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ブロッコリーに関する備忘録

何かとある事柄に注目し始めると、それがどんどん連鎖し、物語が発展するような気がする。映画を作ったり、論文を書く時も、着眼点やテーマを持った瞬間、日常生活の中でそれに関する出来事や具体例に出会うことになる。多くの場合は、着眼点を持つ前から日常に潜んでいたことなのだろう。側にあるけれど、見えていないだけ。視点を持つと、世界を練り歩く時のリッチネスが上がる。最近私のアンテナに触れているのは、ブロッコリーである。以下、私とブロッコリーの密かな物語。


ここ数週間、よくブロッコリーを食べている。ブロッコリーを食べいているだけでは、特にアンテナには引っかかってはいなかった。食べ応えがあり、美味しいなくらい。それがある日、トマト、ナス、ブロッコリーなどの夏野菜を入れたパスタを作ったとき、配色が綺麗で、しかも味がみずみずしくて、美味しい!となった。これは定番ランチメニューになりそうな予感。

野菜を放り込んだ

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夏野菜のパスタを食べた数日後、恋人のお兄さんと健康的な食生活について話していた。彼は「1週間に20種類以上の野菜や果物を食べる必要があるらしいよ」私「そもそも20種類も野菜の名前知ってるかな。ははは」お兄さん「そうだよね。例えばブロッコリー。最後にいつ食べたか覚えてない。ブロッコリーなんて食べる?」私「え!昨日食べたよ!ブロッコリー!」お兄さん「え、すごいじゃん。健康」ここでブロッコリーとの距離が縮まる。私はブロッコリーに親近感を抱き始めていた。美味しいパスタ。色々な野菜を食べている私。


最近チェコに住み始めた人と知り合う。彼は昔オーストラリアでワーキングホリデーをしていたらしい。大層オーストラリが気に入ったそうで、ビザを更新するために小さいブロッコリー、通称ブロッコリーニ農園でブロッコリーニの収穫に従事したそうだ。かなり過酷だったようで、すぐに辞めることになったらしい。ただ韓国やベトナム人に混ざり、一生懸命ブロッコリーニを収穫した話を話してくれた。農園では笑顔とお喋りは禁止だったらしい。過酷かな…


そんなブロッコリーニの話を聞いていたら、私の恋人が「ねぇ。ブロッコリーって人工的な野菜だって知ってる?」と言い出した。豆知識好きな、彼らしい発言である。どうやらブロッコリーは自然界に存在しないらしい。キャベツの仲間のカイランが品種改良されたものらしい。(ウィキペディアより)ふむふむ。ブロッコリー君、ここまでよく頑張ってくれた。



先週末チェコのLiberecでアニメーションフェスティバルに行ってきた。友人の映画が上映されたので観てきた。羊の中に住む男の子がテクノを聴きながら、羊の肉をちょっとずつ食べる物語。

上映後、友人と彼女の友達であるアニメーター達とお喋りしていた。ふとクルクル頭の男の子を見ると、陶器で出来たブロッコリーのネックレスをつけていた。やっぱりここにもブロッコリー!!

よう!ブロッコリー!

男の子は「ブロッコリーは僕のスピリットベジタブルだからつけてる」と笑って言った。形は自分で作り、色は陶芸作家のお母さんにつけてもらったという。なかなか丈夫な作りなようで、落としても割れないらしい。「武器にもなるよ」と男の子は言って、ブロッコリーを指と指の間にはめ、軽くパンチする動きをとった。

さてまたブロッコリーを見つけに行こう。育ててみるのも楽しいかもしれない。ブロッコリーと私の物語は続くのか否か。




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