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第94回アカデミー賞の主要部門を予想してみた。【2022】

明日(3月28日)に開催されるアカデミー賞受賞式に先駆けて、主要部門の受賞者予想をしてみたいと思います。
予想ってあんまり意味ないなーと思いつつも、あれこれ考えるのが楽しいので、超個人的な趣味みたいなものです。
なぜ選んだかのポイントも書いておくことにします。
まずは、10作品中9作鑑賞済みで、予想しやすかった作品賞から語ります!

作品賞

候補10作品
『ベルファスト』『コーダ あいのうた』『ドント・ルック・アップ』
『ドライブ・マイ・カー』『DUNE デューン 砂の惑星』
『ドリームプラン』『リコリス・ピザ』『ナイトメア・アリー』
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』『ウエスト・サイド・ストーリー』

【予想】『ベルファスト』

アカデミー会員による決選投票は、3月17日から22日に行われています。
投票には社会情勢が密接に関わってくるので、ロシアのウクライナへの軍事侵攻の影響は、オスカーの行方にも多大に影響すると思われます。

現在のハリウッドでは、人権を踏みにじることに絶対的なNOを掲げているので、「日常生活を軍事力によって突然奪われる」という理不尽に、反対を表明したいという思いが投票者の中にあると思うんですよ。
そうなると、紛争によって日常の生活を脅かされてしま家族を描いた『ベルファスト』に投票が集まると思います。

日本でも25日(金)に公開されたので早速鑑賞してきました。
日常生活に紛争がはいってきてしまっても、学校に行き、仕事も続けなくてはいけない。生活があるのでそれを守らなければいけないということを、紛争の映像を見て改めて知ったわけですが、映画でもまさに同じような状況の一家が主人公なので、結果的に時制にぴったりの映画でした。
かといって悲劇的に描くのではなくて、子供の視点でコミカルに、ちょっと切なく家族や友人との関係性を描写しているところに共感が持てる映画です。
家族の物語でもあり、少年の希望の物語でもあり、映画やコミックなど「文化」が、人間にとって必要な栄養素であるということを再確認させていくれる、そういった意味でも「映画の力」を感じさせる作品です。

もし、現実の世界で戦争が行われていなかったら、『コーダあいのうた』もしくは、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のどちらかだったかもしれません。
個人的には、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は、3回も鑑賞している好きな映画なので、Netflix映画初の作品賞を獲得してもらいたいなとも思っています。

【主演女優賞】

【候補5名】
ジェシカ・チャスティン『タミー・フェイの瞳』
オリヴィア・コールマン『ロスト・ドーター』
ペネロペ・クルス『Parallel Mothers(原題)』
ニコール・キッドマン『愛すべき夫妻の秘密』
クリステン・スチュワート『スペンサー』

【予想】ジェシカ・チャスティン『タミー・フェイの瞳』

日本未公開の『スペンサー』と『Parallel Mothers(原題)』は鑑賞していません。
クリステン・スチュワートの演技を見てから予想したかったという思いもありますが、現地での評判などを含めて考えてみました。

個人的には、「オリヴィア・コールマンの素晴らしさが止まらないな」と思っていて、Netflix映画『ロスト・ドーター』は、オリヴィアを2時間堪能できて大満足の作品でした。
オリヴィアは、現在40代ですが、これから年を重ねるごとに、新たな魅力が引き出されて行きそうで、ジュディ・デンチのような古典からコメディまでこなせる存在になっていくのでしょうね。
オリヴィアの大ファンなので、もし私が投票するなら彼女に1票いれます。

ではなぜ、ジェシカ・チャスティンを選んだのかというと、ラストシーンでのパフォーマンスの素晴らしさをあげておきたいです。
タミー・フェイというのは、実在の人物で、キリスト教伝道番組の人気パーソナリティだった人物。
聖人というわけではなくて、資金の運用とか不透明な部分も多々あるのですが、タミーの歌う賛美歌は、パフォーマンスとして素晴らしいのです。
タミーの歌を聴いて彼女が運営するキリスト教クラブの会員になるひとが多発するほどに魅力的でした。
ジェシカ・チャスティンは、特殊メイクを含むメイクアップを施してタミーを演じていて、もともと全く違う顔立ちではあるのですが、声の発し方や笑い方など、本人を研究し尽くした演技を見せています。
最後に歌うのは、「The Battle Hymn of the Republic」というアメリカ賛歌なのですが、「グローリ、グロリ、ハレルーヤ」とセリフを交えて歌い上げるシーンで、星条旗まで登場し、アメリカ国民ではない私でも、ちょっと感動してしまうというか、タミーのもっていたパフォーマンスの力を、チャスティンが見事に再現していたシーンだったなぁと。
このラストをみて、主演女優賞を獲得するんじゃないかと思いました。
このシーンで、「アメリカに生まれてよかった」と感じた人は、ジェシカに投票すると思います。
また、ジェシカ・チャスティンは、今回で3度めのオスカー候補ということで、「頃合いなんじゃないかな」という気がします。

