ミナミガワ

音楽と海外旅行とお笑いが好きです。好きな音楽のこと、本のこと、旅先の話、日々の話

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マガジン

  • 掌編小説

    • 15本

    しりとり式にテーマの言葉を連鎖させていく掌編小説です。ミナミガワ(@minami_gawa)となしころもサクサク(@jupiter_00270)のふたりで言葉を繋いでいきます。ふんわりあたたかな気持ち、立ち止まって考えをめぐらせるきっかけ、そんなものをお届けしたいという想いで書いています。読んでいただけたら嬉しいです。

最近の記事

誕生日だけは、覚えている

今の会社に入って、5年が経とうとしている。 仕事場では各メンバにデスクが与えられ、PCを置いていく場合はデスクにしまって鍵をかけて帰る。 デスクの鍵は、4桁のダイアルロックだ。 浅はかな私は、入社当時付き合っていた恋人の誕生日に設定してしまった。 この鍵の番号を変更するには、非常に面倒な手続きが必要だとも知らずに。 よくある話なのだろう。 学生の時に付き合い始めた人で、私が一足先に社会人になった。 生活や考え方がすれ違うようになり、入社から半年と少しが過ぎた頃に別れた

    • キャンセル待ち

      しりとり式にテーマの言葉を連鎖させていく掌編小説。 テーマは、軍艦巻き に続き 「キャンセル待ち」 です。 待つことが、私の価値だ。 どこかの歌じゃないけれど。 そのひとは、取引で月に一度私の会社にやってきた。 背が高く白い歯をしていて、いつもさっぱりとした香りがした。 毎度の会食の後、二人でバーに行き、そのまま朝まで過ごした。 月に一度だけ、でも必ず。 そのひとには恋人がいた。 遠い外国に駐在しており、3ヶ月に一度会いに行っているとのことだった。 そんな遠距離恋愛、

      • ウィンドウショッピング・パラレルワールド(私の成功秘話)

        しりとり式にテーマの言葉を連鎖させていく掌編小説。 テーマは、手数料 に続き 「ウィンドウショッピング」 です。 「見て、あのワンちゃん。かわいい〜!」 当時住んでいた家の近所のペットショップ。 通りすがる人たちが、つぶらな瞳をした仔犬や仔猫たちを愛でる。しょっちゅうお気に入りの子を見に来ている人も見かける。 とはいえほとんどの人は、高級品の彼らを実際に買って帰ることはない。眺めて楽しむだけの、ウィンドウショッピングだ。 毎日のごはんの用意も、散歩も、糞尿の片付けもする必要

        • 数量限定

          しりとり式にテーマの言葉を連鎖させていく掌編小説。 テーマは、留守(るす) に続き 数量限定(すうりょうげんてい) です。 「こちら数量限定商品! 50個限定、しっとり濃厚チーズケーキですー!」 東京駅のきらびやかな地下街。 SNSで評判を見かけたこのチーズケーキをぜひとも食べてみたいと思い、早起きして開店前から並びに来た。 昨日の朝、出張で東京に来た。 日帰りでもよかったのだが、東京でしか買えないチーズケーキのことを思い出して、わざわざ一泊したのである。 甘いものは

        誕生日だけは、覚えている

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          ターンテーブル

          しりとり式にテーマの言葉を連鎖させていく掌編小説です。 テーマは、ダークマター に続き 「ターンテーブル」 です。 疲れ果てて家に帰る。 ビールの缶を開け、最近気に入っているレコードをかける。 仕事に追われている。 家のソファーでひとり音楽を聴きながらビールを飲むこの時間がなければ、 わたしの暮らしはもうわたしのものとは言えなくなるだろう。 仕事のために起き、仕事のために着替え、 仕事のために食事をし、仕事に備えて眠る。 レコードが回る。 わたしはターンテーブルを見つめ

          ターンテーブル

          スレンダーライン

          しりとり式にテーマの言葉を連鎖させていく掌編小説です。 テーマは、ダイス に続き 「スレンダー」 です。 「スレンダーライン、っていうのがあるんですね」彼女は言った。気に入ったのだろうか。 わずか7、8畳の小部屋の中で、僕らは四方をずらりと純白のドレスに取り囲まれていた。細かな刺繍が入ったもの、網のようなもの、さらさらしたもの、つるつるしたもの――布にこれほど無限とも思えるバリエーションがありうるだなんて、考えたこともなかった。 それらを式場スタッフが一つ一つ説明してくれ

          スレンダーライン

          人生のあらゆる感情の隣に、くるりがいた話

          くるりは、あまりにも特別なバンドである。 中学2年で出会ってから13年間、音楽を通して得られうるあらゆる感情を、くるりに教えられたと言っても全く過言ではない。 NIKKIのアルバムで初めてくるりを聴いた時の、なんかいいぞ、なんだこれは、すごく好きだぞ、とワクワクする気持ち。 高校でギターを始め、初めて「ロックンロール」をカバーした時の、かっこいい! とにかく真似したい! という気持ち。 東北の実家で被災し、その直後に上京して、一人暮らしの部屋で永遠と「奇跡」をリピートし

          人生のあらゆる感情の隣に、くるりがいた話

          レモンソーダは逃げ出さない

          しりとり式にテーマの言葉を連鎖させていく掌編小説です。 テーマは、クリームブリュレ に続き 「レモンソーダ」 です。  昼過ぎの喫茶店で、僕はレモンソーダを見つめていた。テーブルの向こうにいる彼女の目を見ることは、今の僕にはあまりに難しい。  口を開いては、言うべき言葉を飲み込んで、閉じる。無数の泡が、爽やかな香りで弾けていく。言わなくちゃ、と思うほど喉はからからに乾ききり、僕は声を失った。  さすがの僕でも気付いていた。彼女が「サキと九州旅行に行ってくるね」と話していた週

          レモンソーダは逃げ出さない

          100文字ドラマ:婚活垢の裏事情

          絶対に結婚したい、普通のアラサーOL。せっかく始めるなら記録に残せたほうがいいか…と軽い気持ちで作ったtwitter婚活垢。 気になるハイスペイケメン、気になるいいね数。結婚エンドか、アルファツイッタラーエンドか。

          100文字ドラマ:婚活垢の裏事情

          100文字ドラマ:あなたを作る屋

          あらゆる印象を作り出すことのできる職人チーム、『あなたを作る屋』。 綿密に計算されたSNS投稿。ファッション、口癖、好きな食べ物、全て私たちの指示通りに生きてみてください。必ず、ご注文どおりのあなたになれますので。

          100文字ドラマ:あなたを作る屋

          永遠にクリームブリュレ

          しりとり式にテーマの言葉を連鎖させていく掌編小説です 初回テーマは、「クリームブリュレ」  このカフェに来るのは、もう何度目だろう。すっかり僕らの行きつけとなったこの店で、彼女は今日も注文が決められない。 「週替りで新作が出るって悩ましすぎると思わない? ああ、モンブランクレープ期間限定だってよ! でもやっぱりクリームブリュレが一番おいしいか……?」  うーむ、とひとしきりメニューを見つめた後、ちらりと彼女はこちらを見る。 「僕はクリームブリュレかな」 「いいねいいね! じ

          永遠にクリームブリュレ