『三羽のカラス』

三羽のカラスは、いつも一緒に行動します。

一羽目は、電線に止まります。
道を見張って、誰かが来たら仲間に知らせるのです。

二羽目は、木に止まります。
畑を見渡せる場所に居て、猫が来ないかどうかを見張ります。

三羽目は、畑に降りて今日のごはんを探します。
一番危険な役目です。


一羽目のカラスが言いました。

「向こうで雀がおしゃべりしているよ。
 ぼくたちの方には来ないけれど、
 ずっとおしゃべりばかりして、
 ぼくには理解できないよ。」

二羽目のカラスが言いました。

「あら、誰かと話をするということは
 大事なことだわ。
 何も知らないということは、
 一番恐ろしくて残酷なことだもの。
 雀たちは早口で何を言っているのか
 解らないけれど、彼らの世界では、
 きっとなくてはならないものなのよ。」

三羽目のカラスが言いました。

「孤高というものが、一番勇敢だと
 おれは思うがね。
 雀みたいなのは、
 しゃべってばかりいて、
 孤高の気高さを知らないと思うよ。」

二羽目のカラスは言いました。

「彼らは気高さを知らないかもしれない
 けれど、
 きっと悲しみを知っているんだわ。
 だから、おしゃべりをしていなければ
 いられないのよ。

 あなたのように勇敢であることも、
 とても素敵だけれど、
 悲しみというのは、
 誰にも気付かれない、
 小さな美しい宝石みたいなものだと思う
 の。
 だから私は、そんな人の住む家のベランダ
 に止まりたくなる。」

その時、
三羽目のカラスは、
「カァー」と一声鳴いて、
二羽のカラスに食べ物があったことを知らせました。

意味があろうとなかろうと、
それは誰かが決めた意味。

今日のごはんをいただいて、
おれたちは明日のために眠ろう。

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