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慢性痛と、心身二元論的思考の影響

今回は、ちょっと哲学的な話です。

心身二元論という考え方をご存じでしょうか。

慢性痛と心身二元論的思考には、
深い関係があります。

慢性痛は、腰痛や肩こりや膝痛や頭痛などが、
3か月以上つづいてしまう状態で、
病院で薬などの治療をしても有効性が認められないことが
多くあります。

一方で、心身二元論的思考とは、
心と身体を別々の存在として捉える考え方で、
歴史的にはフランスの哲学者デカルト(René Descartes)
の影響が大きいです。

心身二元論は、近代医学とその根底を支えた近代科学の発展に、
不可欠の思考です。
この考え方が医療や心理学に与えた影響は、
慢性痛の理解や治療においても重要な意味を持ちます。

今回は、慢性痛と心身二元論について考えます。


心身二元論と慢性痛

  1. 治療アプローチの分断

    • 身体と心の分離
      心身二元論的思考は、
      身体と心を別々に扱う傾向を強めました。
      これにより、慢性痛の治療も身体的なアプローチと
      心理的なアプローチに分離されがちです。

    • 薬物療法の偏重
      慢性痛の治療において、
      身体的な症状に対する薬物療法が優先されることが多く、
      心理的な要因の重要性が軽視される傾向があります。

  2. 心理的要因の軽視

    • 感情と痛みの関連
      心身二元論的思考では、
      感情やストレスが痛みに与える影響が
      軽視されがちです。
      しかし、慢性痛は、心理的ストレスや感情の影響を
      強く受けることが多く、これを無視すると
      効果的な治療が難しくなります。

  3. トラウマと痛み

    • 痛みとトラウマの関連性
      過去のトラウマや心理的ストレスが
      慢性痛に影響を与えるという研究も増えており、
      心と身体の相互関係を考慮したアプローチが
      求められています。

総合的視点と全人的アプローチの重要性

たとえ、心身二元論的思考に基づいてはいても、
その弊害を緩和する試みは現在医学の枠内でも
提唱され取り組まれています。

  • バイオサイコソーシャルモデル:
    慢性痛の治療において、
    バイオサイコソーシャルモデル(生物学的、心理学的、
    社会的要因を統合的に捉えるモデル)が提唱されており、
    心身二元論的思考を超えた全人的アプローチが重要視されています。

  • 多職種連携
    慢性痛の治療には、医師、心理士、理学療法士、作業療法士など、
    多職種の専門家が協力して患者を支援することが効果的とされます。

心身一元論的視点の重要性

さらに、心身二元論を超えるための、
心身一元論的視点に基づいたアプローチがあります。

  1. 統合的治療

    • マインドフルネス
      心身を一体として捉えるマインドフルネスや瞑想、
      ヨガなどのアプローチが慢性痛の管理に
      有効であることが多くの研究で示されています。

    • 身体的治療と心理的治療の統合
      身体的なリハビリテーションと心理療法を組み合わせることで、
      慢性痛の症状を効果的に軽減できるケースが増えています。

  2. 患者中心のケア

    • 全体像を捉える
      身体的な症状だけでなく、
      心理的、社会的な背景も含めて全体像を捉えることが重要です。
      これにより、より適切で個別化された治療が可能になります。

    • 情報提供
      心身の相互関係について情報提供を行い、
      自己管理の方法を教えることも有効です。

結論

近代科学と現代医学の発展に不可欠の
心身二元論的思考は、その発展とは裏腹に、
慢性痛の理解や治療において多くの制約をもたらしてきました。

しかし、心と身体を一体として捉える統合的なアプローチが、
慢性痛の効果的な管理と改善に重要であることが
明らかになってきています。

従って、心身一元論的な視点を持つことが、
その治療において有用であり、
全体的な健康と福祉を向上させるために重要と考えられます。

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