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久しぶりの砂漠 エジプト #3 奇妙な初日

「結構砂とかあってジャリジャリしてるらしいんすよ」

と旅をする前にマイフレンドが言ってた。実際カイロはそんなに砂砂してなかった。このエッセイも「久しぶりの砂漠」なんて言っているが、砂漠との接触はギザにピラミッドを見に行った時くらい。

けれども街全体が埃っぽくて、砂砂している。

「街全体が工事現場なんすよ」

とマイフレンドが言っていた。途中経過なものが多く、街全体がザワザワしている。

さて初日。目を覚まし、朝食をいただく。バイキング形式かと思っていたが、起きた順におばちゃんが作ってくれるシステム。受付には、私と同い年くらいのスタッフが、中国からの女の子二人の対応をしていた。なんとなく中国ガールズを観察していたが、二人は私のことなど気にせず、お喋りして朝食をむしゃむしゃ食べていた。くちゃくちゃ食べ、ペチャクチャ喋っている姿が爽快でキュートだった。

卵焼き、ジャム、ピタパン、チーズとファラフェル。エジプト定番の朝ごはん

朝ご飯の準備と、チェックインの忙しい時間を終えたスタッフのアヤが、話しかけてきてくれた。「エジプトは初めて?」「うん」「何か予定はある?」「何も計画してない。明日友達が来る。カイロの生活が見てみたいな」「ピラミッドには行くでしょう?」「うん」
 
アヤに見送られホステルを後にする。近くの博物館に行くことにした。車がひっきりなしにやって来るので、なかなか道を渡れない。何食わぬ顔をし、地元の人の後ろにくっつき、なんとか横断する。渡ろうと決めたら、躊躇せず渡らないといけない。

 博物館前の広場をフラフラしていたら、ツルツル頭のおじさんに話しかけられる。なんともスムーズなアプローチ。私が進む方向に、一緒に歩き、あたかも彼もそちらに用事があるような振る舞い。もしかしたら、そっちに用事があったのかもしれないけれども。
 
「そっちの方が綺麗だよ。どこから来たの?韓国?中国?」
「日本」
「日本人に見えないね。中国か韓国っぽい」
ナカターだか、ホンダーだか、日本の苗字を連呼するおじさん。
 
「こっちにおいで、案内してあげるよ」
「大丈夫、こっちに行く」
 
文字に起こしてみると、怪しさ満点か。

実はこのおじさんには、博物館を見学し終え、街をフラフラしていたとき、少し離れた路地でまた声をかけられたのだ。え、なんでここにいるの。
 
「ごめん、偶然だね。また会ったね」
 
手にはプラダと書かれたビニール袋とクラッチバッグ。
 
「あ、こんにちは」
「これからどこに行くの?」
「特に決まってない」
 
またもやスムーズ。話しながら、おじさんと数メートル一緒に歩き続けたものの、私は立ち止まり「バイ」と言った。そのままおじさんと共に歩き進めるのが自然な振る舞いのように思えたが、歩き進めてはいけない気がした。行く当てもないのに、不恰好にUターンした。

"Have a nice day"
 と言って、おじさんは街の中に消えていった。
 
さて博物館。ツタンカーメン、動物のミイラ、色々刻み込まれた石、彫刻。そして世界中からやってきた観光客と、多言語を操るエジプト人ガイドたち。博物館の中に色々なものが詰め込まれてすぎていて、気持ちが悪くなった。何をどう捉えたら良いか分からなくなる。

https://maps.app.goo.gl/SminWYxxQe9NEKjH9

 
気疲れして一つの展示物の前に立っていると、次から次へとツアー客がやって来る。
 
ドイツ語
英語
中国語
スペイン語
 
を話す現地ガイド。展示物の歴史やポイントが説明される。中国語を話すエジプトのガイドが多い。
 
ガイド「一本の線は、千人の生贄を表現しています」
 
石には何本もの細い線が刻み込まれていて、それを見た私はゲロゲロしてしまった。ボツボツした物や、何かが密集しているものが、苦手なのだ。いわゆる集合体が怖い。特に皮膚病になってから、その症状が悪化している。多分、集合体から危険信号を受信するように、私の頭は出来ているのかもしれない。

 https://www.instagram.com/p/C5AzZkEMEOW/?img_index=1

その延長で、彫刻にも反応してしまった。穴(彫刻)の集合体を見ていて、居心地悪くなったが、それ以上にこんなに沢山の情報を石に刻み込んだ(込もうとした)人の「気」みたいなものにも、なんとも言えないゾワゾワを感じた。石に刻み込まれた生贄の量。今思い出しても、なんだか気持ち悪い。私だって今こうして、つらつらと文字を残し、放出しているのだから、やっていることはそんなに変わらないのだけれども。
 
4時ちょっと前に博物館は閉館。係員たちが「finish, finish, end, end」と連呼していた。客が「あと数十分あるじゃないか」と言い反抗してたけど、「finish, finish, end, end」と追い出されていた。
 
ラマダン中のエジプト。日が沈み、ご飯や水を口に出来る時間まで、数時間。地元の人が行くお店が開店するまで、待てなさそうなので高級そうな喫茶店に入る。テーブルクロスは汚れている。海外からの報道陣が、昔から集まる店のようだ。店内には偉そうな男の写真が沢山飾られている。レンズ豆のスープとサモサ、お茶を飲む。美味しい。
 
後ろの席では、日本からの女の子がパスタを食べていた。隣の席から話しかけるエジプトのおじさん。この喫茶店に座り、世界中から来た人たちを観察し、あれやこれやと考えているようだ。おじさんは日本人の女の子に、自分が考える日本への理解と想像が正しいかどうかの確認作業をしていた。女の子は、おじさんが何を言っているのか、あまり分からないようで愛想笑いしていた。
 
数時間ぼーっとして、店を後にした。
 
 
深夜3時にマイフレンドが到着するので、それに備えてホステルで仮眠。帰り道、豆とパスタとご飯とフライドオニオンが混ざったエジプトのファストフード、コシャリもちゃっかり食べて帰宅。マイフレンドとどんな旅になるのだろうかボンヤリ考えながら、電気をつけたまま居眠り。




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