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誰もが価値がないと思うものにこそ価値を見出す人

西村組という人たちが神戸に居る。

神戸に組がつく団体が居ると書くと何やら物騒に感じてしまう気配があるが、そういう組ではなくて、西村組は価値がないと判断された家(以下廃屋を)を買ったりもらったりして修繕して価値ある物件に作り直すことをしてる人たち。なぜ西村組という名前なのかと言うと、その活動を始めたのが西村周治さんだから。

たぶん私の拙い説明よりも、この動画を見た方が理解しやすい。

中学生の頃に父親が気まぐれで買ってきた家を直して作った成功体験。バイクの事故で生死を彷徨った末にやりたいことで生きようと覚悟。お金が無くて社会活動をしていた先輩から廃屋を紹介してもらって修繕しながら愉快に暮らした時期など、様々な西村さんの体験から自然な流れで動いている今がある。現在は合同会社廃屋という会社として活動。

そんな風に活動している人が神戸に居ることは耳にしていたし、知人が現場を手伝っているのをSNSで見ていた。西村さんのTEDの動画が面白くて何回も見た。去年の10月末に須磨の海岸で行われたFARM to FOLKでは西村組による「廃屋から出てきた家具展」が行われていて、こっそり西村さんを確認した。西村さんは「生産的なことをしたくない!」と言いながら砂浜をシャベルで掘っていた。


インスタレーションみたいになってた
斬新
作品の一部になってみた
売って欲しい値段で売っていました

ちなみに私はこんなものを買った。どうやら宮城にある塩龜神社のことのようです。神戸の方が何で持ってたんだろう?

宮城にある塩龜神社だそうです

かなりのお屋敷にあったものだと察する。どんな人の持ち物だったのか想像が膨らむし、何なら宮城の塩龜神社に行ってあの掛軸をお渡ししたい。

面白い人だなぁと密かにFacebookで西村さんをフォローしていたある日、とても興味深い投稿を見かけた。



空き家化問題についてできること考えた・・長いよ

全国の空き家数は2018年時点で846万戸(平成30年住宅・土地統計調査より)そのうち50.9%は賃貸住宅という現状。なぜ賃貸住宅が空き家化しているのか?

1.相続税対策として新築賃貸住宅、路線価と実勢価格の乖離現象

新築賃貸住宅を相続させることで、建物・土地の評価額を実態より安価にし、相続税の減額を得られるということが問題。路線価と、実勢価格が乖離していて、もはや路線価の意味ないと思うのは僕だけだろうか。逆に田舎の実勢価格と路線価は逆転がおきていて、固定資産税がバカ高いのに、実勢価格は激安ということで不動産をもつと負動産化する現象がおきている

2.新築賃貸住宅に、低金利長期融資が得られる
日本特有とも言える耐用年数という考え方で、新築であれば長期間借り入れができしかも低金利。長期借り入れできればどんなクソ物件でもキャッシュフローが生まれるので、安価に建築して高利回り、そしてある程度賃貸で回したら、下流に売却という流れが生まれている。この流れの中では、新築することが利益をあげられるということになっているので、不必要な新築賃貸住宅は止められない。よくある不動産投資家が安価にチープな建物で高利回り、下流に高値で売却してわーいやったというクソ展開をよくみる。

いずれも、新築を建てるということが、キャッシュを生む源泉となっており、銀行がそれを後押ししている現状がある。

銀行の新築融資(特に田舎での新築)をシビアにしていけば、将来起きる空き家はもっと少なくなるだろうと思うが、もはや国内に多すぎる銀行が利益を生むには不動産に融資しないわけにはいかない現状もあるので、不動産に対して融資をするのであれば、耐用年数という考え方を見直し、今ある資産築古不動産への融資促進を図ることができたら、空き家問題解決につながっていくはず。

