平間みなの

哲学したり小説書いたりしてる人。同じ名前で活動してた痕跡があるかもしれない、ハイパーグ…

平間みなの

哲学したり小説書いたりしてる人。同じ名前で活動してた痕跡があるかもしれない、ハイパーグラフィアの吹き溜まり。多趣味なので各方面に言及します。

最近の記事

国鉄(JR)青函航路・最後の乗客

 世の中には、意図して歴史の目撃者になろうとする人もいれば、偶然にそうなる人もいる。私の父は後者を体験した。  これはこの文章の筆者である娘が、父から聞き取った話である。 『国鉄(JR)青函航路・最後の乗客』  父は愛媛の造船所に、船の設計士として勤めていた。その傍ら、労働組合の世話役をもしていた。(その造船所は、今や巨大化した「今治造船」―通称「イマゾウ」ではないことを念のため記しておく)  ある時、労働組合関係の会合が札幌で行われることになり、組合代表として父が派遣さ

    • 【小説】相合傘(5)

      ※合間を見てまとめて下書きして順次投稿しているため、下書きのストックが切れた際はしばらく投稿が途切れることがあります、御了承ください。 *  コーヒーを嗜みながら話し合い、とりあえず一週間、次のような割り振りでやってみることになった。  朝起きて、雪の季節、雪が積もっていたらまず二人で雪かき。家主は朝食はパンを好むが、偶然にも僕も鎌谷も朝はトーストか菓子パンにコーヒーという習慣がついていたので、僕がパンと付け合わせを用意し、鎌谷がコーヒーを淹れる。  食後の片付けは交代制

      • 【小説】相合傘(4)

         僕はその日、翌日友人と会う約束をしていたので一度帰宅し、二日後に何日か泊まれる用意をして、再び彼女の家に向かった。両親には「清掃関係の企業のインターンシップ」だと伝え、一週間ほど滞在し、彼女が僕にしてほしいことの一通りをさらった。やはり彼女はお金持ちの良家の人らしい、安上がりだけれども時間のかかる在来線とバスの乗り継ぎではなく、遠慮なく新幹線を使いなさい、と、交通費や移動中にかかった食費などは彼女が全額持ってくれた。  だが、どうして女性ではなく、男性である僕を採用したのか

        • 【小説】相合傘(3)

           それ以上何も言えないまま、僕は開け放たれた扉から中に入った。いかにも別荘という感じの、広い空間が広がっていた。木の温もりが感じられる室内、天井には白いファンが取り付けられ、きちんと整えられた、いかにも高級そうな赤いラグの上の、ライトブラウンのソファーとテーブル。テーブルの上には、数センチほどの高さの小さく透明な花瓶に、黄色や赤の花が一輪、二輪。  用意された白いスリッパを履くと、先に上がっていた彼女は、カウンター付きの台所に向かっていた。にゃあ、とその方向から鳴き声がして、

        国鉄(JR)青函航路・最後の乗客

          【小説】相合傘(2)

          ――家政「夫」、か。  月給は普通か、最近は大卒の初任給より少しいいのかもしれない。仕事内容も、子供の頃から家の手伝いをよくしていた自分にとっては、難しいものではなさそうだ。特別に就きたい職業もないのだ、こんな仕事でもいいかもしれない。 ――話だけでも聞いてみるか。  もし、雇い主や仕事内容が自分に合わなかったら、また東京に戻って職探しをすればいい。時刻は午前十一時。これも何かの縁かもしれない、思い切ってまずは出る確率が高いであろう携帯電話にかけると、相手は三コールほどで電話

          【小説】相合傘(2)

          【小説】相合傘(1)

          まえがき。 思いつきで即興小説を書いてたのですが、 この時勢を反映しようとしたところ、 精神的にきつくなってしまいました。 そこで、思い切ってしまい込んでいた、 同人誌にもしていない話を、 ここに放り投げることにしました。 2020年初頭、 引きこもらざえない状況で、 狂ったように書いた大長編、その第一幕です。 こんな時代だからこそ、 物語の世界に逃げる時間も必要だと思うのです。 『相合傘』 平間みなの  中学生か高校生の頃、僕と同じような場面を経験した人も多いと思

          【小説】相合傘(1)

          【小説】夢現回廊 ep.2

           午前中はバス移動で、次の街―ミラノに着いて昼食を食べ、それから自由行動になった。この日は季節外れの暑さだった。美術館に寄った後、雑貨店に寄り、それから何か冷たいものが食べたいと話しながら歩いていると、たまたま入った脇道に、半屋外のジェラート屋があった。  そこでまた、夢を思い出してしまう。Kはあの夢を見たのだろうか。そして覚えているのだろうか。その前に僕の母が言い出した。 「あそこで何か食べましょ」 「いいよ」 「俺もいいですか」 「ええ、もちろん」  Kの様子を見たが、あ

          【小説】夢現回廊 ep.2

          八面六臂

          先程、ふと思い出した言葉。 少し前、とあるアニメのエピソードの名前にもなった四字熟語。 自分のことを「器用貧乏」だと例えてました。 文章を書くことが一番好きですが、それ以外の趣味もあまりにも多く。 読書はもちろん、ピアノ演奏、刺繍、ビーズワーク、乗り鉄、野球観戦、アロマ、紅茶、天体観測、等々。 ただ、それらにお金を使うばかりで、その逆は今やっているPC作業ぐらいで。 他に趣味ではないけれども、一応家事全般はこなせる。親の介護もしている。 「器用貧乏」って、「貧乏」と

          【小説】夢現回廊 ep.1

          ※昨日言っていた中編小説ではありません。 今日思いついてからの、書いて出しです。 更新は不定期になる(はず)です。 20X9年 10月  僕は母、そして友人Kの三人で、ツアーでイタリアにいた。父親は脳卒中からのリハビリに勤しんでいて、退院の許可も降りていたが、病気以前に多額の借金や不倫を起こした罰で、日本のリハビリ施設にに置いてきていた。  もっとも、僕は父に罰を与えることも、父に内緒でイタリアに行くことも反対していたが、母がそこを譲らなかったのである。反省させなければな

          【小説】夢現回廊 ep.1

          君は昨日のランチの雲丹クリームパスタの味を覚えているかね?

          そんな文言が一時間前に浮かびました。 これをタイトルにして、何か書かないといけないという激情に駆られました。 今時、情報発信の手段は様々ありますが、 昼間に食事を共にした母とnoteの話をしたのを思い出しました。 その昔、『二十歳の哲学者』というブログがありました。 実際に某大学の哲学科に通っている二十歳の人間の忘備録でした。 そこそこ読まれていたようですが、 年を重ねてブログタイトルを変えると、 面白くなくなったのか、急に見かけなくなりました。 そのブログを知っている人

          君は昨日のランチの雲丹クリームパスタの味を覚えているかね?