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ショートストーリー

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趣味で書いている短い話です。
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#ショートストーリー

遺影

遺影

「ちがうちがう、そうじゃ、そうじゃない。」

それが死んでからの第一声。

気付いたら、この世とオサラバしていた。

今でいうと『あの世』になるのか?

いずれにせよ、私は死んでいた。

幽霊ってやつになっていた。

棺に入った自分を上から見下ろすと、

死化粧が思いのほか似合っていた。

むしろ生きているときより顔色がいい。

ただ口紅の色が好みとは違った。

そりゃ化粧する人が私の好みを知って

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SF

SF

2021年、日本。

電子マネーが一気に普及したように見えた昨年、銀行口座からの不正引き出しが相次いで発覚。
銀行への預金に不安を持つ者が増え、自宅に現金を置く人々も徐々に増加傾向にあった。

「オンラインストアの在庫、増やしておいて。」

とある事務器具の卸し業者に勤める私は、2月初旬にはWEB担当者に小型金庫の在庫を増やすように指示を出していた。
春先にはさらに売れ行きが伸びると見越し、月末の

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