他にも・・
賃貸だけでなく、不動産屋が大きな敷地に建てられた建物を取り壊し、細切れにして複数棟を建てて、新築がアメーバ増殖していく問題、とか市街地にタワマン、世帯数が無限増殖問題など空き家を生む原因は、現状をみても多方面にありすぎて将来間違いなく、来年くらいから高速で、不動産が無価値化、むしろマイナス資産になっていくのは目に見えてる

あれなんの話やったかな、あそうそう、こうなったらいいなと思うことは、

銀行はもっと社会的に必要な事業に融資しよう
築古不動産を評価しよう(事業性をふまえて空き家という資産に投資)しよう、もう資産家の新築賃貸アパートなんかで、しょうもない金利商売で稼いだらあかんで。耐用年数撤廃して多角的な評価必要

税務署はシンプルにいこう

公示価格、相続税評価額、固定資産税評価額とかばらばらに評価せんでええねん、実勢価格にすべて合わせたらええがな。余計な仕事ばっかせんでええシンプルいずベスト。また耐用年数という考えもうやめよう。耐用年数は管理状態がよければいくらでものばすことできるんちゃうかな、多角的な評価必要では

不動産屋は、不動産情報を全てオープンに開示しよう

もう不動産屋は水面下で取引される情報が多すぎて、あまりにも古い建物をぞんざいに扱いすぎるので、不動産物件は全てオープンにするようにしたらいい。不動産業界がクソすぎるので、水面下で取引される物件が多すぎる。海外じゃありえない、日本特有ともいえるのでは

国は、全国の0円〜100万円物件サイトをつくろう

民間や地方バラバラの空き家バンクが0円や安価な物件を扱わされているが、本来は国や市が、全国の情報をオープンに開示してみんなにみてもらえる機会をつくれば、地方の空き家はスピーディーに市場に流れていくんじゃないか。全国の空き家バンクを一本化して、公の機関が公開することが必要じゃないか。民間の不動産屋さんは安価な物件は取り扱わないので、公の力が必要

どうでしょうか、皆様ご意見ください!


めちゃくちゃ共感した。私自身が祖父母の家に住んでおり、今は両親と住んでいるがひとりになった時に経済的に相続できるのか?等の不安もあった為、思わずこんなコメントをした。


まだお会いしたことはありませんが、一方的にフォローさせていただいてます。

神戸の垂水に住んでいますが、高齢化で古くからある素敵なお家が家主が居なくなるとどんどん取り壊されて新築の家が建つ事に疑問を持っていました。

相続税が高いからなのか?と思っていましたが、近隣にある桜が綺麗なお屋敷が無くなる際に、何本もあった桜もぶった切って11軒の新築の家が建った時は悲しかった。

うちも築60年近い家なのですが、大好きな家なので残して住みたいけど両親が亡くなった際に相続税が支払えるか?という問題を抱えてます。

何かモヤモヤとしていた事や、何か歪んでるなと思っていた事がハッキリ見えた気がします。

本来はそうであってほしい事ばかり。


私の書き込まずにはいられなかったコメントに対して西村さんはこんな風に返してくれた。

「立派でとても価値ある建物も、小分けに分譲されていく残念な風景が多く見られます。市場原理としてしかたないですが、そこに本質的な価値がないものが多いので、そこがうまく価値のあるものに世代交代していけたらと単純に思ってます。」

嬉しかった。本当にずっとモヤモヤしていたのだ。コメントに書いた邸宅はとある企業の会長のご自宅で、生前はお抱え運転手が車の手入れをする姿が微笑ましく、塀の外から伺える広い庭の灯篭や休憩小屋に桜並木は美しく、一度でいいからお庭を見てみたかった。そんな密かな願いは虚しく、桜は伐採され、お屋敷は取り壊されて11軒の新築の家が建った。