【主演男優賞】


【候補5名】
ハビエル・バルデム『愛すべき夫妻の秘密』
ベネディクト・カンバーバッチ『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
アンドリュー・ガーフィールド『tick, tick…BOOM! チック、チック…ブーン!』
ウィル・スミス『ドリームプラン』
デンゼル・ワシントン『マクベス』

【予想】ウィル・スミス『ドリームプラン』

アカデミー賞の前哨戦と言われる賞は、たくさんあるのですが、昨年末から今年始めにかけて、多数の賞で西島秀俊さんが主演男優賞を獲得していたので、アカデミー賞にもノミネートされるんじゃないかと期待していたのですが、結果的には残念でした。
個人的には、ハビエル・バルデムの『愛すべき夫妻の秘密』での夫役は、主演男優賞にノミネートされるほどの役柄かどうか微妙だと思うのですが、ラテン系枠で滑り込んだのかもしれません。アジア系枠は、まだまだ弱いですね。

前哨戦で、一番主演男優賞を獲得しているのがウィル・スミスです。
『ドリームプラン』では、世界的テニスプレイヤーウィリアムズ姉妹の父親であるリチャードをウィルが演じています。
二人の娘をプロテニス選手に育てるために、独自の練習法や売り込み方法を考えていくリチャードを、体重を増量して役作りをして演じています。
ウィリアムズ姉妹は、裕福ではない家庭環境で育ち、上流の白人社会だったテニスの世界で、黒人として頂点に上り詰めた伝説のテニスプレイヤーで、まさにアメリカンドリームを掴んだ人物です。
ウィル・スミスも、俳優として大成した黒人のヒーローなので、彼に主演男優賞を取ってもらいたいと思う投票者が多いと思います。

個人的な意見としては、アンドリュー・ガーフィールドも良かったのですが、なんといってもベネディクト・カンバーバッチが最高でした。
今まで、「なんでこんなに人気があるのだろう」と思うくらいベネ様に興味がなかったのですが、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を見て以来、すっかりファンになってしまいました。

【助演女優賞】


【候補5名】
ジェシー・バックリー『ロスト・ドーター』
アリアナ・デボーズ『ウエスト・サイド・ストーリー』
ジュディ・デンチ『ベルファスト』
キルスティン・ダンスト『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
アーンジャニュー・エリス『ドリームプラン』

【予想】アリアナ・デボーズ『ウエスト・サイド・ストーリー』

今回の助演女優賞は、アリアナ・デボーズでほぼ確定なんじゃないかと思ってます。
『ウエスト・サイド・ストーリー』は、出演者の皆さん全て素晴らしかったのですが、特にアニータ役のアリアナが素晴らしかったです。
ミュージカル映画なので、歌も、ダンスも、演技もこなさなければならないのですが、歌はもちろん素晴らしいのですが、優しい部分と怒りが爆発する部分の落差の見せ方が情熱的でした。

『ベルファスト』では、分数にしたら短い登場時間のジュディ・デンチですが、私は彼女の役柄に一番感情移入して鑑賞していました。さすがの存在感です。
キルスティン・ダンストも大好きな女優さんですが、息子との関係性をもう少し見せるシーンが増えていたら、オスカーに絡んできたんじゃないかと、ちょっと残念です。

【助演男優賞】

【候補5名】
キアラン・ハインズ『ベルファスト』
トロイ・コッツアー『コーダ あいのうた』
ジェシー・プレモンス『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
コディ・スミット=マクフィー『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
J・K・シモンズ『愛すべき夫妻の秘密』

【予想】トロイ・コッツアー『コーダ あいのうた』

今回の主要部門では、この助演男優賞が一番激戦だと思います。
特に、キアラン・ハインズ、トロイ・コッツアー、コディ・スミット=マクフィーは、だれが獲得してもおかしくないので投票が割れて、僅差の受賞になると思います。
おととい、『ベルファスト』を鑑賞するまでは、トロイとコディの対決かと考えていましたが、予想以上にキアランが良かったので、この時点でもまだ迷います。

