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映画・ドラマのレビュー

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映画・ドラマ・ドキュメンタリーなど鑑賞した映像のレビューと、作品から感じたことを綴ります。(ネタバレあります)
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台湾映画はゆるやかに心を揺さぶる@Netflix配信3選 『弱くて強い女たち』他

「愛の不時着」以来、韓国コンテンツ沼をさまよう私。 韓国ドラマはもちろんだけど、韓国映画もなかなかの沼だと思う。 でもそれは最近のこと。 アジア映画好きな私にとって、韓国映画よりも馴染みがあるのは香港映画や台湾映画。 台湾映画で言えば、侯孝賢監督の「悲情城市」は何度も観たし、「ヤンヤン 夏の想い出」「恐怖分子」などエドワード・ヤン監督の作品も大好きだ。 さて先日、気になっていた台湾映画「弱くて強い女たち」がNetflix で配信されていることを知った。 せっかくなのでこ

「私にとって写真とは何か」を考えるー『浅田家!』を観て

映画「浅田家!」を観た。 写真とは長い付き合いの私にとって、この作品は映画として楽しんだだけでなく、写真について考える良い機会となった。 私にはかつて、写真を真剣に学んでいた時期がある。 その経験を生かし現在もカメラマンとして仕事をすることもある。 そんな私がこの映画を観ながら考えたことは「私にとって写真とは何なのか」という根本的な問いだった。 映画の主人公である浅田政志(二宮和也)が、自分のスタイルを確立するきっかけになったのは、写真学校の卒業製作のお題「もし1度きり

『太陽の末裔』 を駆け足で完走して思うこと

先月加入したU-NEXTトライアル無料期間がもうすぐ終わる。 U-NEXTは新作がバンバン投入されるし、コンテンツがすごく豊富で気に入っていたのだが、フリーズ&エラーが多発。(Amazon PrimeやNetflixでは起きない現象なので原因は不明。。) なので、残念だけどU-NEXTからは撤退しようと決めた。 新作映画をポイント購入して何本か観たので許してね。 さて、そうと決めたらU-NEXTで独占配信されている作品を今のうちに鑑賞しなければ。そこで「太陽の末裔」を寝

ツンデレの潜在能力は 「ツン」 と 「デレ」 の比率で決まる 『ジキハイ』からみる人はなぜツンデレに惹かれるか

ついにU-NEXTにも手を出してしまった。 こちらのラインナップにはNetflixやPrime Videoにない作品が数多くあって、しばらくは観る作品に不自由はなさそうだ。 まずは「愛の不時着」以来惚れてしまったヒョンビンの主演作品制覇を目指し、U-NEXT独占の「ジキルとハイドに恋した私」を鑑賞中。 このドラマは解離性同一性障害(多重人格)を患うソジンと、彼の副人格ロビンを中心に展開する。タイトルが軽やかなので明るいラブコメかと思いきや、中盤が意外に重い内容で良い意味

『私の名前はキム・サムスン』 それでも人は恋をする

「愛の不時着」で韓国ドラマの世界に足を踏み入れてしまった私。 特に私の理想の男「リ・ジョンヒョク」を演じたヒョンビンが気になり、彼の出演映画やドラマを鑑賞するのが最近の日課となっている。 先日、2005年の大ヒットドラマ「私の名前はキム・サムスン」を観了したのでその感想を余韻が消えないうちに書いておきたいと思う。 観た後に恋をしたくなるドラマ 「私の名前はキム・サムスン」はまだ初々しさが残るヒョンビンを堪能しつつ、三十路女子の気持ちに共感しながら楽しめるラブコメディー

『息もできない』 涙とくそったれ

2008年/韓国 原題:Breathless 監督:ヤン・イクチュン 「息もできない」 心にズシリと重たい作品。 幼い頃、父親の暴力によって母と妹を失った借金取りのサンフン。 暴力的な父、弟と暮らす女子高生ヨニ。 社会の底辺で生きる傷を負ったこの二人が偶然出会い、少しづつ心を通わせる。 そして、心を開ける相手がいない二人にとって、お互いの存在は闇に現れたかすかな光となっていく。 しかし、これは束の間の喜び。 負の連鎖は止まることなく、最後は悲しい結末を迎え

『LIFE!』 今いる場所から見える景色は、本当に見たい景色なのか

当たり前だが世界は広い。 だけど、日々の生活に追われ狭い世界で日常を生きている。 未知の世界へのことを考えるとワクワクするが、つい行動は後回しになる。 そうしているうちに無為に日々が過ぎていく。 最近、巣ごもり生活が続くせいか少しエネルギーが低下しているので、元気がでる映画をと思い「LIFE」を観た。そして思いの他心を揺さぶられた。 映画を観て感じた気持ちを忘れないためにも、熱が冷めないうちに書いておきたいと思う。 『LIFE』2013年/アメリカ 原題:The S

