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女性マーケターは「自信がない」ことでキャリアアップのチャンスを失っている:Adobe Marketo Engage User Group

Adobe Marketo Engage User Group(通称MUG)は、マーケティングやマーケティングオートメーション「Adobe Marketo Engage」に関する知見やベストプラクティスについて意見交換しながら、互いの専門性を高め合い、ビジネスの成長を加速させるオープンなユーザーコミュニティです。

4月13日、MUGは「女性B2Bマーケターのキャリアを考える」と題したユーザー会を開催。他社マーケターとコミュニケーションしやすいよう、テーブルディスカッションを何度もはさみながらセッションを進めました。登壇者は、アドビでフィールドマーケティングマネージャーを担当している松井真理子さんです。

全てExcelで作業していた新人メールマーケター時代

前半は、松井さんのこれまでのキャリア変遷を振り返りました。

今から20年ほど前に松井さんが新卒で就職した半導体商社では、作業のほとんどにExcelを活用していたそうです。会社の顧客データベースの名刺情報を手作業で更新したり、イベントなどで獲得した情報を元にExelのフィルター機能で振り分けたターゲット顧客にメールを送ったりと、地道に活動していました。

しかし社内からは「展示会の費用がなぜそんなにかかるの?」などと言われ、マーケティング担当としての評価がなかなか上がりませんでした。

松井さんは「メールマーケティングや展示会、セミナーがきっかけで、受注できた案件もあるはずなのに『これだけ収益に貢献しているんですよ』という説明ができなくて。手動で1件1件追えば、受注につながっているリードは見つかりましたが、手作業に限界を感じていました」と当時を振り返ります。

そして、もっとマーケティングについて広く学ぶ必要があると考え、グローバル展開しているセキュリティソフトウェア企業に転職しました。

スパルタ教育の同僚とグローバルプロジェクト立ち上げ

マーケティングに詳しい同僚が不在だった前職とは対照的に、転職先では「分からない用語が飛び交っていて、グローバル企業で海外の情報も入ってくるため、キャッチアップしなければという焦りがあった」と言います。

そんな中、松井さんに大きな影響を与えたのが、外資系企業でマーケティングの経験がある同僚でした。その同僚含め、チームで、マーケティング・オートメーション・プラットフォーム「Marketo(後のAdobe Marketo Engage)」のグローバル立ち上げを任されることになりました。

「同僚には『グローバルのMA(Marketing Automation:マーケティング活動を可視化及び自動化するツール)を立ち上げるなら、最低限知っておくべきこと』を、1から10まで教わったんです。人前で話すことについても鍛えられました」松井さんは言います。

プレゼンの内容から身振り手振りまで、「MAを全く知らない社員への伝え方」を叩き込まれたそうです。

初めてのMA立ち上げは社内にも利害関係者が多く、丁寧にコミュニケーションを取らなければ周囲を不安にさせる可能性がありました。そこで松井さんは、このプロジェクトで何を目指しており、結果的にどう改善できるのか。今、どこまで進んでいるのかを毎月、全社や営業組織向けの説明会を開催しました。

松井さんがマーケターとして成長するために学んだこと
・経験で判断しない
・考える癖をつける、アイデアはメモを取る
・社内発表の場をうまく使う
・相手の立場に立って、誤解なく説明・コミュニケーションする
・マーケティングは学問、インプットなければアウトプットできない
・分からなくても1冊をじっくりではなく、複数の本を読むことで見えてくる
・どんなに時間なくても、時間は作れる
・誰かをサポートするにしても自身のレベルが上がらなければサポートできない
・顧客と真剣に向き合える環境を作る

7年目も後半になった頃、営業部もMAの成果を認めるようになりました。そのタイミングで転職の機会があり、アドビへ。松井さんは自身の転職経験をこのように振り返ります。

「MAを社内で導入し、プロジェクトが回せる経験とスキルは、市場でかなり求められていることが分かりました。皆さんもいま在籍している会社でしっかり成果を出し、認められる存在になってください」

