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コミュニティマーケティング成功の秘策は「掛け算」にあり?

コミュニティマーケティングについて考える非営利のコミュニティ「CMC_Meetup」。ビジネスコミュニティの立ち上げや運営などに興味のある人なら誰でも参加でき、随時イベントを開催しています。

今回お届けするのは、CMC_Meetupが5月11日に開催したイベント「コミュニティを『掛け算』にする仕組みを考える」の様子です。当日の会場は、スタッフが圧倒されるほど参加者の熱気に包まれました。


ファンをコミュニティ化するマーケティング手法

「コミュニティマーケティング」という考え方をご存知でしょうか。

CMC_Meetupを主宰するパラレルマーケターの小島英揮さんの著書『ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング』では、「『ファン』といえる人たちをコミュニティ化することによって、新たな顧客を獲得していく、という戦略」と説明しています。

おそらく多くの人は、自分の好きな商品やサービスについて、同じ嗜好を持つ仲間と会話して理解を深めたり、これから興味を持ってくれそうな人に熱っぽく話して薦めたりしたことがあるのではないでしょうか。

コミュニティマーケティングでは、こうした行動を事業の発展のために業務として有効に活用すべく、意図的に促す仕組み作りが重要になってきます。

今回のイベントでは、そんなコミュニティマーケティングを実践する企業担当者が登壇し、コミュニティを運用する上での重要なポイントや、成功事例などを紹介しました。

コミュニティマーケティングで重要なこととは?

イベントに来てまず驚いたのは、あふれんばかりの熱気!

すでに26回目の開催となる人気イベントということもあってか、参加者がしっかりとイベントのファンになっていて、この集まり自体が良質なコミュニティ活動の一環になっていることを感じます。

イベントは前出の小島さんにより、今回のテーマ「コミュニティ×マーケティング」に関する頭の整理からスタートしました。

コミュニティはマーケティングにとても有効、というのは多くの人が「何となく」感じていますが、きちんとビジネスに落とし込んで継続させていく部分が抜けてしまいがちであり、そんな失敗を防ぐための重要なポイントとして、小島さんは「掛け算」の重要性を提唱しました。

例えばコミュニティ活動の中から成功事例を持つ顧客を抽出し、その方にイベントで登壇してもらったり、導入事例を取材させてもらったりすると、コミュニティ発の熱量を様々なところに伝搬させることができ、これがコミュニティにおける「掛け算」になるそうです。

小島さんは「顧客獲得、顧客理解、顧客育成、それぞれをバラバラでやるのはもったいない。コミュニティでやるべきです」とコミュニティの重要性を指摘し、コミュニティと様々な施策を「掛け算」させることにより、コミュニティの本当の威力を感じることができると語りました。

なぜ「掛け算」が必要なのか

続いてのセッションでは「コミュニティ×マーケティング施策の掛け算実装例」がテーマでした。

1人目の登壇者はアドビの松井真理子さん(DXインターナショナルマーケティング部フィールドマーケティングマネージャー)。松井さんはもともとアドビ製品のユーザーで、コミュニティにも参加していたところ、いつの間にか中の人側に回っていた……という人物です。

現在はアドビのDX製品全般を担当しながら、ユーザーを集めたイベント(ユーザー総会)と相互質問・解決の場としてのオンラインコミュニティ活動を中心にコミュニティ活動をしています。

2人目の登壇者はウイングアーク1stの河村 雅代さん(マーケティング本部 nest企画室室長)。同社ではユーザーを成功に導く活動を「nest(ネスト)」と呼んでいて、その一環でコミュニティ活動をしています。

そのコミュニティでは、ユーザーのお悩み解決率が実に95%にも達しました。nestのポータルサイトに質問が投稿されると、ユーザーが我先にと回答するような文化があり、最近では製品の枠を超えて業種固有の課題まで解決した事例が出てきているそうです。

この2人に、小島さんが「そもそも、なぜコミュニティには掛け算が必要なのでしょうか?」と問いかけました。

河村さん「3〜4年コミュニティをやっていると、コミュニティが事業にとって何の成長要素になるのかは必ず聞かれます(会場のみなさんも激しく頷く)。この問いの答えこそ、掛け算です。コミュニティは、閉ざされた世界ではなく、その先の世界に伝播させて初めて答えが出ます。例えばコミュニティの中で知られている有名な成功事例があったとして、それを事例集という形でアウトプットすることで、初めて成果としてカウントできるのです」

松井さん「お客様は、成功しているユーザーが何をどう使っているのか、ソリューションを知りたがりますよね。そこでコミュニティを活用したいわけですが、コミュニティが盛り上がっているだけでは、成功ユーザーは生まれません。きちんと広げていく仕掛け作りが重要です。そこがないと、コミュニティをやっている理由がチャーン(解約)を防ぐためだけになってしまいます」

コミュニティには戦略が重要であり、どうやったらユーザーから成功事例が生まれ、どうやったらアウトプットに導けるのか。このあたりをしっかりと考えることで、成果につながるコミュニティマーケティングが実践できそうです。

「掛け算」の実例を知りたい!

ここで気になるのは、実際にどういった掛け算が有効なのかという「実例」です。

松井さん「例えばアドビのJapan Adobe Marketo Engage User Groupでは年2回、大規模開催しているユーザー総会に来てもらうだけでは活用が進まないと考え、いつでも相談できるオンラインコミュニティとオフラインの分科会を運営しています。ここでは、ユーザー同士が情報共有することで課題を解決しています。オンラインで解決できることはオンラインコミュニティで、オンラインでは投稿しづらい内容は属性やレベルに合わせた分科会で、それぞれ深い議論をしてもらっているのです。

一方で、私たちはコミュニティからChampionユーザーという、他のユーザーの手本になるようなユーザーを生み出すようにしています。彼らは、取材やインタビューなどへ露出することで、掛け算となるコミュニティを飛び出した活躍をしてくれています」

河村さん「nestでは、ユーザー×ユーザーが『掛け算』の連鎖を生むと考えています。営業をやっていると、自分がユーザーを一番理解していると思ってしまいがちです。しかしユーザー同士が掛け合わさったときに生まれる成長に、大きな価値があります。

そのため、nestではユーザー同士がより深い議論を行えるよう、ユーザー同士の相性や属性に気を配って、分科会を設置し、ユーザーセッションを実施しています。

ちなみに当社が行っているイベントにおいて、アンケートで満足度TOP10を算出したところ、全てのユーザーセッションがランクインしていました。コミュニティを運営していると、どこをノウハウ化したら良いのかが見えてきますし、カスタマーサクセスにも使ってもらえるネタを作り出せます」

どちらの事例でも、成功事例を持つスターユーザーにどう活躍してもらうか、コミュニティから生まれた知見をどう生かしていくかというのが、コミュニティとの掛け算では重要な要素になりそうです。

イベントを終えて

このほかにも株式会社カオナビの柏崎直人さん(カスタマーエンゲージメント本部 戦略推進部 部長)による、コミュニティを会社の中心に置く組織づくりの話や、それぞれのコミュニティ活動を紹介する5人のライトニングトーク(短時間のプレゼンテーション)などが行われ、熱気冷めやらぬうちにイベントは終了しました。帰路に着く参加者の「熱く濃い話を聞けた」と満足げな表情が印象的でした。

何より、みなさんのコミュニティの力を信じている雰囲気がとても素敵で、お互いに良い学びのあるこのイベント自体のファンになってしまうのも納得の空気感でした。

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