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映画・ドラマのレビュー

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映画・ドラマ・ドキュメンタリーなど鑑賞した映像のレビューと、作品から感じたことを綴ります。(ネタバレあります)
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#韓国映画

イ・ジェフン主演_韓国映画「BLEAK NIGHT 番人」考察 -もつれた糸が切れた時-

イ・ジェフン主演映画、『BLEAK NIGHT 番人」の感想を綴りたい。 イ・ジェフンとパク・ジョンミンという今では贅沢なキャストが、2010年のインディーズ作品で見られるのは嬉しい限り。 この記事はネタバレありです。映画の見どころだけご覧になりたい場合は、以下の記事をご参照ください。 ギテの心の叫びとは 「ちょっとしたすれ違い」の積み重ねが人間関係を壊すことがある。 適切なタイミングで話し合えば解決できたことでも、誤解や言葉足らずによって修復不可能になってしまう。

『マイ・ディア・ミスター 私のおじさん』 断ち切るべき罪悪感について

ずっと気になっていた韓国ドラマ「マイ・ディア・ミスター 私のおじさん」をようやく完走。 このドラマは心優しい中年男、パク・ドンフンと、彼の部下である派遣社員の女、イ・ジアンを中心に繰り広げられる。 物語前半は、ジアンのドンフンに対する酷い仕打ちにヤキモキして、一視聴者として気持ちが落ち着かなかった。 でも、二人の心がかよい始めるにつれ、ずっと泣きっぱなし。 深く心に刺さる作品だった。 登場人物それぞれが抱えている傷や生きづらさを丁寧に描いたこのドラマには、「幸せになるこ

映画『スウィング・キッズ』ーそして自由の価値を知る

昨年公開になった韓国映画「スウィング・キッズ」をようやく鑑賞。 映画「フラガール」的な展開になるのかと思いきや、着地点は全く別の場所だった。 2時間を優に超えるこの作品の鑑賞後、なんとも言葉にできない感情が渦巻き、いつもはブチっと切ってしまうエンドロールまで観終えてもなお、余韻に浸っていた。 1.映画「スウィング・キッズ」の背景にあるもの物語は1951年朝鮮戦争下、捕虜を収容した韓国巨済島捕虜収容所を舞台に繰り広げられる。そこに収容されているのはアメリカ的自由主義思想に染

ユン・セリとホン・チャヨン ヒロインが表現する可笑しみについて

ドラマを鑑賞する上で、ヒロインのキャラクターはとても重要。 嫌いなタイプのヒロインだと感情移入が難しく、結果として途中で挫折しかねない。 ちなみに私は「強い女」がヒロインのドラマが好み。 ウジウジメソメソな弱い女がヒロインだとイライラして体に悪い。 そう言う意味で、「愛の不時着」のユン・セリは完璧だった。 類い希な美貌はともかく、社会的地位が高く自立している彼女はまったくもってステレオタイプなヒロインではない。 また、頭の回転が早く合理主義者。つまらんことでグダグダ悩んだ

「誰にも私の未来はわからない。私にさえも」ー映画『野球少女』

映画「野球少女」を観た。 女性の社会進出において「ガラスの天井」というたとえがよく使われる。 この物語はまさにその天井を突き破ろうと進む少女の話だ。 また、諦めないことの意味と力について考えさせられる作品でもあった。 私はと言えば、主人公チュ・スイン(イ・ジュヨン)にどっぷり感情移入してしまい、映画を見ながら涙が止まらなかった。 1. 誰であろうと私の未来はわからない前例のないことに挑むのは勇気がいる。 人に理解されないだけでなく、ひどい時には笑われたり馬鹿にされたり、

生き方を見失うのは、目を閉じていたからなのだと思う-韓国ドラマ『SKYキャッスル』

韓国ドラマ「SKYキャッスル」を観た。 お受験ママバトルを描いたドラマかと思いきや、超高学歴社会である韓国の社会問題「受験戦争」に切り込んだ見応えのあるドラマだった。 つまりは良い意味で期待を裏切られた。 登場人物たちの欲望のぶつかり合いとサスペンス要素が視聴者の感情を激しく揺さぶるあたり、韓国ドラマの王道的物語でもある。一方で、ドラマの後半には多くの教訓が盛り込まれていて諸々考えさせられた。 鑑賞を終えてまず考えたのは、「人の期待に応える生き方の不条理」についてだった

40歳、迷走の先には光が見える 『チャンシルさんには福が多いね』

絶対観ようと心に決めていた作品「チャンシルさんには福が多いね」。 なんだかめでたいタイトルも気に入った。 この物語の主人公であるチャンシルさんは、映画プロデューサーとして仕事に人生を捧げてき40歳、独身、恋人なしの中年女。 ある日、一緒に仕事をしていきた監督が急死し突然失業することに。 それだけではない。自分は映画製作に欠かせない重要な役割を担ってきたと自負していたのに、他人の評価はそうでないことを知りショックを受ける。 おまけに生活苦。 仕方なく、妹のように可愛がっ

