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氷と水の芸術祭 文芸作品第二展示室


浮かぶ笑顔・笑顔・笑顔
大切な人々の笑顔・笑顔・笑顔
ただ、ただ、ただ
笑顔だけを思い浮かべるようにしてみた。
上手く息を吸えず、苦しかった心が
一瞬で晴れた。モヤモヤとした憂鬱なものが、一気に流されていく。
爽やかな風が吹いて、清い水が流れて。
その水の色は、凄く透明でキラキラと光っている。まるで、宝石のように綺麗だ。
私の大切な人々の清い心が、凄く透明で清らかな水と氷の世界を作り出しているのだろうか?

「氷上にいるペンギンは、北極の場合、北極熊に食われるから、南極にしかいないという理由はわかった。だけどさ」
 白露は、目の前にいる西垣に不満をぶつける。「白露さん、おっしゃることはごもっとも。しかしながらそこはですね」西垣は白露の言い方があまりにも攻撃的なために、その沸点を抑えようと必死だ。
 白露は今回の企画を受けるにあたり、当初南極のペンギンが見られると思っていた。だが南極には簡単にはいけない。南極が無理ならせめてカナダの北を経由して北極に行けないかと、白露は改めて交渉をした。だがそれも困難となる。結局いろんな理由で、ペンギンを見るという案件はとん挫した。

私の頭にはいま中身がない。まさに空っぽだ。ぼうっとして思考が働かない。胃の中に穴が空いて食べたものがみんなそこからさらさらと流れ出してしまうかのように、受け取った情報が吸収されない。覚えようとしてもたちどころに消えて行ってしまうのだから。いつからこうなってしまったのだろう。そう思うと何だか肝が冷えるかのような心地になる。まるで自分の芯というものが凍り付いてしまったことに気付いた気になるのだ。私は結局何がいけなかったのかを知りたくなくて、最初からその中には何もなかったのだと自分を説得しようとしているのかもしれない。

溶けてゆく。
溶けてゆく溶けてゆく溶けてゆく。
右手の先から
とろとろと水になり、蒸発し、干上がっていく。
うまくつながれない右手。
失敗続きの右ひじ。
やがて肩までとけきって
体の芯には、北極のような氷。
熱帯夜に
あらがいつづける。
気温32度と背骨の氷が
拮抗する。

SNSで人気の女子大生のモーニングルーティン
まずは顔を洗います
くちゅくちゅ口をきれいにしてから
観葉植物に朝のシャワーを
次にわたしもシャワーを浴ビ、
フリーズ(男男男男悲男男男男)
マッターホルンの雪解け水
カスピ海の底の水
ウユニ塩湖の映す水
宇宙のどこかの星の水。
今、この瞬間、
どれくらいの水が夜を映しているだろう

詩 氷と水の

  水よう
  水せい
  水のいろ
  水えいのあと
かき氷
  水てき
  水どう
  水をまく
氷と水の芸術祭

水槽を氷とおよぐビール追う
指のしびれに夏思い出す

水水水水水水原爆忌

ああ水の
ように愛して
欲しかった
あなたの心は
冷たい氷


俳句 水水水水氷水水水水 からの二次創作

*作者のみなさま、引用等不適切であればご指摘ください。