人の上に立たなくても、リーダーシップは発揮できる

セミナー後半は、「女性のリーダーシップ」がテーマ。

松井さんは子どもの頃に学級委員長などをやらされた時の苦い思い出から、自分には「リーダー」は向いていないと思っていました。しかし今では、その考えは誤りだったかもしれないと感じています。

その理由として松井さんは「リーダーは人の上に立ってメンバーを従え、取りまとめる人だと思っていたけれど、最近は上下の関係ではなく『横のつながりや関係の中で、みんなを先導していける人』がリーダーではないか、と感じているからです」と話し、男女のリーダーに関するいくつかのスライドを紹介しました。

こちらは入社時は男女が同じ割合なのに、リーダーという立場を通して見てみると、職位が上へ行くほど、女性の割合が減っていくという図です。

出典:The Dream Collective イマージングリーダーズプログラム資料

残念ながらこのスライドにあるように、日本の女性が、リーダー的役職において占める割合が低い状況は、今も変わっていません。

女性は「自信がない」ことによってチャンスを失っている

出典:The Dream Collective イマージングリーダーズプログラム資料

こちらのスライドは、2つの事実をグラフで表しています。

上の段:転職の際に求められるジョブスペックに対して、女性は90%を満たさないと応募しない。男性は60%で応募する
下の段:男性の69%は賃金交渉するが、女性は7%しか交渉しない

つまり、女性の多くは常に自己不信に陥っており、そもそも次のステージに進めない。松井さんは「女性は自分に自信が持てないことによってチャンスを失いがちなのです」と指摘しました。

自分が情熱を持っているビジョンを特定しよう

こうした経験から松井さんは「日本のデジタルマーケティングがグローバルの競争と戦える強さを持つ」というビジョンと、「B2B分野の女性の成長と活躍を支援する」というミッションを掲げています。

松井さんは自身のビジョンについて「世界各国の先進的なマーケターの話を聞くと、日本企業の弱さが見えてくることがあるのですが、デジタルマーケティングが強くなれば、日本企業はもっと元気になるし、もっと世界と戦えます。その強さと力をつけるため、自らができることをしたい」と語りました。

松井さんは、ビジョンをしっかり持つことで、日々の迷いも消えると語ります。

「仕事をしていると、理不尽なことも多々あると思います。そんな時もビジョンがあれば、その状況に捉われすぎず自分を見失わずに済む。だから自身のビジョンをしっかり持つということは、とても大切です」

また、ユーザー会で女性と話をする中で、女性には100%自信を持ってできると思えないと積極的に前へ出ない傾向があると実感するそうです。「私もそうだったのでよく分かるんです」と語った松井さんは、B2B業界における女性の成長も、実現したい未来として自らのミッションに掲げています。

パーソナルブランディングに大切なのは6割が「露出」

そして最後に「パーソナルブランディングの重要性」の説明がありました。

このスライドは、キャリアの成功を実現する要素として、「パフォーマンス」「イメージ」「露出」の3つを取り上げた「コールマンのPIE(パイ)パイセオリー」を図式化したもの。それぞれの重要度が「イメージ」30%、「パフォーマンス」10%、「露出」60%となっています。

「つまりパフォーマンスをいくら向上させても、『露出』がなければブランディングにはつながらないということ。みなさんも、さまざまな発表の機会を利用して、ご自身のブランディングにつなげてください」

思いを共有して生まれた一体感

「私でもマーケターとして活躍できる」という一体感が生まれた今回のユーザー会。会場の参加者からは「とても参考になり、励みになった」や「自分だけが自信がないわけはなかった、勇気をもらえた」という声などが寄せられました。

Adobe Marketo Engage User Groupでは、今後も未来ある女性マーケターを支援する企画を実施していく予定です。

松井真理子(まつい・まりこ)
B2Bマーケティング一筋で約20年。2013年にMAと出会い、施策の最適化を積み重ねることでB2Bマーケティングの重要性と影響力を示す。2020年3月、アドビに入社。デマンドジェネレーションからカスタマーマーケティングまで、Adobe Experience Cloud のマーケティング全般を担当。入社以来ユーザーコミュニティ活動に注力。

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