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映画・ドラマのレビュー

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映画・ドラマ・ドキュメンタリーなど鑑賞した映像のレビューと、作品から感じたことを綴ります。(ネタバレあります)
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#毎日note

韓国ドラマ『mine』から見る価値観の変化-「女の敵は女」はもう古い

かつての韓国ドラマといえば、財閥もの、記憶喪失、不治の病などなど、「これでもか!」と言いたくなるようなわかりやすい障害や葛藤が盛り込まれた、劇的展開がお家芸だった。 しかし韓国ドラマは進化した。 劇的な展開の物語は多数あれど、ありきたりな障害や葛藤が安易に使われること滅多になくなった。素晴らしきクオリティの作品が数多く配信され、韓国ドラマは、今やグローバルコンテンツとして確固たる地位を築いてる。 のはずなのだが、最近完走した「mine」はかつての韓国ドラマを彷彿とさせる内

動画配信サービスで観るドラマが心地よいワケ

とにかく今年はドラマをよく観た。 かつて脚本の勉強をしていた頃もかなりの数のドラマを鑑賞したが、その頃と大きく違うのは鑑賞環境。 これまでは「毎週決まった時間にドラマを観る」あるいは「録画をしてドラマを観る」といった風に、テレビで放送されるタイミングに合わせてドラマを鑑賞していた。別の言い方をすれば、毎週続きを楽しみにしながらドラマを楽しんだ。 もちろん今でも、その鑑賞スタイルがスタンダードではあるのだが、Netflixに代表される「動画配信サービス」の存在が視聴者に別

「リ・ジョンヒョクへの想い」半年後の熟成度ー『愛の不時着』

「愛の不時着」に出会ってから、もう直ぐ半年が経とうとしている。 このドラマを完走してからしばらくは、ほぼ毎日欠かさずリ・ジョンヒョクに会いに行っていた私。 そこから韓国ドラマの世界へ足を踏み入れ、たくさんのドラマを鑑賞した。 そして原点に帰るべく、先日久々に通しで「愛の不時着」を鑑賞してみた。 ここでは、そこで感じたリ・ジョンヒョクへの想いを綴ってみる。 1. なぜ リ・ジョンヒョクに何度も会いたくなるのか以前「なぜ リ・ジョンヒョクに何度も会いたくなるのか」というタ

K-POPの世界を覗くーNetflixオリジナル『BLACKPINK ライトアップ・ザ・スカイ』

すごいものを観てしまった。 Netflixで配信中の、韓国人気ガールズ・グループBLACKPINKのドキュメンタリー映画「BLACKPINK ライトアップ・ザ・スカイ」を鑑賞。 数ヶ月前にやっと韓国ドラマデビューを果たした私にとって、K-POPは未知の世界。昨今巷で話題になっているのは知っていたが、あえて聴いてみようとは思わず、つまりこのドキュメンタリーが私にとっての(ほぼ初)K-POP体験となった。 まず驚いたのが彼女たちのパフォーマンスの完成度の高さ。 彼女たちが歌

「私にとって写真とは何か」を考えるー『浅田家!』を観て

映画「浅田家!」を観た。 写真とは長い付き合いの私にとって、この作品は映画として楽しんだだけでなく、写真について考える良い機会となった。 私にはかつて、写真を真剣に学んでいた時期がある。 その経験を生かし現在もカメラマンとして仕事をすることもある。 そんな私がこの映画を観ながら考えたことは「私にとって写真とは何なのか」という根本的な問いだった。 映画の主人公である浅田政志(二宮和也)が、自分のスタイルを確立するきっかけになったのは、写真学校の卒業製作のお題「もし1度きり

『82年生まれ、キム・ジヨン』 自分が主役の人生を生きるために

映画「82年生まれ、キム・ジヨン」を観た。 泣いた。 とにかく涙が止まらなかった。 今まで心の奥底に封印していたあれこれが映画を観て一気に吹き出したような感覚だった。 映画「82年生まれ、キム・ジヨン」は、韓国作家チョ・ナムジュの同名小説が原作。小説が大ヒットしたことで映画化された作品だ。 この映画は公開前からすごく楽しみにしていたので、台風前の悪天候にも負けず、仕事を早々に切り上げ公開初日に映画館へ足を運んだ。 *以下、ネタバレ含みますのでご注意ください。 1.