また近所にある大企業が作っていた寮も今年から取り壊され、敷地にあった桜や松の木が切り倒された。そろそろ桜が咲く頃の手前に無残に桜が切り倒された。

更地にして何が建つのだろう

そことは別の場所でもどんどん家が建つ。すごい勢いで、すごい速さで家が建っては入居していく。

新築バブルのようなその光景を見ていると何だか気持ち悪くなる。何かわからないけど気持ち悪い。モヤモヤする。

そんな時期にたまたま西村組の方に知り合った。旧丸山温泉の風呂市風呂座というイベントで貸本屋をしている人が居た。イベント中に読み切れる漫画をセレクトして並べ、本当にオススメしたい本をこの場で貸して読んでもらうスタイルや価値観が素晴らしいなと思いながら話していたら西村組の方だった。

実は知人と見学行きたいねと話していたけれど、いきなり見学に行くのはハードルが高かった。だけど西村組の方に知り合えたことで行きやすくなった気がして早速見学を申し込んで現場に訪れた。


一軒の現場を工事していたら周辺一帯を譲り受けたので村にするという試み
穴を掘るだけのイベントがありました
外観はほぼそのままに
必要な部分を補修
お家の中はとってもオシャレ


古いお家の外観はほぼそのまま。必要なところを補修し、室内は新築のような美しさ。資材はほぼ廃材を使っているという。軽トラも入らないような場所にある為、リヤカーを使って資材を運びながら作業をしているとのこと。

特に気になったのはお茶室。

床を様々な形の角材で
神戸の町並みや海が見える景観
もともと離れのお茶室だった場所だそうです
女性も作業していました

もともと大きなお屋敷の離れにあったお茶室。高台なので窓から神戸の町並みや海が見えて裏は竹藪。廃れたお茶室が新たな息を吹き返していくようだった。

ギャラリーもある。

門のような松がかっこいい
櫻井類とオマルトヴェンザーの組体操という作品展が会期中でした
アーティストが滞在制作できるようにアートインレジデンスがあります

会期中は櫻井類とオマルトヴェンザーの組体操という作品展が会期中でしたが、作家の櫻井さんも西村組の現場に参加されていた。梅村にはアーティストが滞在制作できるアートインレジデンスも。

変わった窓ガラスの使い方をしてるなと思ったら、いただいた窓ガラスのサイズによって使い方が変わり、資材を活かした設計をしているそう。

現場を見学して、正直これではいつまで経っても作業が終わらない気もしたけれど、何だか子どもの頃に夢中になって砂場で何かを作っていた感覚に近い気がした。ある意味毎日冒険みたいだなぁと思ったし、大変なことは多いだろうけど、きっとそれが楽しいのだろうな。

西村組は数年で解散するという話も聞くし、従業員をたくさん雇うのではなく、個人事業主として集まった人たちが作業する現場だという話も聞く。それはたぶん、会社を大きくするとか、西村さん自身の影響力を高めたいのではなく、関わる人たちが自分でできることをしていってほしいということなんじゃないかと思う。

影響力がある誰かについて行くのではなく、ひとりひとりに力があることを知り、その人が取り組みたい形を見つけて勝手にやっていくことをしてほしいんじゃないかな。その人の価値を見出していくように。

誰も価値を見出せない物件を引き受け、多様な生き方をしてる人と一緒に現場を手掛ける西村さんこそ、本物の極道な気がする。極道の本当の意味を知れば、西村組は本物の極道だって分かる。

極道(ごくどう)とは、本来仏教用語で仏法の道を極めた者という意味であり、高僧に対し極道者(ごくどうしゃ)と称し肯定的な意味を指すものである[要出典]。しかし、江戸時代より侠客(弱いものを助け、強い者を挫く)を極めた人物を称える時に『極道者』と称した事から、博徒(ばくちで生計を立てる者)までも極道と称する様になった。そのため、本来の意味を外れ道楽を尽くしている者、ならず者暴力団員と同義語で使われる逆の意味で使用される事が多くなった。

Wikipediaより

そんな西村組が手掛ける村、梅村(バイソン)が2023年5月6日に村開きをするそうです。気になっていた方は見学に行くチャンス。私も行きます。



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