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A24映画『WAVES/ウエイブズ』10代の感情の波を音楽と共に映像化

今のところ、A24制作の映画を見て外れたことがないんです。
2020年は、A24制作の映画が多数公開されるので、映画生活的にはとても楽しみな1年です。

2月公開の『ミッドサマー』以降、コロナ渦に突入していたため、続々と公開延期となってしまいましたが、7月10日にようやく公開となった『WAVES/ウェイブス』を、観てきました。

31歳のトレイ・エドワード・シュルツ監督が描く、ティーンエイジャーの心の風景。

淡い赤と青を多用した映像で、美しく切なく描いていきます。

前半の1時間は、兄タイラーの心の中を、後半1時間は妹のエミリーの心情を、監督がチョイスした31曲のプレイリストと共に辿っていく映画になっています。

イマドキ感あふれるプレイリストの曲たち。
10代から20代の方々には、ガッチリ心情に響く歌詞なんだろうなと感じて、ちょっとだけ寂しい気持ちになりました。

大人になりすぎてしまった私には、「カニエ・ウエストの曲って、こんなにぶっ飛んだ歌詞だったんだ。」という発見があるリストでした。

でも、音楽の力が、特に10代の若者にどれほどの力を与えるかということは、私も経験済みです。

だから、エミリーとルークが、ひとつのイヤホンで音楽を分け合うシーンがとても好きでした。
音楽を分け合って聞くことのできる人のことは、信じられます。

父親の期待値の大きさに押しつぶされそうになってしまう兄タイラーと、タイラーを救えたんじゃないかと悩む妹のエミリー。

タイラーは、父親に「自分のように強くなれ」と押し付けられて育ってきています。

「オレの時代は違った。お前らは恵まれている。」

なんて、言われて、どんどん追い込まれていきます。

強さを押し付けられた子供は、弱さを親に見せられなくなってしまう。
タイラーが自分の弱さを見せた唯一の相手が、妹だったのが切なかったな。

私は、親に過度な期待を受けたことがないので、どちらかというと妹のエミリーの気持ちに寄り添って見ていました。

エミリーは、父の異常なまでの重圧を受ける兄の苦悩を見て育ってきているので、人の気持ちに敏感な心優しい少女に育ちました。

けれども決して弱くはない。筋骨隆々のタイラーより、か細いエミリーの方が、ずっと強い心を持っています。

誹謗中傷が書き込まれた自分のSNSを、バッサリと削除してしまうところに、彼女のたくましさを感じました。

生きづらくなるくらいならSNSをバッサリと切り捨てる。

そういう新たな強さの概念が、2020年代には必要なのかもしれません。



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