チャン・デヒあってこその『梨泰院クラス』ー悪役がドラマの質を左右する

韓国ドラマ「梨泰院クラス」を完走したのは8月半ば。 夏真っ只中だったあの頃から早2ヶ月。 季節は変わり、秋の夜長に「梨泰院クラス」を再観することに。 そして、ドラマ2周目にしてつくづく感じたのが悪役の方々(長家の親子)の演技の素晴らしさ。 前回はオ・スアを中心にドラマの感想をnoteに書いたが、今回は長家の会長であるチャン・デヒとその息子チャン・グンウォンに焦点を当ててみたい。 1. チャン・デヒという男について長家の会長チャン・デヒは、一代で会社を国内外食産業トップに

40歳医師たちの誠実で優しい日常が心地よい 『賢い医師生活』

こんなにも働く大人の「日常」を心地よく表現したドラマはあっただろうか。 韓国ドラマ「賢い医師生活」は秀逸な作品だ。 劇的な展開があるわけでもなく、激しい感情のぶつかり合いもない。 40代医師たちの年齢相応の日常が、丁寧に描かれているだけ。 でも観始めたら最後、彼らに会いたくて、続きが観たくてあっと言うまに完走してしまった。 1. まずはあらすじ・登場人物をまずは簡単なあらすじを。 大学の医学部同期である5人は20年来の親友。彼らは「ユルジェ病院」で医師として働いている

季節がひとつ進むたびに人は成長する

ドラマ「プロデューサー」を完走。 季節は春。大手放送局のバラエティー局にプロデューサー(PD)として入社した、新入社員スンチャンの新しい人生のスタートと共に物語が始まる。 キム・スヒョン演じるスンチャンは、高学歴だがウブで気が利かない不器用な新人。そんな彼と深く関わることになるのが、スンチャンの先輩PDジュンモ(チャ・テヒョン)とイェジン(コン・ヒョジン)。ちなみにこの二人は幼馴染という設定。そこにトップスターのシンディ(IU)が絡み、それぞれの想いが交錯しつつ、共に成長

『太陽の末裔』 を駆け足で完走して思うこと

先月加入したU-NEXTトライアル無料期間がもうすぐ終わる。 U-NEXTは新作がバンバン投入されるし、コンテンツがすごく豊富で気に入っていたのだが、フリーズ&エラーが多発。(Amazon PrimeやNetflixでは起きない現象なので原因は不明。。) なので、残念だけどU-NEXTからは撤退しようと決めた。 新作映画をポイント購入して何本か観たので許してね。 さて、そうと決めたらU-NEXTで独占配信されている作品を今のうちに鑑賞しなければ。そこで「太陽の末裔」を寝

『ラストレター』 無限の可能性と人生の選択肢があった頃

2020年/日本 監督:岩井俊二  出演:松たか子・福山雅治・広瀬すず・神木隆之介 1. 未咲をめぐる乙坂の旅未咲の葬儀後、未咲宛の同窓会の案内が届いたことから物語が始まる。 妹の裕里は、未咲が亡くなったことを伝えるために同窓会に出席する。そこで裕里の高校時代の初恋の相手で生物部の先輩でもある乙坂と再会した。 同級生たちは裕里を未咲と勘違いし、成り行き上、彼女は姉のふりをすることに。そして同窓会後、未咲になりすました裕里と乙坂との文通が始まる。しかし姉になりすましていた

『愛の不時着』脚本家パク・ジウンの作品からみるロマコメに不可欠な要素と、『愛の不時着』との比較

ドラマが面白くなるかどうかは脚本次第。 「愛の不時着」にどっぷりハマっている私としては、このドラマの脚本を書いたパク・ジウンの他の作品がとても気になっている。 そこでまずは「星から来たあなた」と「青い海の伝説」を完走。 この二つのドラマには「愛の不時着」でも登場する、パク・ジウンならではの、ロマンティックコメディに不可欠なエピソードや設定が数多く盛り込まれている。 制作の順番を考えれば、二つのドラマで使われたこれらの要素が「愛の不時着」でも健在と言うのが正当な見方だが、

ヒョンビン演じる主人公たちに惹きつけられる理由

「愛の不時着」沼に落ちて以来、ヒョンビンの主演映画やドラマを片っ端から鑑賞した。ドラマ6本、映画6本を2ヶ月で完走したのだからなかなかのハマりっぷりだと我ながら思う。これに加えて愛するリ・ジョンヒョクに会うために、1日1回は「愛の不時着」のお気に入りシーンを鑑賞するルーティンも継続中。 さて、過去のヒョンビン主演の作品を観ながら、ヒョンビン演じる主人公たちのリ・ジョンヒョク的な部分を無意識に探している私。 当たり前だが同じ人間が演じているので、笑顔やしぐさなど似ているとこ

『マチネの終わりに』心の奥底にしまい込んだ想いと情熱の行き場について

2019年/日本 監督:西谷弘 出演:福山雅治・石田ゆり子 「マチネの終わりに」は、せつなく静かな大人の恋の物語だ。 若い頃のように、情熱のままに自分の気持ちをぶつける恋ではない。 40代という年齢だからこそ抱く葛藤、生きてきた時間の分だけ見える景色、そして胸に湧き上がる愛する人への想いがじっくりと描かれている。 まずはあらすじを。 ギタリストの蒔野とジャーナリストの洋子は出会ってすぐに恋に落ちる。しかし蒔野のマネージャー三谷の嫉妬によって、二人はすれ違ってしまう。