授業レポート【一杯の珈琲から世界と繋がる〜知られざる珈琲のセカイ〜】(先生:田中隆宣さん(Zelkova coffee)11月13日開催

たかが一杯、されど一杯


少し古いデータですが、2017年に取られたコーヒーのアンケート(国内1万人弱を対象)によると、毎日コーヒーを飲む人の割合は約7割程度。そのうち1日2〜3杯飲む人は4割いるとのこと。印象としては多く感じたでしょうか?それとも少なく感じたでしょうか?

「コーヒー」と一口に言っても、実はとても多種多様ですよね。インスタント、缶コーヒー、ドリップパックやカップ式自動販売機のもの、カフェや飲食店こだわりの一杯……豆も焙煎方法もたくさんあります。
私たちの生活にこんなにも浸透した飲料ですが、一体どれだけのことを知っているんでしょうか。
今回の授業では、コーヒーという題材を通じ、その歴史や業界事情を紐解くことで、日常に何気なく在るものに隠れた「奥行き」と「繋がり」にせまりました。

教えてくれた先生は、福岡県うきは市にある「ぶどうのたね 」で「Zelkova coffee」を営まれる田中隆宣(たなかたかのぶ)さん。20代でお店を構え、今年で8年目。豆は、できるかぎり現地で農園さんとお会いし、直接やりとりしながら仕入れるスタイル(ダイレクトトレード)。豆の個性に合わせ焙煎・抽出されたコーヒーにはファンも多い。

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授業の前に参加者同士の自己紹介。日々こだわりながら飲まれている方、美味しいコーヒーが飲めると聞いて来られた方、参加のきっかけも背景も様々です。

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そして授業スタート。ですが、まずは1杯のコーヒーをいただくところから。
銘柄は「ブラジル・サントス・No.2」(ブラジルのサントス港から出荷されたのでこの名がついているそうです)。
すっきりとした味わいでした。
その1杯を皮切りに、先生の熱く濃い授業が始まりました。

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「コーヒー”豆”ってそもそも何?」というお話から、コーヒーの歴史、生態系、世界市場など、内容は一気にグローバルに。しかも、そこで話される内容の一つ一つが広く深い。1杯のコーヒーを私たちが口にするまでに、なんと約100人もの人が関わっているんだそう!ただ、その100人それぞれにきちんと対価が支払われているか、本人たちが商品そのものの価値を理解して生産されているか、というのは、まだまだ根深い問題のようです。

そして、今後のコーヒー業界で大きな鍵となってくる「スペシャルティコーヒー」のお話。よく間違えられるそうですが、「スペシャリティ」ではなく「スペシャルティ」だそうです。
スペシャルティコーヒーのポイントは、「トレイサビリティ」(追跡可能性)と「サスティナビリティ」(持続可能性)。
トレイサビリティとは、どこの誰が関わっているか・作っているのかを追跡できること。サスティナビリティは、自然生態系や労働環境、品質管理など関わるヒトモノコトを良い状態に保つことを目指し取り組まれたものであること。
コーヒー界隈でもよく耳にする「フェアトレード」や「エコ」の話も、実はこの2つのポイントをもとに見てみると、疑問符が浮かぶ点が多々あるそうです。私たちが支払う対価は、どれだけの働き手にいくら届いているのかなど。

コーヒーは、人・環境・労働・マーケット・世界情勢…様々な要素が複雑に絡み合い、影響をうけながら私たちのもとに届けられているという事実。
たかが一杯、されど一杯。
2つのポイントを押さえて選択することは、消費者としての意識は変えるのではと思います。

そんなお話を伺いながら、今回は特別にスペシャルティコーヒーを試飲させていただきました。それもなんと、エチオピアの品評会で金賞をとった、大変貴重な品種。香りからもう違う!教室中が一気に芳しく(かぐわしく)なりました。本当に「美味しい」の一言に尽きる。
その合間に先生への質問や意見交換など挟み、良い質問をされた方にはZelkova coffeeのオリジナルグッズをプレゼントするというお茶目な場面も。

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授業は終始、先生自身が現地の労働者や生産者と話し現場を見聞して感じられたことや、撮ってきた写真などを基に、わかりやすく時にユーモアも交えながら話され、それぞれを分解しても1つの授業になりそうなほどの情報量で、参加者のみなさんのメモを取られたり、真剣にうなずきながら聴かれる様子が印象的でした。

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今在るものには大なり小なりの過程と背景がありますが、それらを意識することは、意外と少ないのではないでしょうか。ほんの少し興味を持って聞いてみるだけで、1つの題材だけでもこんなにも奥行きと繋がりが隠れていました。
本当にあっという間の1時間半。それぞれの項目・工程ごとにもっともっと聞いてみたい!と感じるような授業で、時間がいくらあっても足りませんね。
興味を持たれた方は、ぜひZelkova coffeeのカウンターで田中さんと
コーヒー談義を。


ミノウ大学事務局

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