もののけ姫に学ぶ 不幸を晒すこと、暴くことの自戒
賢しらにわずかな不運を見せびらかすな
もののけ姫の中で、エボシがアシタカに言うこの言葉が私は非常に好きです。
好きと言うか、自戒として常に心に留めています。
エミシの村に暮らしていたアシタカは、思いがけず、怒りと憎しみの果てにタタリ神となった猪神に襲われ、右腕に呪いをもらう。
まさに猪神をタタリ神にする原因を作ったのが、西の国タタラ場を治めるエボシ。
多くの民の前で、これみよがしに自身の呪いのアザを指し示すアシタカを、エボシが諌めるように言うのが件の言葉。
アシタカ「これ以上憎しみに身をゆだねるな」
エボシ「賢(さか)しらにわずかな不運を見せびらかすな。その右腕、切り落としてやろう!!」
ものすごく簡単に言ってしまうと、
自分の不幸を、「オレはこんなに大変な思いをしてるんだ」と、これみよがしに他者に見せびらかすことを慎めということ。
不幸を迂闊に人に見せてしまうと、思いがけなく敬遠されてしまったり、弱みとして利用されてしまったりすることがあります。
何より、不幸話をされること、聞いている方はあまり気持ちの良いものではないはず。
自分の不運を話している時って、無意識にヒロイスティック酔ってしまい、他者目線が欠けてしまう。
つまり、他者への配慮がなくなってしまいがち。
というわけで、自分の些細な不運を人に晒さないように、常心がけています。
同様に、人が晒さずにおいている不幸を、無遠慮に暴き出すこともしないように気をつけています。
カウンセラーという仕事柄、人の心のネガティヴに触れることは避けられません。
しかし、触れられないように秘められた不幸を、相手が望んでもいないのに、
「困ってるでしょう。解決してあげましょう」
と賢しらに人の心に踏み込み、手柄のように暴き出すことは、カウンセラーの仕事ではありません。
賢しらに、人の不幸を暴くこと
こわやこわや…
賢しらにわずかな不運を見せびらかすな
自分の隣で笑顔でいる人が、
実は、大きな不幸を背負いながらも、秘めて晒さずにいる人であるかもしれないことを、忘れないでいたいと思います。