『歩いても 歩いても』 家族というカオスについて

2008年/日本 監督:是枝裕和 出演:阿部寛・夏川結衣・樹木希林・YOU 他 15年前に他界した長男の命日。 年老いた両親が暮らす実家に、次男・長女の家族が帰省する。 長女(ちなみ)は、実家を二世帯住宅に改装して一緒に住みたいと考えていて、母親のご機嫌をとることに余念がない。 次男(良多)は、夫と死別した子持ちの女(ゆかり)と結婚し家庭を築いたものの現在失業中。そして失業の事実を両親、特に父に知られたくないがゆえにつまらない嘘をつく。 一方、町医者だった父は相変わらず

『パーマネント野ばら』 心やさしい女たちの、逞しくも切ない物語

2010年製作/100分/日本 原作:西原理恵子 監督:吉田大八 出演:菅野美穂・江口洋介・夏木マリ・小池栄子・池脇千鶴 他 主人公なおこ(菅野美穂)は、バツイチ、子持ち。 お母ちゃん(夏木マリ)が経営する田舎町の美容院「パーマネント野ばら」を手伝いながら暮らしている。 「野ばら」は近隣の人々の社交の場だ。 世間話のみならず、恋の話や男の話(かなりエグい)をあけすけに語り、皆で笑あう。男で苦労しているくせに恋せずにいられない懲りない女たちが集う場所なのだ。 その中に

「ジュリエット・ビノシュ」が出演する映画 おすすめの3作品

ジュリエット・ビノシュは1964年生まれのフランスの女優。 「ポンヌフの恋人」「トリコロール青の愛」「存在の耐えられない軽さ」「イングリッシュ・ペイシェント」などの代表作の他、数々の映画に出演しています。 ここではこれらの代表作ではなく「日本ではあまり知られていないけどオススメ」な作品を3つ紹介します。 1. トスカーナの贋作『トスカーナの贋作』 2010年製作/106分/フランス・イタリア合作 原題:Copie Conforme 監督:アッバス・キアロスタミ 物語

Netflixオリジナル 『ハリウッド』 語るべき物語は誰もが持っている

ハリウッド Season 1 監督:ライアン・マーフィー 2020年 アメリカドラマ( Netflix ) Netflixのドラマは見始めると止まらない。 5月の新着ドラマ「ハリウッド」も御多分に洩れず。 このドラマはテンポがよくて軽快。 「夢を叶える」「自分に正直に生きる」というテーマが物語の軸となる。 舞台は第二次大戦後のハリウッド。 映画スターを夢見たり、監督や脚本家として映画を作ることに情熱を注ぐ人々が登場する。彼らはダイバシティに富んでいて、白人は

『さざなみ(45Years)』失望に似た悲しみについて

『45 Years』(邦題:さざなみ) 監督:アンドリュー・ヘイ 2015年 イギリス映画 出演:シャーロット・ランブリング, トム・コートネイ 結婚45周年のパーティーを控えたある日、穏やかに暮らす夫婦の元に一通の手紙が届く。その手紙によって、夫ジェフは過去に引き戻され、妻ケイトは心が乱されていくというお話。 この手紙がきっかけで、ケイトはジェフの過去やそこに秘められた気持ちを知るだけでなく、過去を未だに引きずっている夫の姿に打ちのめされることになる。 45Ye

Netflixオリジナル 『Followers』 散りばめられた言葉がゆるやかに、そしてジワジワと

Followers(フォロワーズ) 監督:蜷川実花 2020年 日本のドラマ( Netflix ) 蜷川さんの「色彩」が好きで、絶対観たかった作品。 主人公が写真家という設定なので、写真好きな私としてはハマるの必至。 中谷美紀さん演じる奈良リミがとてもヨイ。 自分に正直で、でもちゃんと社会性も備えていて、柔らかに見えて強い芯がある。そして、どこまでもナチュラル。 「自分もこうありたい」と思わせる女性像。 もうひとり、がっつり好きになったのが夏木マリさんが演じた田嶌エリ

Netflixオリジナル 『ミス・アメリカーナ』 自分が自分であるために

Taylor Swift: Miss Americana(ミス・アメリカーナ -テイラー・スウィフト-) 監督:ラナ・ウィルソン 2020年 ドキュメンタリー( Netflix ) 音楽に疎い私は、テイラー・スウィフトを知らなかった。 ドキュメンタリー途中で「Me!」が流れて、「あ、これ聞いたことある!でも誰が歌っているのか知らない」という程度の知識量。 実際のところ、彼女の姿も初めて目にした。 テイラー・スウィフト。 アメリカのシンガーソングライターで、グラミー賞受賞歴