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気づいちゃったんだ(その2)

前回からの続き。

翌朝になって 夫に伝えた

「昨日さ、娘が八つ当たりしてたでしょ?」
「ああ、してたね」

「あのときさ、あなたが全然怒ってなくてすごいいい人だと思ったんだけどさ。横で聞いてた私がイラっとして怒りそうになったくらいだから」
「そうなんだ」

「あのあとさお弁当作らなくちゃいけないってなったじゃない」
「なったね」

「それで絶望して 作り始めたじゃない、その時に思い出したことあって」


そこから私は、恨み節にならないように私の脳内で何が起きていたのかを伝えました。
昔の話を持ち出すと責められるんじゃないか、っていう防御が働くと思うんだよね。だからそこだけは気をつかった。

その1で書かなかったことがひとつあった
夫が娘の八つ当たりをさわやかに流して行けたのは、娘の大変さがまったく自分に起因してないからじゃないか?っていうこと。

彼が私をたしなめたとき、すごく理不尽だなと思ったのは
子育ては私だけの仕事じゃない、親なのは彼だって一緒
家事だって一緒
私がこれだけの仕事を請け負います、と話し合って始めたわけじゃない。できる人ができるだけやってるんだから、私ができてない家事や育児は、彼がやるべきことでもあるはず。
なのに、私だけがいっぱいいっぱいになってるのは絶対おかしい。それでいっぱいいっぱいいなって溢れている私を見て自分から動かないのもおかしい。
いっぱいいっぱいなって悲しくなってて怒ってる私をいさめようなんていう態度がおかしい。だって、あたしがこうなってるのはあなたが手を差し伸べないせいなんだよ

そういう時に言われてたのは
「そんないい方されたら」
「やってほしいことがあるなら言ってもらわないとわからない」
「具体的に物理的なことを減らすしかないんじゃない」
「自分から気づくのは・・むり」
「やれることはやってる」

あとは私の不機嫌には一切かかわらないような態度だった。

私はあの日、台所に立ってそのことを言われた自分の気持ちを反芻してただけじゃなくて
彼がどうしてそんな態度だったのか やっと思い当たった気がした

娘のやつあたりには、上機嫌だったからだ。
私の時は上機嫌に「よしよし」なんてなれるわけがなかったんだ。
だって彼は「それが自分の仕事でもあるとわかっていたから」。

自分の痛いところを突かれているから、ああやって防御してたってことじゃないのかな。素直に話を聞いたりは、できなかった。責められていることもわかるし、でも自分もどうしていいかはわからない。妻は取り乱してる。

それで、私、そのことを聞いてみたかった。

「~じゃないかな、って思ったんだけど。」とあらかた話し終えて、そういった。そうしたら

「そうなんじゃないかな。」

そうなんか。


10年くらいたってやっと、パズルのピースがはまったね。

そうなんか。


そこで私は初めて、
「それで、私は謝ってほしいとかじゃなくてね、気づいたことがあったの」
「なあに」

「それであの時どうしてほしかったかなって。
昨日、娘のことを なんか大変なことあったんだなぁ って思ってあげたみたいに
私にも 大変なんだね よくやってるよ ほんとにえらいよ ほんとにすごい って そういう風に優しくしてほしかったの」
「ほぉ」

「それをしなかったからあの時私つらかったんだよ、謝って!とかじゃなくて、いま、優しくして。あの時の私をねぎらって癒してほしいの!」

と少々おかしなことを言ったんだけど私は大まじめだったの。
そしたら、夫は照れながら「がんばっているよね。大変だよねー。えらいしすごい。すごいすごい。」と笑いながら言って、まあそれは私からしたら50点くらいだったんだけど、気持ちにより添えてもらったことと、なんか私も恥ずかしいし、もうおわり!ってなりました。

もうとうの昔で過ぎ去ったことと思ってたけど自分の心の奥深くに、悲しかった、孤独だったみたいな感情の記憶って根強く残っているものなんだなぁ。
でもそれはあの時の「記憶」。その記憶の中にあった「ほんとうはしてほしかったこと」を拾い上げられたなんて、幸運だった。気づかずに終わったこととしてそこに置いたままでも支障はなかったかもしれないけど、あの時の私は確かに大変だったからほんとうの望みを探し出せなかった。こうやって未来が癒しにいってあげられてよかったなぁ。夫にも感謝だよね、バカにせずに聞いてくれてね。

娘の八つ当たりが発端で、疲れ果てているときに襲ってくるこの悲しみはどこから来るのかを見せてくれた。その旅が私を癒してくれた。なんかすごくすっきりした気分だった。

そして私はその2日後くらいにものすごい熱を出したわけで。
そしていまこれを書いてるのはあれからもう1週間くらいたって、やっと治ってきたところ。

気づきの旅はこれにて完結。

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