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キスのゲーム、ハグのゲーム。【ゲームプレイ日記】スピリットフェアラー

マリオの目的はクッパを倒すことじゃない。ピーチ姫にキスしてもらうことだ。
そのために100回も200回も谷底に落ちる。
ぼくの記憶では「ときメモ」も「ファイナルファイト」も、最後にそれぞれの「姫」にキスしてもらうのがエンディングだ。

お姫さまにキスしてもらうために100回死んだり100時間費やしたりすること。それがテレビゲームだ。

「キスのゲーム」はたくさんあるけど「ハグのゲーム」を初めて遊んだ。
PS4/ニンテンドースイッチ「スピリットフェアラー」というゲームだ。

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主人公は、この世に未練を残した「魂」たちと船旅をして、いっしょに生活して、成仏させてあげるのが目的。
船に菜園をつくって野菜を作ったり、ルートを決めて行商人や大工たちと交流したり、木の加工や織物をしたり。

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動物の姿をした魂たちと旅をしながら、食事、お使い、ハグをすることで打ち解けていく。

「ハグ」はそれをしたら恋人確定、というものではなくて、食事や会話と同じくらい毎日のようにして、幸福にすごすためのものとして出てくる。

久しぶりに再開した家族が「わー!」って抱き合うシーンはあっても、毎日のあいさつとしてのハグを取り入れたゲームは初めて。

また動きが細かい!突然ハグされて「えっ」と驚いたあとに、安心しきった顔で抱きしめかえす、こだわった動き。しかも主人公のネコにもハグできる! 犬にエサをやったり、なでられるゲームはあったけど、ネコを抱きしめることができる!

アクションはほとんどないけど、操作もなめらかで気持ちいい。
木を切るときに、わざわざ左右にボタンを押してノコギリを引いたり、作業的なことをあえてゲームの中でやるうちに、共同生活になじんでいく。

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また色が、デジタルで彩色したツヤツヤビビッドなきれいさじゃなくて、昔のセル画アニメのような、ほんのりかすれた味のある色をもって動く。
風景は太陽の光をあびて、時間によってこまかく表情を変える。
キャラクターの細かい演技と、食事やハグの反応で愛着がわく。

漂流物や無人島から材料をとってきて、それぞれの好きな食べ物をだしたり、空き時間にはのんびりと釣りをして、焼き魚を作って・・・。

なのに、最初から「彼らと別れのための旅」であることがわかっている。
最初のほうで仲間になるのはデカいカエルだ。みんながひとめ見て「かわいい!」と思うような感じでもない。
彼の食事や趣味がわかってきて、子供とすごした何気ない話を聞いて、せっせと水をやった果物に喜ぶ姿にも見慣れてきたころ、この旅は永遠の別れのためのものであることを思い出した。

今のまま、海を延々とぐるぐるすることもできるけど、もう少し未知の海域へ行くことを選べば別れがあることを、会話のトーンで感じている。
すごいな、宝石みたいな作品と久しぶりに出会っちゃったな。

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読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。