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Week 5-3 共感する脳

「マインドフルネスは自分への気づきを高め他人をより思いやることができるようになる。」といわれています。

現在の研究で、この理論は脳の変化によるものと説明がつく段階にきています。

Tania Singer氏は、自分の思いを理解することと他人への慈悲(コンパッション)の関係について極めて重要な研究結果を挙げました。

科学的研究結果のレビュー記事からの抜粋です。

『初期の研究結果から、感情の可塑性と脳のシステムの変化の関係を長期に渡って追跡することで極めて画期的な結果を得た。感情の可塑性には思いを理解する能力(共感力)、また、慈悲心(コンパッション)などのポジティブな感情が深く関係していること分かったのだ。現段階で、ポジティブな感情と報酬に関わる脳のエリア(島皮質、眼窩前頭皮質、腹側被蓋野)の機能的な活性領域の変化を関連づけることができる。従って、慈悲から発せられることにより起こる反応をトレーニングすることで、嫌な出来事(苦しみ)へのレジリアンスが高められるのである。ポジティブな感情、報酬、そして愛情に関連する脳内のネットワークを強化することによるものと考えられる。』

<参照>
Bernhardt, B. C., & Singer, T. (2012). The neural basis of empathy. Annual review of neuroscience, 35, 1-23. 

これは、非常に画期的な発見といえます。
 

慈悲に関係する脳の領域の中に、前頭前野があります。マインドフルネスのプラクティスは前頭前野を活性化するということをお伝えしました。この前頭前野は脳の統合に関わる分野です(Siegel, 2007)。

前頭前野の働きは数多くありますが、この領域の脳の可塑性が自分自身、そして他人との関わりにおいて果たす機能について、三つお伝えします。

「自分に関する知」機能: 他者との関わり合いの中で自分は何者であるかを理解する、そして社会的な状況を理解することができる機能(Beer, 2006)。今への気づきと過去の記憶に基づいて生み出される未来像が繋がることにより、自分に関する知が生み出される(Wood, 2005)。

「自分と他人の理解」機能: マインドフルネスによって、自分自身と調子を合わせる能力(気づき)が高まるほど、困難な時に他人に対してオープンな状態でいる能力が高められる(Siegel, 2007)。

「他者との共鳴、コミュニケーション」機能: 前頭前野はコミュニケーションにおいて、他者からの信号を読み取る能力を助け、情報を知らされたり、影響されることを可能にしている(Mah, 2005)。社会的に他者と繋がることが可能となっているのは、理解する能力が向上することができるから(Siegel, 2007)。

「脳は他人と繋がるために、実はそのために形作られている」

自分自身についてよく知る、そして、自分の心、体、感情がどのように働き合っているかについてよく知ることができてこそ、他者への理解が深まる。

友達にぬくもりを感じたり、他人との争いごとにも理解を示すことができるようになるのです。

全ては、自分への「気づき」から
 


<参照>
Beer, J.S., John, O.P., Donatella, S., & Knight, R. T. (2006). Orbitofrontal cortex and social behavior: Integrating self-monitoring and emotion-cognition interactions. Journal of Cognitive Neuroscience, 18, 871-879. [Summary]

Mah, L.W.Y, Arnold, M.C., & Grafman, J. (2005). Deficits in social knowledge following damage to ventromedial prefrontal cortex. J Neuropsychiatry & Clinical Neuroscience, 17, 66-74. [Summary]

Siegel, Daniel J. 2007. The Mindful Brain. New York: W.W. Norton & Company. [Link]
Wood, J.N., Knutson, K.M., & Grafman, J. (2005). Psychological structure and neural correlates of event knowledge. Cerebral Cortex, 15, 1155-1161. [Article]


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