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【WBCから学ぶ】土壇場で結果を出すための思考法

WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での日本代表の優勝をご覧になった方も多いのではないでしょうか。アメリカとの決勝戦もさることながら、とくに準決勝メキシコ戦での大逆転勝利は非常に印象深く、感動を与えてくれたと思います。

私は、「野球におけるチームづくりの戦略は、ビジネスでも通じるものがある」と考えており、かつて、広島東洋カープのリーグ3連覇や西武ライオンズの連覇におけるチームマネジメントについて研究していました。

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今回、WBCにおける日本代表選手の素晴らしい活躍には、結果そのものの素晴らしさだけではなく、裏にある優れた考え方から学ぶことが多数あると考えています。

野球に詳しくない方にも参考になると思いますので、ぜひ最後まで読んでいただければと思います!

「結果が出る前のプロセス」に注目する

WBC日本代表の準決勝、メキシコ戦のゲームを振り返ってみましょう。

この試合での日本代表チームは、常に劣勢のなかでゲームを進めていました。中盤に3点のリードを離され、一度は同点に追いつきましたが、終盤に致命的ともいえる2点のリードを奪われました。その後1点を返したものの、1点リードされた状態で最終回(9回裏)を迎えていました。さらに、最終回に登板したメキシコ代表チームの投手は、メジャーリーグでも活躍している優れた投手。まさに絶体絶命の状況でした。

結果的に、日本代表チームは、村上選手が勝負を決めるヒットを打ち、劇的な逆転勝利を収めます。ただ、この村上選手は、WBCでは本来の力を発揮できない状態で、この試合でも、最終回を迎えるまで「4打席無安打、3三振」と結果を出せていませんでした。

もちろん、結果として村上選手は素晴らしい活躍をしたのですが、それはあくまで結果論。

実は、この結果に至る前のプロセスにこそ、私たちが学ぶべき点があります。

◇土壇場でこそ確実な戦略が有利

今回注目したい場面は、決定打を打った村上選手の打席ではなく、むしろ最終回の先頭バッターとして初球をツーベースヒットにした大谷選手の打席です。

大谷選手は今大会を通じてずっと好調でした。また、大谷選手の次の打者である吉田選手も絶好調。しかし、その次の村上選手は不調です。つまり、最終回が始まる時点では、もし大谷選手がアウトになってしまうと、村上選手もアウトになる確率が高く、そうなると、日本代表チームは2アウトでかなり不利な状況に追い込まれます。そこで、この回に1点以上取って敗北を防ぐためには、大谷選手がアウトにならないことが非常に重要となります。

大谷選手は準決勝試合後のインタビューこのように回答しています。

「ヒットではなくてもいいので、出塁することだけを考えていた。甘い球が来たのでラッキーだった」

好調である自分がヒットやホームランを打って得点すると気負うことなく、冷静に、まず出塁することを優先することを考えています。

絶体絶命の状況に追い込まれると、多くの人は冷静さを保つことができません。締め切りが近づいたり、競合他社に負けそうになったりという状況で、後がなくなればなくなるほど、「気合を入れて一発逆転を狙おう」という感情的な思いが強くなります。実際、この場面で、大谷選手にホームランを願ったファンも多かったのではないでしょうか。

まさにドラマのような展開を期待するわけですが、自分が圧倒的に不利な場面では、競合相手は精神的にも有利で、一発逆転のようなことはなかなか起きません。こういうときこそ、冷静に状況を受け入れ、「少しでも粘る」「時間を稼ぐ」など、状況を少しでも改善できる手段を選択することが結果につながりやすくなります。

◇ラッキーは、起きてから対処するのでは遅い

先ほどのコメントからもわかるように、大谷選手は打席に入る時点で、ヒットを打つことよりもまず粘って、アウトにならないように出塁することを優先していました。そうなると通常、初球は様子を見て見逃すことがセオリーです。

しかし、実際の大谷選手は初球を打ってツーベースヒットを放ち、これが相手投手に大きなプレッシャーをかけることにつながりました。いったい大谷選手に何があったのでしょうか?


@Unsplash

初球は非常に甘い変化球でした。相手の投手も、大谷選手が粘ってくるであろうことは当然読んでいますので、初球から思い切ったスイングをしてくるとは想定せず、油断したのかもしれませんし、単純なミスかもしれません。しかし、通常あまり起きないラッキーが初球で起きたのです。

このとき、もし大谷選手がメインの戦略である「粘る」ことだけしか考えていなかったら、さすがに初球に起きた相手のミスを一発で仕留めることはできなかったかもしれません。

しかし彼は、万が一ラッキーが起きた場合の対応策を打席に入る前から想定していたのではないでしょうか。だからこそ、結果として突然のラッキーを見逃すことなく結果につなげています。

◇大谷選手からの学び

スポーツは、結果がすべてで評価されがちですが、一流選手の結果が出る前のプロセスをよく観察すると、非常に参考になることが多くあります。今回、大谷選手はまさに絶体絶命の場面に追い込まれたときの考え方、対処の仕方について重要な学びを与えてくれました。

1つは、絶体絶命のピンチにこそ、冷静に、もっとも確実な戦略を選ぶべきということ。

「気合を入れて」も、「願いを込めて」も、一発逆転などということは現実社会ではなかなか起きません。追い込まれているからこそ、実行できることで、ほんの少しでも状況を変えられる方法を探しましょう。一か八かの作戦は、不利な状況でやることではありません。

もう1つは、万が一ラッキーが起きた場合の対処をあらかじめ決めておくこと。

「競合がミスをする」「プロジェクト内の問題解決が予想外に進展する」「急に大型案件が舞い込む」など、確率はとても低いかもしれませんが、思いがけないラッキーはあり得ます。

しかし、ラッキーは思いがけないタイミングで起きるからこそラッキーなのです。実際に起きてから対処方法を考えていたのではチャンスを逃してしまいます。いつ起きるかもわからないラッキーを確実に活かすためにも、あらかじめラッキーが起きたときにどうするかという作戦を決めておきましょう。

WBC日本代表チームの活躍は、私たちに勇気を与えてくれました。そして同時に多くの学びを与えてくれたのではないでしょうか。特にスポーツにおける、「結果が出る前の準備や判断」こそ、ビジネスに応用できる多くのヒントが隠れています。ぜひ注目してみてください!

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