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永遠にクリームブリュレ

しりとり式にテーマの言葉を連鎖させていく掌編小説です
初回テーマは、「クリームブリュレ」

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 このカフェに来るのは、もう何度目だろう。すっかり僕らの行きつけとなったこの店で、彼女は今日も注文が決められない。
「週替りで新作が出るって悩ましすぎると思わない? ああ、モンブランクレープ期間限定だってよ! でもやっぱりクリームブリュレが一番おいしいか……?」
 うーむ、とひとしきりメニューを見つめた後、ちらりと彼女はこちらを見る。
「僕はクリームブリュレかな」
「いいねいいね! じゃあ私はモンブランクレープにしようっと」
 注文したものが運ばれてきた。彼女は嬉しそうにモンブランクレープを頬張る。栗ってどんなお菓子になっても美味しいよねえ、今度一緒に栗拾いにも行ってみたいねえ、とにこにこして言った。可愛い。
 この間、僕は彼女を見つめて待つ。
「クリームブリュレもひと口もらっていい?」
 来た。もちろんいいのである。「うん。ひと口と言わず好きなだけ食べな」
 「ありがと!」とこれまた満面の笑みで言って、彼女はクリームブリュレを食べる。ひと口食べてにっこり、そこからもうふた口。とても可愛い。
「いつもクリームブリュレ頼むよね? いつも私が食べたいチョイスになって、私ばっかりいいとこどりな気がする。たまには違うもの頼んだりしたくならない?」彼女が僕に尋ねる。
 いやいや、彼女の毎回違うはしゃぎ方を見られて、毎回同じありがと! を言ってもらえて、僕こそいいとこどりなのである。彼女と一緒なら、永遠にクリームブリュレでいいな、と思う。
 精一杯の涼しい顔をして、「クリームブリュレが好きなんだよ」と僕は答える。

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次回は
クリームブリュレ → 「レモンソーダ」 です。

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