼女にコーヒーを入れてあげたり、眠る彼女にそっと布団をかけてあげたり。
とにかく日常の細かいところで見せるちょっとした優しさがジワジワとしみ込んでくるのだ。

そして、自分の気持ち(セリが好きだという気持ち)に気づいた時には、それまでのそっけない態度が一変し、情熱的な男の一面を見せる。

これ、もう女子にはたまらないと思う。

また、リ・ジョンヒョクとセリは、お互いに相手の幸せを心から祈っている。
ここも重要なポイント。南と北でそれぞれ生きる運命の二人は自分の気持ちを押し付けることなくグッとこらえ、常に相手の幸せを願う。

38度線までセリを送る途中、二度と会えないかもしれない彼女にリ・ジョンヒョクは言う。

「男に会ってもいい。何もなかったように過ごしてもいい」

「その代わり 孤独になるな」


「僕がいるから そばにいなくても君が寂しくないようにいつも思ってる いつまでも幸せでいてくれ それが僕の願いだ」


もう、これを書いているだけでも映像を想いだして泣きそう。

彼の想いを要約すると、
「君が怪我や病気をせずに無事でいること、君が平穏に暮らせること、そのためなら僕を忘れてもいい。君の幸せを祈っている。(でも内心は→本当はそばにいて君と生きていきたい。でも許されない。君は南の人で僕は北の人間だ)」

口に出す言葉と心に秘めている想いのギャップが切ない。

これは、リ・ジョンヒョクだけでなくセリも同じ。
彼女も自分の全てをかけて彼を守っている。
韓国に侵入したリ・ジョンヒョクとずっと一緒にいたいと切望しつつも、それが叶わないことはわかっている。
彼が彼女を南に帰したように、彼女も彼を彼の世界(北)に無事に帰すためならどんな無茶でもする。

 このお互いを想う姿と38度線という障害が立ちはだかる二人の運命が涙を誘う。そして視聴者は「愛の不時着沼」にどっぷりハマっていく。


ところで、このドラマはジャンルとしてはラブ・コメディー。
視聴者はラブコメらしいコミカルなシーンによって、主役の二人に親しみを感じたり共感したりする。

リ・ジョンヒョクでいえば、いつもはクールなポーカーフェースで通しているのに、セリの行動にヤキモチを焼く時の拗ね顔がかわいい。褒められると気づかれない程度に口角がちょっと上がるのもキュンとする。めちゃくちゃギャップ萌え。

その他にも女性がときめくしぐさや行動、セリフがすごくよく研究されていて視聴者的にとっては幸せな限り。

いずれにしても、ヒョンビンの魅力があってこそとは思うが、北朝鮮軍人風?な前髪パッツンな髪型のリ・ジョンヒョクに完全に心奪われている。

"リ・ジョンヒョク"  もう、完全に理想の男である。


4. 脇役の存在感、そして脚本が素晴らしき

主役二人のラブストーリーが中心とはいえ、脇を固める人々が素晴らしい。

第5中隊の隊員たちや北朝鮮の村人、リ・ジョンヒョクの婚約者、韓国から逃げてきた詐欺師、北朝鮮の保衛員の少佐(悪役)や盗聴担当者(複雑な役どころ)など、登場人数が多すぎる気もするが、彼らの存在があってこそ全16話を飽きることなく楽しめたのだと思う。

特にコメディ担当の隊員や村人はメインストーリーのスパイスとして重大な役割を果たしている。彼らによって表現される北朝鮮の日常や韓国での珍道中がドラマに暖かみをもたらすのだ。

彼らがメインストーリーと適度に絡むことによって、高度なエンターテイメント作品に仕上がっているという印象。
コメディ要素がシリアスなラブストーリーを引き立てる構造だ。


脚本も新鮮だ。
重要な出来事の「種明かし」とも言えるシーンが後で明かされることで、視聴者が事実を知るパターンが繰り返されて物語が進む。

視聴者はドキドキしながら事の成り行きを見守るが、その経緯がスッキリわかる「種明かしシーン」を見てホッとする。
状況をセリフで説明させるよりもよっぽど効果的。

そして、伏線として組み込まれているリ・ジョンヒョクとセリの「スイスでの出会いシーン」が登場するタイミングも素晴らしい。

「運命」というキーワードをところどころに散りばめながら、最後には視聴者がそれを強く願わずにはいられなくなるストーリー展開。最終回に向けて気分が盛り上がらないワケがない。

他にも構成がうまいと唸ったところは多々あるが、7話でセリの元婚約者で詐欺師のク・スンジュンがリ・ジョンヒョクの婚約者であるソ・ダンに言った言葉が印象に残っている。

婚約者であるリ・ジョンヒョクが自分に興味を持たないことに悩むダンに、ク・スンジュンが言う。

「人がときめくのは、結末を知らないからだ」

結婚が決まっているから優位なのではないということをダンに指南しているのだが、メインストーリーの二人がまさに「究極の結末がわからない恋」にときめいている中で、運命とは別の恋の要素を客観的な恋愛感として示唆しているのが興味深い。

私はかつて脚本を書いていた時期があったので脚本の構成やセリフが気になるのだが、このドラマはとても勉強になった。


さて、個人的には主役二人の気持ちが徐々に近づいていく前半の北朝鮮編が好き。
セリと同じように前半でリ・ジョンヒョクにときめき恋をして、後半の韓国編で完全に彼の虜になってしまった。そして、最終話の軍事境界線での別れのシーンではセリの気持ちになりきり号泣。

38度線という障害がある限りこの恋の結末は楽観的ではない。ラストシーンでは運命が二人を目的地に運びほっとしたけど、障害が消えたわけではない。だからこそ、ク・スンジュンがダンに言った言葉のように、恋の行方が未知である限り二人はときめき続けるのだと思う。

ところで、韓国ってフルネームで人のことを呼ぶのね。
ネットで調べたら同じ苗字の人が多いからだとあったけど。

さて、書いて少しは気持ちが落ち着くかと思ったけどまだ無理みたい。
「リ・ジョンヒョク」熱を冷ますにはもう少し時間がかかりそうです。


トップ画像:tvN「愛の不時着」公式サイトより引用
http://program.tving.com/tvn/cloy


(day24)

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