投票者も、同じような気持ちだと想像するので、「私がもし一票いれるとしたら…….」と考えてみました。
コディ・スミット=マクフィーは、ほんとうに素晴らしい才能をもっている俳優です。サイコパスっぽい人物を演じた『モールス』のときが14歳、今後も演技派俳優としてオファーが耐えない存在になることでしょう。ただ、現在25歳と若く、今後チャンスもまだまだたくさんあると思うので、申し訳ないけど今回は外すことにします。
となると、トロイとキアランですが、迷うな。
うーんでも、やはり、ろうあの俳優として二人目の主演賞を獲得して、妻役ですでに主演女優賞をとったことのあるマーリー・マトリンとのハグを見たいので、トロイ・コッツアーにしようと思います。

ちょっと長くなっちゃったので、以下は端的に記入していきます。

【国際長編映画賞】

【予想】『ドライブ・マイ・カー』(日本)
ぜひとも『ドライブ・マイ・カー』にオスカーを持ち帰ってもらいたい。獲得すれば『おくりびと』(2008)以来ですね。
個人的には、『ブータン山の教室』(ブータン)も好きでした。『The Worst Person in the World』は、『わたしは最悪。』というタイトルで7月1日劇場公開されます。早く観たい。

【候補5作】
『ドライブ・マイ・カー』(日本)
『FLEE』(デンマーク)
『The Hand of God 』(イタリア)
『ブータン山の教室』(ブータン)
『The Worst Person in the World (原題)』(ノルウェー)

【監督賞】DIRECTING

予想】ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

正直、『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督の可能性も高いとおもうんですよね。脚色賞とテレコになるかもしれません。ケネス・ブラナーも強いけど、どうでしょうか。『リコリス・ピザ』早く鑑賞したいです。

【候補5名】
ケネス・ブラナー『ベルファスト』
濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』
ポール・トーマス・アンダーソン『リコリス・ピザ』
ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
スティーヴン・スピルバーグ『ウエスト・サイド・ストーリー』

【脚本賞】WRITING (ORIGINAL SCREENPLAY)

【予想】アダム・マッケイ、story byアダム・マッケイ&デビッド・シロタ『ドント・ルック・アップ』

『ベルファスト』も、完璧な脚本だと思うのですが、『ドント・ルック・アップ』は、こんなに情報社会なのに、「情報を提供しても人々は現実を観ない」という恐ろしい現況をコミカルにまとめている、目の付け所が面白い脚本だと思いました。
オリジナル脚本賞なので、投票者もそういうクリエイションの部分を観てくるんじゃないかな?と思うのですが。

【候補5組】
ケネス・ブラナー『ベルファスト』
アダム・マッケイ、story byアダム・マッケイ&デビッド・シロタ『ドント・ルック・アップ』
ザック・ベイリン『ドリームプラン』
ポール・トーマス・アンダーソン『リコリス・ピザ』
エスキル・フォクト、ヨアヒム・トリアー『The Worst Person in the World』

【脚色賞】WRITING (ADAPTED SCREENPLAY)

【予想】シアン・ヘダー『コーダ あいのうた』

脚色賞も大接戦のカテゴリーです。
個人的には圧倒的に『ドライブ・マイ・カー』一択なのですが、投票者は村上春樹の原作までは読んでいないと思うんですよね。
原作を読んだのですが、「女のいない男たち」の中の数本の短編と、チェーホフの戯曲「ワーニャおじさん」を組み合わせるという、壮大な脚本です。原作の雰囲気を壊さずに、エッセンスを抽出しているのですが、その組み合わせ方がドラマティックかつエンターティンメントでした。この脚本執筆力は、私が言うのもなんですが、たしかに世界レベルです。
投票者が原作も読んでいれば、票があつまると思うのですが。

ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』も、意外な脚本でしたが、監督賞を受賞すると思うので、ここでは外しました。
シアン・ヘダー監督の『コーダ あいのうた』は、フランスの映画『エール!』(2014)のリメイクです。
すでにある映画から新たに脚本を作るのですが、原作の核の部分をのこしつつ、ハリウッドらしさと、女性的な温かいまなざしを加えていて、より感動が増しているお手本のような脚色だと感じます。
今回作品賞にノミネートされている10作品中、4作がリメイクなんですよね。今後、さらにリメイクは増えると思うので、リメイクだからといって、オスカーを獲得できないということはないと思ってます。
うーんでも、『ドライブ・マイ・カー』にしとけばよかったかな。

【候補5組】
シアン・ヘダー『コーダ あいのうた』
濱口竜介、大江崇允『ドライブ・マイ・カー』
ジョン・スペイツ、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、エリック・ロス『DUNE デューン 砂の惑星』
マギー・ギレンホール『ロスト・ドーター』
ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

以上です。
明日の授賞式が楽しみです。
明日は、「なにみるマガジン」で、ライブで記事を更新していきます!





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