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【xbox】これぞインディーズゲーム!!【ROAD96】

映画のようなシーンはあるけど、映画をめざして作ってない。
広大なオープンワールドではないけど、コントローラにそえた指先ひとつでストーリーをぐわっと動かして登場人物の運命を狂わせ、良い楽曲にはスッと気持ちをつかまれる。

完璧ではない。でも掘り出し物。
うわー!珍しくておもしろいもん見つけた!これぞインディーズゲーム!!って作品だった。「ROAD96」というゲームは。僕がやったのはXBOX版。序盤の内容にふれます。

ROAD96を起動したプレイヤーは、全く説明のない状況で道路にほうりだされる。画面の左上に出てるのが体力と所持金らしいけど、それぐらいしかわからない。
並走する大男に話しかけられながら歩いていくと、やがてキャンパーの集団と出くわす。

車の上から声をかけてくれるのは、ただ座っているだけで絵になる少女、ゾーイ。
よそ者の主人公に、寝る場所を教えてくれてキャンプファイヤーを囲んで話をすることになる。眉にあるピアス、腕につけるトゲトゲのパンクファッション。なのにでかいトロンボーンを背負って旅をしている。邪魔になっても大切なものは手放さない強さを感じさせる。

自然だけど媚びない雰囲気がいい。彼女が出てくる場面は全部いい。
キャンプファイヤーを囲んでトロンボーンを吹かせてもらったり、あとで「四目ならべ」で遊ぶこともできる。ミニゲームがたくさんあるけど、オマケ要素ではなく親しくない人と打ち解けるきっかけとして使われている。

コマを落とす、日本でなじみのないタイプ

いたるところにラジカセが置いてあるが、勝手にスイッチを入れると、「逮捕される」と怒られる。
メディアは大統領に規制されていて、反体制派は海賊ラジオを流しているのだが、このときはそこまで分からなくていい。じんわり世界観がつかめてくる。
警察もメディアも支配している独裁者の国で、ほとんど身ひとつで国境を抜けて逃亡するのが目的だ。

もうひとり、関係ないけど印象的なのがテクノミュージックにあわせて踊る、別次元ダンスおじさん。

「龍が如く」「たけしの挑戦状」とか、日本の生活を描いたゲームにはカラオケが出てくるけど、海外のゲームでは「踊るかどうかを決める」場面がよくある。歌は唄うものじゃなくてノるもの。こういう小さいところに感覚の違いがでておもしろい。

キャンプの団体と別れると、主人公はまた徒歩かヒッチハイクかの選択を迫られる。
どの手段でも金か体力が減っていき、どの手段でも個性の強い面々の世話になる。

車内の場面が多いので、ミラー越しの表情が生きる

なにやら事件を起こそうとしている男の助手席だったり、バスに乗ったら口論に巻き込まれたり、出会いと別れを繰り返しながら、タイトルにある96号線の北端、国境にたどり着く。

「国境」の前には、大統領によって抑圧され、国外へ逃げたい若者たちが座りこみ、信用していいのかわからない大人たちが品定めしてくる。ここから、このゲームと国の怖さが牙をむく。

旅路で金を温存していたならワイロとして使えるし、体力が残っているなら転落者が出たばかりの山越えルートもある。トラックの荷台にまぎれた子供もいたようだ。
正解の選択肢が決まってるわけじゃない。
「ピンチだけど、ここで主人公が死んだら終わっちゃうから、どうにか助かる展開になるんだろう」そんな楽観論は通用しない。
国境に限らず、会話のチョイスひとつであっさり逮捕だ。本当の人生のようにあっけなく。

主人公の国境越えチャレンジが終わると、都合のいいようにニュースで報じられる。

そして、行方不明のティーンエイジャーの情報を求める画面から、「残機」みたいに選択するのは、ふたりめの主人公!
最後の目撃情報がつぎのスタート地点になる。

主人公の視点なので、プレイヤーが操作する若者がどんな姿かわからない。どんな過去があるのかもわからない。逮捕されればどこか知らない土地に連行される。

FPS(主観視点の撃ち合い)だと、主人公になりきる楽しさがあるけど、このゲームの主観視点は、姿すら与えられない少年少女が使い捨てられていくような不気味さがある。見えない主人公たちを通して脇役の人生が見えてくる、ひねりのきいた手法が新鮮で痺れた。

捜索中であることを黙ってもらうかわりにバイトしたり、独裁者の献金パーティーにもぐりこんだり、各主人公たちは出会うことはないけど、ひとりで国境を目指すことだけが共通している。

姿も個性も与えられずどんどん使い捨てられていかながら、運命を切り開こうとする若者たち。コミカルな場面と重いテーマが次々押し寄せ、それでもなんとか人生の舵をとろうとする。

荒削りでユニーク。
これぞインディーズゲームらしさ。選挙とテロが題材で、丁度日本がその話題一色になっているときに配信されたのも含め、忘れられない一作となった。

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読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。