心揺さぶられた映画で振り返る2020年

先日、2020年に鑑賞したドラマの総括をしたので、本日は映画について語りたい。 今年は100本越えの映画を鑑賞した。 これほど映画を観た年が今まであっただろうか。 それもこれも「巣篭もり生活」という特異な状況がもたらした結果。この生活を乗り切れたのはひとえに映画とドラマのおかげである。 たくさんの愛すべき作品群に助けられた一年だったと心から思う。 そんな2020年も残りわずか。 総括として、今年鑑賞した映画で気に入った作品、または強く印象に残った作品を記録しておきたい。

『82年生まれ、キム・ジヨン』 自分が主役の人生を生きるために

映画「82年生まれ、キム・ジヨン」を観た。 泣いた。 とにかく涙が止まらなかった。 今まで心の奥底に封印していたあれこれが映画を観て一気に吹き出したような感覚だった。 映画「82年生まれ、キム・ジヨン」は、韓国作家チョ・ナムジュの同名小説が原作。小説が大ヒットしたことで映画化された作品だ。 この映画は公開前からすごく楽しみにしていたので、台風前の悪天候にも負けず、仕事を早々に切り上げ公開初日に映画館へ足を運んだ。 *以下、ネタバレ含みますのでご注意ください。 1.

外見と内面、人はそのどちらを愛するのか 『ビューティー・インサイド』

2015年/韓国 原題:The Beauty Inside 監督:ペク 「主人公キム・ウジンは、眠りから覚めるたびに外見が変わる」 この設定だけを見るとコメディ映画と勘違いしそうだが、全くもってそうではない。むしろシリアスな純愛映画だ。 この作品は「もし、眠りから目覚める度に外見が変わったら?」という仮定の元、「外見か内面か」というある意味「普遍の問い」に挑んでいる作品だと言える。 そしてこの実験的作品にすんなり感情移入できるのは、追及するテーマがはっきりしているから

繰り返される悲しみ 『コインロッカーの女』

韓国ドラマ「トッケビ」を鑑賞以来、女優キム・ゴウンが気になる。 彼女の出演の作品を探してたどりついた映画が「コインロッカーの女」。 キム・ゴウンが闇社会で生きる女のを演じたこの映画は、胸に突き刺さるようなヒリヒリ感のある作品だった。 1. コインロッカーに捨てられた女の人生まずは簡単なあらすじを。 コインロッカーに捨てられた赤ん坊は、見つかったロッカーの番号「10」を意味するイリョンと名付けられ、チャイナタウンで闇貸金業を営む「母さん」(キム・ヘス)と呼ばれる女に育てら

その選択によって、失ったものと得たものは何か-映画『男と女』

人は選択することによって何かを失い、そして何かを得る。 失ったものと同等の価値があるものを得るとは限らないけど、失う・捨てることによってこそ、得ることができるものがあるのも事実。 先日、6月に観た映画「男と女」(監督:イ・ユンギ)を再鑑賞した。 韓国ドラマ「トッケビ」を完走し、コン・ユの主演の別の作品を観たくなり、以前鑑賞して涙したこの作品を選んだ。 前回(初観)の感想はこちら。 2ヶ月前と同じように、鑑賞後はぐーっと胸が締めつけられた。 登場人物たちの孤独や寂しさが伝

去る者と残される者 それぞれの苦しみについて 『ワン・デイ 悲しみが消えるまで』

2017年/韓国 原題:One Day 監督 イ・ユンギ 「ワン・デイ 悲しみが消えるまで」はいわゆるファンタジー映画。 今まで観てきたイ・ユンギ監督の作品(「愛してる、愛してない」「男と女」)が、現実の男女の心の揺れを描いたものだったのでちょっと意外だった。 この物語は、闘病の末自殺した妻の死後、すっかり無気力になっているガンスと、事故で昏睡状態の視覚障害者ミソ(幽体離脱している)との交流が、現実とファンタジーの世界を交錯しながら描かれる。 ここでは、ファンタジーや

『男と女』 許されぬ恋のリアルな結末がせつない

2016年/韓国 原題:A Man and a Woman 監督:イ・ユンギ どんなに好きでも、どんなに相手を必要としていても、どうすることもできないことがある。この映画では孤独を抱える家庭持ちの男女が出会い、激しく惹かれ合っっていく様とその行く末が描かれる。 --- サンミンの息子は普通の子供と少し違っていて行動がユニーク。 夫は息子を特別支援学校に入れることを勧めるが、彼女は普通学校で学ばせることにこだわっている。息子は彼女の全てだった。 そんな息子はお気に入りの