見出し画像

うまく生きていくための、習慣ひとつ

 「立つ鳥跡を濁さず」と言いますが、どうでしょう?先日、高速道路の上空を横切っていく白鳥たちの姿を見ながら、はためく白い翼に自分を省みるきっかけをもらいました。

 私の家族は、みんなで一緒に出掛けたり、同じものを共有したりするのが好きな帰来で、小さい頃から旅行にいったり、ドライブにいったりすることが多く、貴重な体験をたくさんさせてもらいました。さすがにカヌーを自作したときには驚きましたが。

 私の母親は、ホテルや旅館の滞在を終えてチェックアウトする前に、必ずベッドメイキングをし、何もかもを元通りにして、何なら洗面所の鏡まできれいに拭きあげて、部屋を去ります。
 私にとってはずっと当たり前に見てきた光景だったので、友人たちと旅行に行くときも必ず母親と同じようにしていました。

 そんな矢先、SNS上で「困る客」なる発言を目にしたのです。その中のひとつに、「丁寧にベッドメイキング等をして帰る客」とありました。要するに、シーツやタオルなどをひっぺがして、洗いやすく広げてクシャクシャにした状態で回収するので、きれいに畳んであったりすると、時間が余計にかかって迷惑だ、というのです。
 私は、「そうだったのか」となぜだか申し訳ない気持ちになりましたが、どうしても、自分をおもてなししてもらったことへの感謝のしるしとして、いわゆる「後をにごさず」立ち去ることをやめられずにいました。
 そんな自分にがっかりしていたとき、こんな話を耳にしたのです。これは、私にとって救いの言葉でした。

些細な習慣づけ一つが、成功への要素に

 大阪出身の経営コンサルタントである故・船井幸雄氏が出張で名古屋から新幹線に乗ったときの話です。船井氏は予約していたグリーン車の座席へ行くと、驚くべき光景を目にします。
 テーブルにはみかんの皮、座席には読み捨てた新聞紙、床にはゴミ、という具合に、そこらじゅうに物が散乱し、とても座れる状態ではありません。
 ようやく座れるようになったときには、目的地である京都にまもなく到着するところでした。
 その座席に座っていた人がどんな人なのか想像もつきませんが、自分が座っている間に自分の都合しか頭になく、次に座る人やまわりの人のことなど、おかまいなしだったのでしょう。とにもかくにも、人の迷惑を考えない人の存在ということが、船井氏には驚きだったのです。
 船井氏がホテルマネージャーを務める知人に、この話をしたところ、彼はお客さんがチェックアウトした後の部屋を見れば、その人の現在の社会的地位から将来のことまで、よくわかるものなのだと言いました。
 実際に船井氏がホテルの部屋を見せてもらうと、驚いたことに、現在活躍中で将来性もあり、間違いなく伸びると思われる人が使った部屋は、後始末がとてもよくできていてきれいなのです。
 仕事を終えてホテルへ戻ったときには疲れているはずです。そんなビジネスマンが、たった一晩泊まるだけの部屋を、きれいに整えてチェックアウトしていく。船井氏は、その部屋を見ているうちに、あとで掃除をする人への思いやりさえ感じたそうです。
 ここで船井氏は、「これと同じことが、わが社の社員にもいえるのではないか」、と思いつきます。
 泊まり込みの研修の際に、社員の使っている部屋を見て回りました。すると、ここでも例外なく、伸びている人、仕事のできる人、みんなから慕われている人の部屋はきちんとしていたのです。
 「成功するタイプの人は、使った部屋がきれい」。鶏が先か、卵が先か、の問題ではありますが、事実関係は確かです。ささいな習慣づけ一つが、うまく生きていくための大切な要素になり得るということなのでしょう。

画像1

ーあとがきー
 さて、「立つ鳥跡を濁さず」。書きながら気づいたことがありました。「思いやり」と「効率の良さ」は別のものであるということです。
 確かに、SNSでの話のように、「効率」を求めるのであれば、シーツなんてぐしゃっと置いておいた方が良いのかもしれませんが、もし私が清掃員だったら、それをおもてなしへの「感謝」や「思いやり」だとは受け取れませんし、人間性を疑いはしませんが、どんな人が泊まっていたのか、少なくとも「素敵な人だったんだろうな」とは思いません。
 この「濁さず」の心意気こそ、ロボットやAIに負けない、私たちの誇れる武器であり、心なのではないかな、と思うのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?